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   フェイク情報を見分ける知恵
     ニセ情報に満ち満ちた海を泳ぐ技 05.21.2017

               



  このような記事を書く気になったのは、実はかなり前でした。その根底には、福島における低線量被曝のリスクの関する様々な報道がありました。2011年のことですから、まだ6年前に過ぎないのですが、福島原発事故をキッカケに、メディアのポリシーが変わりました。メディアが提供する情報は、最初から決まっている各々のメディアの主張に意図的に合わせたものになった、と思っております。当時、新聞はまだまだメディアの主役でしたが、それぞれの新聞の主張を右から左まで一列に並べることができるようになってしまいました。この序列は、現時点でもまだ、全く変わらないのが不思議なところです。

 Facebook、Twitter、の利用者は今ほどではなかったのに、そのときにもすでにフェイク(偽)ニュースはありました。それは、その筆者が所属する団体の主張を個人の主張の形で語られている、と考えれば妥当な判断が下せるものが多かったと考えています。

 そして、トランプ大統領です。メディア報道のすべてを「フェイク」とみなし敵対するスタンスがよいとは思えないのです。大統領選挙がキッカケとなって、フェイクニュースが増えたのは確実でしょう。トランプ大統領には、早く辞任して欲しいと思っています。

 そして受け取る側の変化もSNSの影響を受けて大きく変わりつつあるようです。世界的な傾向として、Facebookでニュース・情報を得るという人が増えているようです。

 これは、2015年のアメリカでの調査ですが、次のwebサイトによれば、
http://digiday.jp/publishers/facebooks-growing-influence-news-consumption-5-charts/
Facebookでニュースに関わる情報を得る人が63%になっているとのことです。2013年には47%であったものが、たった2年間で、16%も増えたことになります。その後、さらに増えていると思います。

 フェイスブックが自分で公式にニュースを提供している訳ではないので、読み手にとって、フェイクニュースに出くわす回数が増えるのは、当然のごとく起きている傾向です。

 フェイクニュースを作る理由は、本記事でも引用しますように、金儲けのためです。そして、その拡散をしているのは、愉快犯です。

 公開情報については、信頼できる情報が100%でなければならないとは言いませんが、それは、時に、間違いということがあるからです。しかし、大部分(≒99%)が信頼できる情報であることが、社会における相互信頼性が高まる基本的な条件だと思います。偽情報を金のためだけに流すのは、やは社会正義ではないのです。

 「信頼できる社会」を目指すネットユーザは、どのような対応を取れば良いのか。それを考えたいと思います。答は、いくつかの原理・原則を理解し実行するという「自己防衛」しかない。そして、非意図的に、そして結果的に共犯になることは、避けるべきである。

     
C先生:ニュースは新聞から得る、これがほぼ成立していたのは、SNSが普及する以前まで、と考えるのが正しいようだ。個人的にFacebookを使い始めたのが、2010年からだと思うが、テレビからだって、ある程度の情報は得られたのだけれど、やはり、文字で伝達するメディアは、「確実な情報伝達」と「確実な理解」という面では、テレビを上回っている。新聞、雑誌、書籍といった紙媒体と時間とともにどんどんと流れ去ってしまうテレビ情報との中間の媒体として、ネットでの情報獲得があるのだけれど、ネット上の新聞情報は、デジタル新聞の有料化が進行したためもあって、余り普及していないと思う。そうなると、必然的に無料のSNSで、という選択になり、その結果、もっとも選択されているのが、フェイスブックとツイッターらしい。

A君:米国大統領選挙に関する偽ニュースが、マケドニアで書かれたという衝撃的な記事が日経に掲載されました(有料サイト)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO16360960T10C17A5I00000/
 この記事の全文らしきものは、探すせばいくつかの個人ブログにありますが、恐らく違法引用です。追求されるかどうか、それは疑問ですが。
日経新聞 2017年5月14日(日) P.7 総合4面
『経済苦境、偽ニュース生む』=トランプ氏勝利に一役?

B君:この記事は、よく実情を調べたのだろう。「本当か」、と一瞬思う記事で、その意味で衝撃的だった。
 この記事は、『マケドニア 中部の街』の紹介で始まるが、マケドニアという国は意外だった。「バルカン半島の小国マケドニア中部にフェイク(偽)ニュース発信の拠点として名をはせる街がある。2016年の米大統領選の際に100以上も乱立した政治サイトが偽情報を拡散し、トランプ米大統領の誕生に一役買ったとされる。」

A君:その街は、「首都スコピエから南へ50キロにある人口5万人の街ベレス。4月中旬に訪れると、住民が重い口を開いた。」

B君:失業中の若者にその友人が声を掛けた。「もうけ話がある」。「米政治に関する英語ウェブサイトを作って、サイトに載る広告へのアクセスを稼げば多額の報酬を得られる」。

A君:その若者は、英語が読めないので、「ネット上の記事をグーグルの翻訳機能を使って読み、受けそうなものをコピーしたり、自分で捏造(ねつぞう)したりして、毎日10本程度掲載した」。例えば、「ヒラリー・クリントン氏、大統領選から脱落、重病発見」といった記事を捏造。

B君:恐るべきことに、このでっち上げの記事のアクセスは数万件あった。そして、通常の月収の3〜4倍を稼いだ。その若者は、「トランプのためではなくお金のためにやった。 善悪なんて関係ない」

A君:別の若者は、大統領選の期間、毎日8時間は記事作りに没頭。収入は数千ドルに上った。

B君:この記事を書いた古川英治記者は、次のようにまとめている。
 「トランプ氏は自身に不都合な報道を『偽(フェイク)ニュース』と断じ、自ら事実に反する情報を拡散する。偽ニュースの闇(やみ)は深い。

A君:このような偽ニュースで儲かる理由は、ご存知ように、広告を載せた企業からの支払い。アフィリエイトと呼ばれるこの仕組みは、その偽ニュースサイトにある広告がクリックされて広告主のサイトに移動し、そこで、商品が購入されれば、広告収入が得られる。

B君:当然のことながら、その偽ニュースサイトへのアクセス数が勝負。それには、できるだけ刺激的な偽ニュースを作らなければならない。そして、それがSNSで拡散されて、多くの人々がその偽ニュースサイトをアクセスして、始めて儲かる下地ができる。

A君:ここまでの記述で分かることは、偽ニュースを載せているほとんどすべてのサイトには、なんらかの広告があるということ。

B君:ということは、広告が無いサイトであれば、そのサイトは、アクセス数をそれほど気にしていない。より正確には、アクセスが増えれば、お金が儲かるという意識をもって書かれていない、ということを意味する。

A君:法則が一つできたようですね。
 第一法則:「アフィリエイト広告があるサイトは、アフィリエイト広告の無いサイトよりも、記述されている内容の信頼性が相当に低い可能性が高い」

B君:偽情報だが、そのサイトの運営主体が意図的に出しているというケースがある。これが、C先生が言っていたように、福島事故以後、低線量放射線に関して、かなり多くのサイトができて、低線量放射線でもヒトにとって、非常に有害であるという偽情報を流した。これだと、アフィリエイト広告があるかどうかは、判断基準にならない。むしろ、その運営主体がどのようなものかから判断することになる。

C先生:そのような場合だが、当時記述したのは、どのサイトを信じてよいか、という判断材料として、「いくつかの科学的事実を記述しているかいないか」、を上げていた。例えば、低線量被曝のケースでは、もっとも判断の根拠になるものが、カリウム40。この同位体のために、バナナを食べれば、過去現在を問わず、1本で20ベクレル以下程度の放射性物質を体内に入れることになる。そして、カリウムは必須元素なので、成人であれば、140g程度のカリウムが体内にあるので、ヒトは、常時、4000ベクレル程度の放射性物質を体内に持っていて、常時その放射線を内部から浴びていることになる。

A君:低線量被爆でも有害であるという、間違った主張をしたいために作られているサイトにとっては、このような情報は、不都合な真実なので、「カリウム40は天然の放射線だから安全。セシウム137は、人工的に作られた元素で、人工的な放射線だから危険」、という偽情報を出している場合が多かったですね。

B君:それに対して、「カリウム40が体内にどんどんと蓄積される訳ではない。バナナを食べれば、確かにカリウム40は体内に入る。しかし、体内のカリウム全体の量は、ほぼ一定に保たれているので、体内に入った量とほぼ同量のカリウムが、尿などによって排出されて、体内の放射線量も一定に保たれている。だから、バナナを排除する理由はない」。

A君:こんな情報が書かれていれば、まあ、良心的なサイト。

B君:この話の結論としては、「放射線に人工、天然の区別はない」という簡単なことが事実であることを知っていれば、偽情報かどうかの判断が可能。

A君:第二法則:「しばしば使われる偽情報は、それぞれの分野において、どれが偽情報かの判断に関する簡単な知識をいくつか得ることで騙されることが無くなる」。かなりの経験が不可欠ではあるけれど。

B君:低線量被曝の有害性については、実は、別に「最良の対応」というものがあるのだ。それは、過去に存在した有害性を判定する最善の事例は、残念なことに、対象者が圧倒的に多かった広島・長崎の原爆被爆者だった。これは現時点まで変わらない。

A君:その対象となる人数ですが、こんな記述が見つかります。
『原爆が投下されたときに、広島と長崎の人口は合計42万9000人だった。熱と放射線の影響で、即座に10万3000人以上が死亡した。爆発直後の情報は欠落が多いが、1950年以降は生存者28万3000人の医療記録が存在している。』

B君:この生存者の被曝量を推定し、そして、できた結論が、「100mSv以下の被曝の場合には、白血病・がんによる死亡率は、非被爆者と変わらない」、というデータになった。
http://www.gepr.org/ja/contents/20120116-02/

A君:勿論、福島のケースのように、責任が特定できる場合には、精神的な被害に対しても補償を求めることは、当然なのですが、個人の思いとしては、このデータで絶対に確実な結論が出るのではなくて、その確率的な結論でしかないので、もっとも完全な対応は、あるいは、もっとも優れた知恵は、「確率的に有意でないことは無視する」ということ

B君:ヒトという生物は、心配するとそのストレスが命を縮めることは科学的にも100%確実なので、自分のストレスを下げることを優先する対応が賢い。それには、補償を求め、さっと切り替えて、後は無かったことにするのが、ベストの対応だということ。

A君:発がん性の毒物の場合でも、同様の解析を行ってその物質の発がん性の評価がなされる。

B君:豊洲でのベンゼンなどがその例で、規制値は、10万人に1人程度のがんの発生の可能性があるという数値で、実際には、この数値は見えないに等しいので、「悪影響が見えないこと」を基準にしているとも言える。

A君:ある室内球場の収容人数が4万人として、満員であったある日に限って、10万人に1人が肺がんを発症する程度の大気汚染があったとする。この場合、そのフォローを厳密に行ったところ、数年後のことだけれど、実際にある一人が肺がんを発症していることが分かったとしても、その原因がそのときの大気汚染であるということの証明は不可能なので、10万人に1人程度の発がん物質への暴露があったのは事実としても、補償の対象にならない可能性が高い。この程度の影響を深刻に考え過ぎると、ストレスで、心筋梗塞などを起こす確率が高まるので、無視するのが正しい対応になります。

B君:まあそんなものだ。これを第三法則としたい。第三法則:「確率が非常に低い影響は無視して、いちいちクヨクヨしないこと。これが健康に生きるコツの一つである」

A君:確かに、様々な場合に、若干の補償金が取れる可能性はありますが、それを取ることによって、被害者意識が確実に心に残ると、それがまたまた健康に対するストレス源になるので、もし、長く健康でありたいと思ったら、補償金などを考えず「確率論で有意でないことは、無いことにする」という対応の良さを認識することも、人生の過ごし方の一つになりうると思います。

B君:さて、話題を戻して、マケドニアの記事で使われた「ヒラリー・クリントン重病説」のような場合にはどうするか。

A君:そのような重要なニュースの場合であれば、プロのメディアでのニュースであれば、「xxxによれば、、、、」という引用がされている場合が多い。そして、引用先を自分でGoogle検索で調べるという方法が可能になる。

B君:科学関係や技術関係の記事では、この引用が厳密に行われる。引用先を示しているかどうか、これが偽情報かどうかの、かなり有力な判定基準になる。完璧な引用のやり方は、本サイトではそれやっているつもりなのだけれど、引用した情報のURLを示すというやり方。

A君:それが第四法則:「引用先が明示されている情報かどうかを信頼性の判断基準とする」。引用先がURLなどで示されている場合には、その引用先を実際にチェックすることによって、偽情報かどうかが、かなり判定できることが多い。勿論、その引用先の記述の信頼性が次の問題になるけれど、それは、第一法則、第二法則、第三法則などで判断する。

C先生:まあ、こんなところで良いのかもしれない。補償金を取るか、取らないで無視するか、これは、自分の内面における怒りの構造によって、様々なケースがあるので、なかなか難しい選択だと思うけれど、いつでも補償金を求めることが本当に賢いかどうか、それは、それこそ、個人の価値観次第。
 いずれにしても、カリウム40の有害性について記述したような簡単な事実、すなわち、「天然の放射線と人工の放射線に違いは何もない。実体は、いずれも、高エネルギーの電磁波だから」といった事実は、非常に簡単なものだから、できるだけ覚えておく、ということは、悪いことではないだろう。
 第四法則は極めて重要で、引用がしっかり行われていない文章に出会ったら、「元データの引用がない情報は眉唾モノだ」とまずは思うこと。これは、ネットにおけるフェイクニュースが普通になった現時点で、是非とも実行していただきたいことの一つだ。



付録:日経の5月1日の記事「正しい情報 見極める力を」

 武蔵大学社会学部教授 中橋 雄 氏と ITジャーナリスト 高橋 暁子 氏の記事が掲載されていた。
 ポイントだけを抜き出すと、
中橋氏の記事では、
1.メディアやSNSの情報を一度は疑ってみる習慣を身に着けよう。
2.一つのメディアだけを見ていると見方が偏る。
3.バランスが取れた見方を心がける
4.敢えて自分と異なる意見を持つ人とニュースの会話をしてみる。
高橋氏の記事では、
1.名誉毀損になることもあるので注意。
2.書いたあとにすぐ投稿せず、読み直してから投稿。
3.チェックポイント:他人を傷つける内容になっていないか。
4.企業関係であれば、冷静になってプレスリリースなどをチェック。
5.デマを広めてしまったらすぐに削除するか、内容を修正する。

 以上のようなことが記述されていたけれど、どうやって正しい情報か正しくない情報かを判断するか、という基準(もしくは知恵)を持たない人々が大多数であるという現実を踏まえると、両方の記事がいずれも、有効なアドバイスであるとは思えなかったので、今回のような記事を書いたというのが実情でした。