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  欧州風味 小型家電リサイクル法  12.09.2012



 日本に現存する多くのリサイクル法に加わる小型家電リサイクル法が、2012年8月に成立した。

 なかなか粋な法律である。

 罰則規定で固めたがっちりした枠組みを作ってルールを守らせる。これが廃棄物行政のこれまでの形だった。

 ところが、小型家電リサイクル法で事業者が守るべき対象は、国や自治体が作ったルールではない。自分で作った計画である。自分で作った計画なのだから、それを守っているかどうかについても、自己責任でフルオープンの情報を開示しなければならない。

 自らの名誉を懸けて、自己責任で自らを律する。これが根本的な思想である。

 要するに、「計画通りにやることを宣言します」、「実際、このようにやりました。自己適合宣言します」。これだけが基本骨格であるのなら、理想的欧州風である。

 しかし、さすがの欧州でも、これだけでは法律を遵守させることが難しいのが現状である。そこでサーベイランス(監視、監督、査察)システムが組み込まれるのが普通である。

 このように、小型家電リサイクル法は、これまでのリサイクル法や、廃棄物処理法とは全く異なる枠組みをもった法律で、その新しさは、「日本初の欧州風味」にある。

 さて、そもそもどのような法律なのだろうか。

 審議会の資料などが必要であれば、
https://www.env.go.jp/recycle/recycling/raremetals/index_confs.html
 ここを起点として、探れば、必要な情報はすべて入手可能である。

 最低限収集すべき資料は、
a.「「小型電気電子機器リサイクル制度の在り方について(一次答申案)」
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=19123&hou_id=14767
b.「使用済製品の有用金属の再生利用の在り方について(案」
http://www.env.go.jp/council/03haiki/y0324-11b.html


1.小型家電リ法の枠組みを一言で

 法律の本文はここにある。
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/11/pdf/jyoubunriyu.pdf

 短い法律なので、読んでいただくのが良さそうである。しかし、そのとき、これまでの廃棄物処理法の枠組みを一切頭から消し去って、「虚心坦懐」状態で読む必要がある。

 廃棄物関係のプロであればあるほど、どうもこの法律は意味が分からないと言うようだ。それは、自らを「虚心坦懐」にすることによってのみ、克服できる。

 この法律のキモは、第十条である。

 「事業を行おうとする者は、事業の実施に関する計画を作成し、主務大臣の認定を申請することができる」。

 「主務大臣は、計画(あくまでも計画だけ!)が条件に適合していれば、その認定をする。
一.基本方針に適合している。主務省令で定める基準に適合している。広域が基準に適合している。事業者の能力、保有する施設などが適合している。
二.事業者の過去の違反履歴などが基準以下である。

 要するに「計画」が主人公であって、事業者はその適切な遂行者に過ぎない。計画が認定されるのであって、事業者が認定される訳ではない。しかし、呼び名は「認定事業者」になっているので注意。ここを誤解すると、これから先の事項が理解できなくなる。


 次に重要な条文が、第十三条である。

 「認定事業者、および、認定事業者の委託を受けて業を実施する者は、廃棄物処理法の規定による許可を受けないで、必要な行為を業として実施することができる」。

 事業者は、廃棄物処理法の許可を受けなくても可能? えっ。本当か?

 そうなのである。「計画に則って事業の対象とされる小型家電」は、廃棄物ではなくなる。すなわち、認定された計画の範囲内で、「小型家電」は、一般廃棄物でも産業廃棄物でもない。

 とは言え、みなし規定がある。「認定事業者、および、認定事業者の委託を受けて業を実施する者は、一般廃棄物収集運搬業者、又は、一般廃棄物処分業者、又は、産業廃棄物収集運搬事業者、もしくは、産業廃棄物処分業者とみなす」。

 このみなし規定によって、計画を逸脱して違法行為を行えば、罰則規定については、廃棄物処理法に則った処分を受けることになる。個人は、懲役(最高5年)、もしくは、罰金(最高1000万円)を課せられる。法人は、最大3億円の罰金。


2.小型家電は、それでは何なの?

 これも答えは簡単。小型家電リ法の枠組みで認定された計画にきっちりと則って収集・処理が行われている限りにおいて、小型家電はあくまでも「小型家電」であって、一般廃棄物ではないし、産業廃棄物でもない。

 しかし、万一、計画の過程のどこかで、計画に反して小型家電を捨てた者がいたとすれば、小型家電は、その瞬間に、一般廃棄物もしくは産業廃棄物になる。

 消費者が、小型家電を不燃ごみとして排出すれば、それは一般廃棄物になる。

 消費者が、小型家電を不適正な方法で処分すれば、それは不法投棄になる。

 事業者が、小型家電を適正な方法で排出すれば、それは産業廃棄物になる。

 事業者が、小型家電を不適正な方法で処分すれば、それは不法投棄になる。

 モノだけ見ていても分からない。計画に則っているかどうかによって決まる。


3.計画に則っているかどうかの確認

 本来であれば、計画に則っているかどうかは、自己適合宣言をすることが書かれるべきであるが、さすがに、日本の現状では、自己適合宣言をするといったことまで踏み込まれていない。

 それは、自己適合宣言ということが、ビジネス界の共通理解になっていないからであろう。

 そのかわり、報告を求めることができるようになった。しかし、本来は、第十条における計画の認定条件として、自己開示を組み込ませる形での義務化が望ましかったのではないだろうか。

 いずれにしても、現状では、次のようになっている。

 第十六条 主務大臣は、認定事業者などに対し、必要な限度において、業の実施状況を報告させることができる。

 それに対して、報告の有無とは無関係に、サーベイランス機能として、立入検査を認めている。

 第十七条 主務大臣は、必要な限度において、その職員に、認定事業者の事務所、工場、事業所、倉庫に立ち入り、帳簿、書類などを検査させることができる。しかし、この立ち入り検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものではない。


4.この法律の背景

 循環に関わる法律なので、その基礎は、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)にある。

 この法律では、国際循環は、補完的なものと位置づけている。だからと言って、「製造業における国際水平分業が進展した状況に鑑みれば、必ず回収した金属を国内で製品に再生利用するべきというものではない」、という立場であった。

 私見であるが、今や、国際的なナショナリズムの台頭やテロリズムの増加があって、このようなノンビリした立場では対応が不可能だという理解になったのではないだろうか。

 一つはジスプロシウムを巡る輸出国中国との確執であり、もう一つは、コンゴ民主共和国の内戦に関わる「紛争鉱物」の問題である。金属としては、スズ、金、タンタル、タングステンを意味し、コンゴ民主共和国の周辺9ヶ国由来の鉱石である。

 ジスプロシウムはご存知の通りである。このところ需給は緩んでいるが、一時期、その価格が高騰したが、それは、中国が輸出量の制限と、国内手続きを遅延させたためであった。

 コンゴ民主共和国は、今、内戦状態にあり、ゲリラ側は、コバルトやタンタルを輸出することによって、戦闘資金を得ている。隣国のルワンダは、このゲリラ側を応援している。国際協調があって、コンゴ民主共和国産のタンタルは使わないということになっている。コバルトはOKで、相変わらずコンゴ民主共和国産が世界市場を支配している。

 いずれにしても、レアメタル類の50%は日本国内で使われ、世界に輸出されているので、国内に退蔵されている都市鉱山資源を活用すべきだ。しかも、そのリサイクルを中国でやったのでは、問題の解決には繋がらない、という認識になったものと思われる。


5.様々な質問

 ある地域の産廃事業者の団体からの依頼によって、以上のような説明に加えて金属市況の将来展望を述べる機会をもったところ、事前に以下のような質問があった。


Q1 収集段階で(リサイクル)実行するのか、処理の段階で実行するのか。
A1 この質問は、意味不明。どうも、収集したらすぐリサイクルをしなければならないと考えているようだが、それは無い。なぜならば、「すべては計画次第」だから。

Q2 「誰が」リサイクルできるのか。地方自治体の立場は。廃棄物処理業者なのか。
A2 「すべては計画次第」。ある意味で誰でもできる。地方自治体の立場も「計画次第」。地方自治体の役割を計画に入れれば自治体の参画があるし、入れなければ無い。

Q3 全体的に、何を言っているのかよくわからない。
A3 これまでの廃棄物処理法の固定観念をすべて捨て去る必要がある。虚心坦懐の境地で、法文読んで欲しい。

Q4 国内だけのリサイクルの処理コストに限界があるのではないか。
A4 その通り。しかし、処理コストだけを理由として、海外、特に、中国でリサイクルをしてしまったら、ジスプロシウムのような場合では、何のメリットもない。

Q5 小型家電は、有価になるものならないものが混在しすぎているのではないか。
A5 その通り。しかし、本当にリサイクルの価値のあるものだけをリサイクルしていては、目的の達成ができない。適切な利潤が得られる範囲内で、できるだけ多種類の小型家電をリサイクルできるようにすることが制度の目的。

Q6 処理の認可施設はどのくらいの施設規模を想定しているのでしょうか。
A6 これも「すべては計画次第」。

Q7 物が集まらないと広域から受け入れるようなことも想定していますが、地域をまたぐと発生量が把握できず、処理の規模が想定できないのではないでしょうか。
A7 これも「すべては計画次第」なので、それをいかに正確に想定することができるか、適正な計画を立案する知識力・洞察力が求められている。

Q8 同法はあくまでも一廃の話で、産廃は独自に事業者が考えることと割り切っていいのでしょうか。
A8 いいえ。小型家電はその計画の範囲内であれば、一廃でも産廃でもない。

Q9 この制度は、あくまでもお金の流れは認定事業者が資源売却益を得るしか道がなく、自治体等からお金が流れてくるというものでもないのか。
A9 これも「すべては計画次第」。もしも、計画に参画する自治体が費用負担をしても良い、となればそれはそれで良い。

Q10 市町村等は、一般ごみの中に紛れている小型電気電子機器を、どのぐらいの人手をかけて分別するのか。その後、認定事業者〈だけ〉に委託するのか、認定事業者ではないが、一廃の許可を持っている業者に委託することはあるのか。
A10 これも「すべては計画次第」で、自治体の考え方次第。しかし、一般ごみに紛れた小型家電は、その段階ですでにごみなので、そのまま処理されてしまうのではないだろうか。


6.どのような計画を作ると利益が出るのか

 実は、いくつかの縛りがある。取り扱う地域の人口密度が高ければ、それは有利である。そのため、広域での対応が求められている。その条件は、隣接する3都道府県(北海道、沖縄は例外)で、人口密度が1000人/平方キロ以下。

 さて、どうしたら良いのか。これを考えるのが、計画作成者の最大の役割である。自由度という面から言えば、誰でも参画できるし、認定された計画を逸脱した不法行為以外なら、ほぼなんでもできるので、まずは、金属資源に関する国際的状況と今後の方向性を探り、知恵を絞り、企業間・自治体・市民団体などとの協力関係を構築し、余り多額の利益を追求せず、しかし、損失を出さないような計画を作ることが求められている。

 頭を絞ったアイディアで頑張るのか。それとも、指を加えて見送るか。

 しかし、最終的には、今後の金属価格の動向が大きく収益に影響するのではないだろうか。


7.次回以降の予告

 という訳で、次回以降、小型家電に含まれる金属とそれら金属の循環の状況、特に、金属市況の将来予測について、検討したい。


8.付録
 実は、以上の記述では、かなり多くの細かい部分が抜け落ちています。それを確認するのは、本来、法文をそのまま読んで頂くのが確実なのですが、次のPPTファイルで一応カバーしてあります。
 ある地域の産業廃棄物事業者の団体での講演で使用したPPTの前半部分をアップしました。