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  給湯装置の理想形  10.22.2006
     



 エコキュート、太陽熱温水器、それとも、ガスコジェネ?? 家を新築する場合、給湯装置として何を選択するか、それは、ライフスタイルとも関連するが、重要な話の一つである。

 先日来、太陽熱温水器を設置し、その運転状況をチェックし、そして、この装置を改善するとしたら、どんな方法があるのか、を考えているが、どうやら、現時点では、理想の給湯装置はまだ存在していない、という結論に到達した。


C先生:太陽熱温水器にも2種類あって、現在使用中のものは、強制循環型と呼ばれるもの。チリウヒータ製の貯湯装置として300Lの容量のCSTP305を中心に、太陽熱集熱器CSC2Cを3枚組み合わせたもの
 社長の岡本さんの許可を取らず、概念図と仕様の概略を掲載してしまおう。

A君:了解。


図1 チリウヒータによる強制循環式給湯器の概念図 岡本社長、無断使用ご免。

集熱器仕様表(ソーラーコレクター)
型式 CSC2C平板型集熱器
集熱面積 2m2
保水量 1.5L
満水重量 36.5kg
外形寸法 幅1020×2000×厚72
透明板 3.2mm強化ガラス
集熱体 アルミニウム受光板+銅管9.5mm
背面断熱材 グラスウール
枠材 ステンレス鋼板
接続口径 銅管3/4B(20A)


貯湯槽仕様表
型式 CSTP305
システム型式 不凍液循環間接加熱式
外形寸法 幅590×奥行690×高さ1840
貯湯槽 300L
最高使用圧力 294KPa(3kgf/cm2)
貯湯タンク SUS444
循環
ポンプ 出力 5L/min-13.4/10.2m揚程(60/50Hz)
消費電力 110/80W(60/50Hz)
安全装置 不凍液不足に対し、運転停止
電源 AC100V
配管径 給水・給湯 (給水)R3/4・(給湯)Rc3/4
排水 R3/4
コレクター接続 Rp1/2
満水時重量 378kg


B君:どんな装置かを言葉で表現すれば、集熱器は、まず、太陽熱を集熱する黒色塗装がされたアルミ製の板が置かれている。その真ん中あたりが凹んでいて、そこに、銅パイプが接合されている。集熱板1枚(2平米)あたり不凍液1.5Lの不凍液がその銅パイプの中を流れる。そして、この装置そのものが、強化ガラスをはめた箱の中に置かれて、温室状態になっている。集熱板の後ろには断熱材も置かれている。そのため、まさにお天気次第ではあるが、集熱板の温度は、恐らく、最高80℃ぐらいまで上がるのではないだろうか。

A君:われわれが用意した全体概念図を見ていただきたい。不凍液が集熱板の下から供給され、上部に到達するまでに、太陽熱を吸収する。この加熱された不凍液が、貯湯槽の底の部分に送られる。多少でもお湯を使えば、この底部には、水道からの水が送り込まれる。この貯湯槽に攪拌装置は無い。付けない方がより効率的な熱利用が可能なためである。底の部分の水温は、水道水の温度である10℃(冬)〜20℃(夏)になっている。集熱板の出口で不凍液が80℃にでもなっていれば、夏で温度差は60℃もあるので、効率的に熱交換が行われ、お湯が沸く。沸いたお湯は、密度が軽いので、貯湯槽の上の方に上昇していく。



図2 当方が準備した概念図

B君:お湯は上部から使用される。すなわち、高い温度のお湯から使われる。貯湯槽のどこまで温度が高く、どこかからは温度が低いのだが、それは良く分からない。しばらく使って、温度がどのぐらい下がるか、を観察する以外に方法は無い。設定した温度よりも、貯湯槽上部の温度が高ければ、ガス湯沸し器は全く動作しない。もしも、温度が低ければ、その分のバックアップをガスが行う。冬季の水道の温度は未だ不明であるが、冬だと40℃を越すのかどうか、やや疑問。それでも、何度でも温度が上がれば、その分、ガスの節約になる。

C先生:そんな感じだ。この装置の場合、貯湯槽のトップの部分に温度計(図2中の温度センサー3)が入っていて、それが風呂場で見ることができるが、過去最高温度が72℃。雨が降り続くと水道水の水温と同じになってしまう。不凍液の循環は、集熱板からの出口温度(温度センサー1)と貯湯槽の底の水温(温度センサー2)との差で制御されているようだ。温度差が数度以上になると、不凍液の循環ポンプが作動し始める。

A君:運転条件や装置面で改良可能と考えられる点は有りますか。

C先生:基本的にはほとんど完成している。これ以上合理的なシステムは考え難い。例えば、強化ガラスに反射防止と赤外線を反射するような表面処理をしたいところだが、コストを上げるわけには行かないので、まあ無理だろう。個人的には、オプションで、貯湯槽の内部の底、中間にも温度計が欲しいところではある。その温度が複数読めれば、どのぐらいのお湯が使えるか、判断が可能になるので。

B君:この集熱板は、基本的に平板型と呼ばれるもの。以前、放物線状の鏡を用いた集熱型の機器が、冬季でも使えるという謳い文句で売られており、あの危ない話で有名な船瀬氏がそれを推薦しているという記述をブログの方で行った。一部の方のご意見では、この集熱型の機器の方が性能が良いはずで、船瀬氏の主張も当然とする人もいるが、貯湯槽を用いるタイプだと、熱交換をする相手側の水の温度はいつでもかなり低いので、最高温度を上げるために鏡などを使ったタイプの集熱装置は意味が無い。かえって、効率が下がるだけ。温度ではなく、いかに多くの熱量取り入れるか、これが正しい発想法のようだ。

A君:ガラス製の集熱器を使った機器は、貯湯槽が別に置かれるタイプではなくて、その装置そのものにお湯も貯めるという方式なのかもしれない。もしもそうだとしても、不凍液を回すことになることに変わりはなくて、熱交換が行われる訳だから、放物面鏡による集熱などが有効になる設計は難しい。船瀬氏が言っているように、雪国でも使えるなどということは有りえない。

C先生:いずれにしても、この強制循環型の給湯装置は、設計面からみれば、完成度が極めて高く、これ以上の設計はなかなか難しい。

A君:余り普及しないのは何故でしょうか。

B君:LCA的に見て、どうなんだろう。

C先生:それは、本当は諸君らに計算してもらいたいが、装置重量だけから言えば、集熱板が3枚で105kg。貯湯槽が78kg。その他、ホース類と集熱板の設置に要する構造物。まあ、全体で200kgぐらいの装置だと思えば良いだろう。直感的には、二酸化炭素発生量にして、500〜600kgぐらいの装置ではないだろうか

A君:詳細は、そのうちにやりましょう。

B君:風呂1回沸かすと、その加熱にガスを使ったとして、平均的には0.7〜1kgCO2の排出量だろうか。この装置は、関東地方であれば冬でも温度はかなり上がると思われるので、節約分を250日分と見れば、200kgCO2/年。装置分は、3年程度で元が取れることになる。

A君:しかし、100Wぐらいのポンプ動作している。これが1日に6時間程度動いたとして、250日とすれば、150kWh。この電気による二酸化炭素の発生量が60kg。これを勘定に入れると、元が取れるのに、4年。

C先生:やや過大評価かもしれないが、そんなところではないか。LCA的には、なんとか4年で元が取れる

A君:それならもっと普及しても良さそう。

B君:まあ、設備コストだろう。この装置は、かなり高価な材料を使っている。アルミ、強化ガラスでありステンレス。そのため、どうしてもコスト高にならざるをえない。特に、生産数が少ない場合には、特にそれが問題。

C先生:まさにその通りだと思う。LCA的には見合うが、コスト的にはどうか。多くの場合、深夜電力が安すぎて、それを使うエコキュートに敵わない。たとえ、エネルギーとしては安価だといわれる灯油でもそうなのだから。

A君:コスト面が解決すれば、この機器は、魅力的ではある。なんと言っても、太陽がお湯を沸かすのだから。

C先生:その通り。それこそ太陽の恵みだと思ってお風呂に入れば、疲れもしっかり取れる。

B君:普及策は無いものか。

C先生:それが今回の話題の中心だ。コスト的には集熱板よりも貯湯槽がかなり高いと思われる。

A君:貯湯槽であれば、エコキュートの貯湯槽と、構造的にはほとんど変わらない。だから、エコキュートのオプションとして、太陽熱集熱板を供給するのが正解

B君:確かにそれは合理的だ。集熱板だけなら、LCA的にも半分以下になるかもしれないし、価格的には、1/3になるようにも思える。

C先生:理論的には良さそうだが、問題は、そんな装置を作るところがあるかだな。

A君:エコキュートを作っているところに、持ちかけるのはいかが。どこか、オプションで作ってくれるかもしれません。もちろん、エコキュートの構造を変更しなければ駄目ですが、そんなに大幅な設計変更ではない。

B君:ただ、エコキュートは、しばしば太陽電池と併設される場合が多い。となると、集熱板を別途設置する場所が無い場合が多いのではないだろうか。

C先生:そんな場合にも可能性が全く無い訳ではない。まず、太陽電池の効率だが、真夏のように太陽電池の温度が70℃にもなっている場合だと、25℃の基準状態に比べて、20%ぐらい発電効率が下がっている。だから、この熱を取り去れば、効率が上がる。3kWを出力している太陽電池であれば、600Wぐらいの効率が低下しているのだから、その分の電力を使って冷却をし、取り去った熱でお湯を沸かすという方法がありうる。結果的に、負荷ゼロでお湯が沸く。

A君:これまたコストが壁のような気がする。エコキュートのヒートポンプの室外機は、大気から熱を吸い上げているので、その熱を太陽電池パネルが供給する形にすれば、お湯を沸かすことと、冷却によって太陽電池パネルの効率も上がる。しかし、実質3kWを発電する太陽電池となると、面積が半端ではない。最近のように、1枚200Wの発電能力のものにしても、40枚ぐらいは必要ということになって、その全面にガス冷却装置を貼り付けるようなことになって、コスト的には大変。

B君:液冷にして、それをエコキュートのヒートポンプがその熱を吸い上げる方が簡単か。

A君:それも有りうる。しかし、太陽電池とはいっても、やはり電子機器なので、液冷よりは、ガス冷却なのでは。

C先生:実現可能性は、やはりコストが鍵を握っていることは事実だ。どのぐらいの金額を投資するに値するエネルギー量か、といわれると、実際のところ、かなり疑問ではある。やはり、太陽熱の集熱板別途設けて、それをエコキュートに結合する方が簡単かもしれない。

A君:太陽電池は、短波長の光しか有効活用できず、従って、長波長の光は熱として回収するのが良い、と言われるのですが、最近では、シリコンの場合でも、多結晶シリコンとアモルファスシリコンとの組み合わせによって、活用できる波長域を拡大するようなことが行われている。

B君:さらに、最近開発中のCIS型では、化合物なだけに吸収波長をどうにでもいじれるので、多波長対応が当然。

C先生:結論はこうか。太陽電池の熱を冷やすという発想は悪くは無いが、面積が広すぎて、多くの場合コスト的に難しいのではないだろうか。給湯器であれば、通常6平米もあれば十分なのだが、太陽電池だと、面積が半端でない。給湯だけであれば、実は、それほど熱が必要ではない。となると、太陽電池を冷却するというよりも、太陽電池の背面に、なんとかして集熱板を別途貼り付けることで給湯ぐらいなら十分にやれるのではないか。

A君:普通の家庭であれば、45℃ぐらいのお湯が300Lもあれば、十分。

B君:給湯に必要なエネルギーには上限があるということ。

A君:まあ色々と考えてはみたものの、エコキュートにオプションとして、太陽熱吸収板を付けるという方法がもっとも現実的ということでしょうか。

B君:価格的には、10〜20万円アップぐらいでできれば。太陽電池の裏に貼り付けるタイプは安価にできると思える。

C先生:問題は、深夜電力の方が安くつく可能性があること。こんな理想的な機器であっても、その供給が行われるかどうかだろう。鍵は、電力会社がこんな機器にも魅力を感じるかだ。なぜなら、もし導入すると、深夜電力が売れる量が減るので。