昨年暮のニュースから   01.09.2011   




 昨年に報道されたニュースなどで、特に、12月に発表されたためなどの理由で取り上げる機会が無かったものの復習をしてみたい。

 (1)まずは、2009年の日本国内の排出量の速報値。これまで絶対に無理だと思われていた京都議定書の目標であるマイナス6%の達成が見えてきた。

 (2)そして、米国で7月から予約が開始されていたシボレー・ボルト(Chevy Volt)のレビューが、米国のWebなどでも見られるようになってきた。

 驚いたことに、距離延長型(?)電気自動車(extended-range electric vehicle=電池が空になった後に充電するためのエンジンを搭載している)だと思われていたボルトが、実は、なんと、ハイブリッド車(エンジンも駆動用に使われる)だった。

 (3)最後に、12月30日に報道された人工レアメタルの件。京都大学、北川宏教授が開発したというもの。元素が合成できれば、レアメタル、レアアースなどの元素は不要になる。実際に何が開発されたのか、推測してみたい。



(1)2009年度温室効果ガス排出量(速報値)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16702&hou_id=13313

C先生:12月27日に公表された。速報値ということで、今後精査され、若干の違いが生じる可能性も無い訳ではないが、大きく変わることはないだろう。

A君:しかし、驚きです。まあ予測は有ったものの、これほど下がっているとは。

B君:確かに。これなら京都議定書の目標であるマイナス6%を達成する勢いだ。

C先生:その理由としてこの文書で述べられているのは、
1)リーマンショックによる景気後退。産業部門をはじめとする、各部門のエネルギー需要の減少が続いた。
2)原子力発電所の設備利用率の上昇などに伴い電力排出原単位が改善した。

A君:理由の1)は困ったことでもあるのですが、2)による改善で、家庭部門、業務部門からの排出量が減った。

B君:家庭部門ならエコ家電の普及なども若干寄与があるはずなのだが、余り効かないということだろうか。

C先生:数値的には基準年から5200万トン(4.1%)の削減が実現できた。この数値では、目標値6%に対して、まだまだ足らないという人がいるかもしれないので、若干の説明を。

A君:目標は基準年の排出量12億6100万トンのマイナス6%である11億8600万トンです。しかし、森林吸収分による削減というボーナスがあって、それが3.8%分、さらに、京都メカニズムと呼ばれる排出量取引などで、1.6%の削減を国として行うことになっているので、合計、5.4%の削減が用意されている。
 そのため、実際の排出量としては、マイナス0.6%の12億5400万トンまで減らせば、京都議定書の目標達成ということになります。

B君:森林吸収分はOKなのだろうが、京都メカニズム分は、目論見として12億6100万トンの1.6%なので、1億88万トン。買い込んだ量はそこまで行っていない。これまでに国が買い込んだ量は、2010年2月のNEDOの報告書では、9650万トン。しかし、ほぼ目標達成状況にある。
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/focus/36/02.pdf

A君:今回の速報値には、この購入量した削減分は、まだ反映されていない。購入量をまだ償却していないという表現の方が正確かもしれませんが。

B君:しかし、排出量取引のすべてが反映されていないということではない。反映されているものもある。それは、各企業が購入した排出量だ。
 詳細は、日本経団連の「環境自主行動計画<温暖化対策編> 2010年度フォローアップ結果 概要版 <2009年度実績>
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/109/honbun.pdf
という文書を見て欲しい。

A君:そのp16に表があって、参加業種から報告された京都メカニズムを活用した主な国際貢献の取り組み事例が記述されている。そのクレジット発生量というカラムに、*2008、2009年度においては、それぞれ約6400万t-CO2、5200万t-CO2のクレジットを償却と書かれています。

B君:グラフでも、p2には、そのような表現が含まれている。すなわち、電力会社が使ったということなのだろう。

A君:そのために、電力の温室効果ガス発生原単位が下がっている。それを調整後排出係数と呼ぶのですが、実排出係数を合わせて公表されています。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13319
 この表のように、いわゆる九電力では、少しずつ、調整後の排出係数が下がっています。

B君:関西電力が排出係数が低いのは、原子力が多いから。ということは、関西地域にあるオフィスや仮定などからの温室効果ガスの排出量は、同じ電力量を使っていても、沖縄の1/3以下ということになる。

A君:政府間取引で1億トンを1000〜1500円/トン程度で買ったとすれば、支払金額が1000〜1500億。これに対して、事業者は、CDMを使ったとすると、これよりもかなり高くついていることが確実で、そのため、全部で1兆円(実際には8000億以下という説あり)の出資をしたということになるのでしょう。

B君:これほど真面目にやっている国は日本だけ。オーストラリアは、カナダはどうするのだろう。

A君:京都議定書の第一約束期間は2012年まで。今後の見通しはどうなのでしょうか。この調子で行くと、達成できるのでは。

C先生:原子力発電所の利用効率の改善が大きな要素かもしれない。この図にそのような様子が表現されているが、もしも2009年度の原発の利用効率が、84.2%(1998年の過去最善の値)なら、排出量は11億6200万トンになったはずで、森林吸収も京都メカニズムによるクレジットもなしで、目標を達成しているということになる。


図 基準年比で−0.6%で京都議定書の目標を達成できる。2009年は、なんと3.5%も下回っている。今後、原発の稼働率の向上が現実のものになれば、目標達成が見えてくる。


A君:逆に、購入した排出量が余るということはないでしょうか。順調に行き過ぎると、ということですが。

B君:可能性はない訳ではないが、2010年の温暖化ガスの排出量は増加しているようなので、トントンという見通しだと思えばよいのではないだろうか。

A君:もしも京都議定書が達成できるという見通しならば、それをできるだけ早く、キチンとしたデータを元に、途上国に伝達することが重要。これだけの資金を途上国に支払ったのだから。

B君:発表してしまって、もしも達成できなかったらどうしようなどと考えるのも日本だけ。もしそうなったとしても、外国から文句を言われることはないのだが、国内で誰かが責任を取らなければならないから、というのが本当の理由なのだ。国内で文句を言うと想定されるのは、一体、誰なのだ?

C先生:途上国に伝達するのは、極めて重要で、次のCOP17までに、すべての途上国がそれを知っているという状況にしておかなければならない。さらに、途上国に向けての技術移転をやりますよ、という宣伝も加えることが重要。



(2)シボレー・ボルトの実像が明らかに

C先生:米国の自動車雑誌、Motor Trendが2011年のカーオブザイヤーに選んだのが、このシボレー・ボルト。予約も結構入っているらしい。

A君:評価の記事は、まだそれほど数がある訳ではなくて、提灯記事が多少ある以外は、比較的客観的だと思われるものが、これらでしょうか。
http://www.edmunds.com/chevrolet/volt/2011/
http://www.caranddriver.com/reviews/car/10q4/2011_chevrolet_volt_full_test-road_test

B君:最初の記事、Edmundsは、いわゆるバイヤーズガイドというものか。価格は$40,280となっているが、これに政府からの税金の優遇措置があるはずなので、買取価格は$33、000程度か。

A君:Voltの利点=燃料費、300マイルという航続距離、ハイテクなインテリア。Voltの欠点=本当に価値があるか?、狭い室内、ブレーキ感覚など。

B君:そして、So what exactly is the 2011 Chevrolet Volt? が評価の最初の文章。

A君:ということで、ここでもその実体の説明をすることから。(cf.はプリウスハイブリッド、日産リーフの順)
モーター:111kW (cf.60kW、80kW)
エンジン:1400cc (cf.1800cc、-)
電池:16kWh  (cf.5.2kWh、24kWh)
重量:3781lbs. (cf.3100lbs.?、不明だが1600kg=3524lbs.という予測あり)

B君:車重があるので、モーターはもっとも強力。バッテリーの容量は、日産リーフが大きい。それも当然で、Voltは、エンジンがあるので、ガソリンエンジンを使って発電し充電すれば300マイルは走れる。リーフは、電気が無くなったら、タダの箱。

C先生:今回の記事から明らかになったことは、なんとエンジンが直接車輪を駆動するというモードを持っているということだ。これまでは、エンジンは、充電用にだけ使われるということになっていたのだが。

A君:どうも、米国でも日本と同様、プラグインハイブリッド車よりも電気自動車の方が未来型だという間違った理解があるようで、ハイブリッドという言葉を使いたくなかったようなのですね。電気自動車の方が歴史的にはガソリン車よりも古いのに。

B君:バッテリーの残量が30%になったところで、1400ccのエンジンが掛かって、発電を始める。エンジンは何馬力なのか、データが無い。プレミアムガソリンを使うとしか書いてない。いやいや、仕様には無いが、別のページに記述があった。84hpとのこと。hpは米国馬力で、62.6kW相当(1kW=1.341hpとして)。発電効率を0.9とすれば、56kW。通常の走行状態でこれほどの出力を使っていることは無いので、発電量は余裕があるだろう。

A君:そして、高速走行モードになると、具体的にはどうやら時速110kmを超すと、エンジンは常時駆動系に加わる。時速48kmから110kmの間だと、最適の運転状況を保つと記述されています。

B君:まあ、プリウスと同じパラレルのハイブリッドとして動作するのだろう。プリウスは電磁的CVTという仕組を使っているが、Voltはクラッチでも使って、駆動系と繋いだり、切り離したりする仕組なのだろう。モータだと回転速度を合わせてクラッチをミートすることができるから、自由自在なのではないだろうか。
 しかし、よく考えて見れば、EVモードが標準というところが、通常のハイブリッド車とは違う。プラグインプリウスと全く同じという表現が良いかもしれない。

A君:しかし、このような運転状況だと、すなわちハイブリッド車ということだと、燃費は電気自動車よりは格段に落ちますね。Edmundsの評価だと31.4mpg、すなわち、13.4km/Lでしかない。プリウスのEPA発表の燃費は、高速と都市の平均が50mpgとなっていて、これは21km/L。

B君:EPAの燃費は、ちょっとエコドライブをすれば、だれでも確実に達成できる値。日本の公称燃費とは大違い。

A君:このEdmundsの記事の評価は、「電気で走っている間はとにかく、長距離を走る車としてはどうなのか」、ということだった。

B君:そう。Edmundsの結論は、「長距離用の用途が多い人にはお薦めしない、という結論。街乗り車ならOKということ。

A君:WikiにもVoltの情報が出てますね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Chevrolet_Volt
 色々と気になる記述があるのですが、正確なのでしょうか。

B君:EPAの燃費が出てる。ハイブリッドモードだと、37mpgだそうだから、Edmundsのテストよりもかなり良い。

A君:電費も出ていて、EPAは93MPGeだそうで。

B君:電気自動車としての燃費=電費は、MPGe(Miles Per Gallon Equivalent)という形で表現されることになったのだが、それがEdmundsだと74MPGeとのこと。これでも相当良好な数値だが、EPAのデータよりも悪い。この手の車の場合、テスト方法などに、まだまだ熟成が必要ということなのではないだろうか。

A君:電費が出ているということですと、航続距離の算出ができますね。もしも74MPGeが実用的な電費であるとして、33.7kWh=1ガロンのガソリンという換算のようなので、2.2マイル/kWhで、3.5km/kWhとなります。
 Voltのバッテリーは16kWh搭載しているけど、完全に充電すると寿命が短くなるので、通常80〜90%しか充電しない。もしも80%充電だとすると、実質上、45kmが電気自動車としての航続距離だということになる。これだけだと短距離専用車ですが、Voltはエンジンがあるから、ガソリンを使って、ハイブリッド車として燃費は悪いが、相当走れる。

B君:日産リーフとの比較も面白い。Car & Driverによればリーフの公称電費が99MPGe。これから算出すると、4.7km/kWh。これは電池を80%までしか充電しないとすれば、90kmの航続距離だということ意味する。公称の160〜200kmという発表されている航続距離とは全く合わない。

A君:Car&Driverの記事によれば、
http://www.caranddriver.com/reviews/car/10q4/2011_nissan_leaf_sl-short_take_road_test
この160km航続という数値は、100%充電という非現実的な状態からスタートして、LA4というテストモードで出したものだそうですね。中身は、急激な加速をすることもなく、40mph=64km/h以上の速度も出さないという。まあ、電池も運転も非現実的な数値ですね。

B君:ヒーターを使ったりすると、やはりリーフでも60kmぐらいしか走れないかもしれない。日本でのテストレポートが待ち遠しい。もしも本当に60kmしか走ることができないとしたら、返品したい人が出るだろう。返品が可能なのだろうか。

C先生:そろそろ様々な自動車雑誌が取り上げても良いころだ。待つとしよう。



(3)人工元素ができた?? 12月30日読売

C先生:京都大学の北川宏教授が、ロジウムと銀からパラジウムの性質をもった新合金を作ったとのことだ。

A君:周期律表で両隣の元素を使って、真ん中の元素と同様の性質の合金を作る。それには、原子レベルで分散した構造を作る必要がある。

B君:原子レベルで分散していると、中間的な性質になるということは、無いとは言えないが、いつでもそうなるとも言えそうもない。

A君:北川教授のHPを見ると、今は、ナノテクもやっていますが、理学部出身でもともとは有機化学が専門だったのでは。

B君:平成22年1月に日本化学会の学術賞を受賞している。その研究題目は、「多彩な電子・水素相の創出と固体プロトニクス材料への展開」。そのまま読むとナノテクを使って、電子構造をいじる、同時に、水素吸蔵などの性質を変化させる。そして、水素を制御するような固体材料を作る。燃料電池でも狙うのだろうか。

A君:研究論文を見ると、ナノ化したPdの水素との相互作用の研究などもやっています。

C先生:とにかく原子レベルで分散した新合金ができた。それが何か新しい性質をもった。これが実用になるかどうか。さらに言えば、このような発想を他の元素に対して適用することによって、同様の発見ができるかどうか。それは分からない。
 もともと融け合わないロジウムと銀だから、それを無理やりに原子レベルで混ぜられたから、このような新しい性質を持ったという可能性が強いような気がする。もしそうなら、可能な組み合わせは、それほど多くないということかもしれない。