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   50Hzと60Hzが共存する国の未来
     
日本はなぜ世界でほぼ唯一なのか 10.22.2017
               



 不思議だと思ったことは有りませんか? なぜ、日本には50Hzと60Hzの電気が両立しているのでしょうか。先進国では、世界でも唯一なのです。

 Wikiによれば、50Hzと60Hzが共存している国は、日本、アフガニスタン、パキスタン、インド、スリナム、旧オランダ領のアンティルしかありません。非常に変わった国だということです。

 50Hzと60Hzがなぜ共存してしまったのか。それは、歴史的な状況があったからです。

 これまたWikiによれば、以下の通りです。

 関東では、1887年から直流送電を行っていた東京電燈が、交流の優位性の高まりに応じて交流送電への転換を決めた。そこで、50Hz仕様のドイツ・AEG製発電機 (AC 3kV 265kVA) を導入し、1893年に浅草火力発電所を稼動させた。

 関西では1888年に設立された大阪電燈が当初から交流送電を選択し、60Hz仕様のアメリカ・GE製発電機 (AC 2.3kV 150kW) を採用した。

 ほぼ同時期に関東と関西で別々の周波数の発電機を導入したことがその起源です。

 この状況は、現時点において、日本の送電網にとって、重大な弱点になっていると理解すべきだと思います。それなら、統一すれば良いではないか、と考えるのが普通なのでは。本日の主題はこれです。

  
C先生:火力や水力、あるいは原子力が発電の主流であれば、送電網に二種類の周波数があっても、それほど大きな問題になるとは思えない。それぞれの地域に必要かつ充分な電力が発電できるように、発電所を配置すれば良いだけだからだ。例外が、大災害によって、東日本あるいは西日本の発電所が何箇所もダメージを受けてしまうような場合だ。しかし、2050年の電力は自然エネルギーに相当依存するとなるだろうから、大きな問題が出て来る。究極的には、直流送電や一つの周波数を志向するなどの根本的解決策を実行すべきだと思う。

A君:火力発電の石炭火力は、最長でも2040年には終焉。それから先にも使うとしてら、CCS(CO2の隔離貯留)を併用することになるのですが、日本という国土に、どのぐらいのCO2を隔離するのに適した地下構造があるか、となると、極めて心もとないのです。過去に天然ガス田あるいは油田として使われていたところが、適地ということになるのですが、秋田から新潟にかけて若干、千葉県もゼロではないですが、余り頼りにはならない。貯留量の総計がまずは50億トン程度までではないですか。

B君:今の排出量から言えば、2015年の排出量がCOだけで、12億2千万トン余なので、その80%をCCSで処理するとしたら、50億トンが限界だとしたら、5年で使い切ることになる。

A君:今回の衆議院選挙でも、原発ゼロを主張している政党が多いのですが、すぐに全廃という主張から、再稼働は猶予するなど、若干の違いはありますが、それぞれの実現可能性をしっかりと検討した形跡のある政党は皆無です。どうやって、今や「生活の最重要の必需品である電力」を供給するのか、その具体案を出さないで、勝手な主張をする政党は、日本という国と国民の未来を考えていないと判断してしまいます。

B君:多分、電力ぐらいどうにでもなる、と考えているか、電力が無くなっても困るのは日本の産業界だけで、国民が電力不足で困ることにはならない、と考えているのだと思う。

A君:スマホの充電もできない。しかし、これは、自分の家に太陽電池を1枚だけ買い込むと解決できるマイクロインバーター付きの商品化が加速すれば、なんとかなりますが、冷蔵庫を動かすには不足。

B君:日本の電力は余りにも信頼性が高いので、多くの人々にとって、「いつでも使えることは当たり前」になりすぎている。一般家庭は、年に1回は、ある予告された日に何時からかは分からないけれど、3時間だけ停電するといった仕組みでも導入しないと。例えば、東京大震災が起きたときに起きるであろうが、電力が全く使えない状態が数日継続するといった状況を想定し、これに対応するといった人が増えない。

A君:日本人はリスク対応をしない国民性ですから。何かまずいことが起きてしまったら、「諦め」で対応するのです。

C先生:これは繰り返しになるけれど、なぜ、50Hzと60Hzが別れているとまずいのか、未来を考えながら、説明して欲しい。

A君:2050年には、CO排出量を80%削減ということになっていますが、そのためには、次のような方針で望む以外には無さそうです。
(1)電力は完全にゼロCOする。
(2)残る排出可能量20%は、製鉄・セメントの削減困難二大産業にまず付与する。その変わり、排出量に比例した炭素税を納付してもらう。炭素税は、国境調整をすることで、製鉄の国際競争力維持対策は行う。
(3)自動車からの排出もゼロCOする。しかし、EVだけではなく、バイオ燃料によるプラグイン・ハイブリッド技術を高度化しつつ価格競争力を付けて、国際競争力を維持。
(4)電力貯蔵技術を格段に進化させて、不安定なインバーター型発電(風力・太陽光など)の増加による不安定化に対応する。特に、駐車中のEVの電池を活用したシステムとする。
(5)観光・自然保護を充分に配慮しつつ、できるだけ多くの地熱発電・温泉発電を導入する。
(6)欧州のような巨大風力は、日本では風況の悪さのために主力にはならないので、自前で、世界最悪の風況に対応できる独自の風力発電機を開発し、風況の悪いアジア地域へも供給する。
(7)欧州に比べれば、やや南方に位置する国土条件を活用するためには、太陽光が主力で有り続ける。メガソーラー適地だけでは用地が不足すると思われるので、太陽光発電の農地への設置なども検討する。
(8)地域においては、ローカルな不安定な電力供給網を構築し、EV用などに供給する。

B君:自然エネルギーのポテンシャルだが、少なくとも風力と地熱に関しては、東日本が有利なのだ。風況の良いところは、北海道西部と秋田県、海上でよければ伊豆七島も良い。しかし、西日本には適地が少ない。地熱も、阿蘇を除くと、ほぼ北海道から北陸に偏在している。

A君:C先生が先日行った秋田県湯沢市から栗駒山などには、東北のポテンシャルがある。

B君:ということなので、自然エネルギーからの比較的安定な電力の可能性を考えると、東日本がかなり優位。西日本は、太陽電池に依存せざるをえない。現状でも、九州・四国などはかなり太陽電池の設置量が多い。

A君:ということで50Hzである東京電力と60Hzである中部電力間の連系線の容量をもっと増加させなければならないことは、すでに計画があります。現状では、120万kWという容量なのですが、まず、2020年までに90万kWを増強して210万kWに、そして、さらに90万kW増加して300万kWについては、できるだけ早期に実現するという計画があって、ここまでは政策的支援を行うということが、経産省(エネ庁)によって表明されています。

B君:北海道と東北間にも連系線と呼ばれるものがあるのだけれど、こちらは、周波数変換を行う訳ではない。しかし、これまでは海底ケーブルで送っていたので、交流という訳にはいかなかった。交流だと水によって損失が増えてしまうからだ。60万kWを2018年度末までに90万kWに増強予定。ただし、将来は、新しい青函トンネルの中を通すのだと思う。

A君:現状での連系線の強化の必要性については、大規模地震などの災害時での需給維持の観点から議論されているのが実態で、2050年に対して配慮をしたものではないのです。

B君:2050年を考えると、そもそも日本の人口がどうなっているか、それも分からない。そうでなくても、このところ電力の消費量は減少気味。したがって、現時点でなんらかの方針を決めてしまうという訳にはいかない。

C先生:その通り。しかし、素人的な発想ではあるが、長期的な未来を考えれば、50Hzと60Hzという二分された電力網を最終的にどのようなものにすべきか、という議論ぐらいは始めても良いと思うのだ。というのは、今後、EVが増加すると、電力の消費量が増えるのだけれど、その増加量はそれほどのものだとは考えられていない。となると、新たに必要となる電力系統もそれほどのものとは思えない。

A君:そうなんですね。大規模災害や2050年に向けて、根本的な解決を計るとしたら、極端な話、周波数の統一をした方が早いのではないか、という考え方もあるかもしれない。

B君:少なくとも、現在の自動車がEV化し、かつ、シェアリングが普通になり、かつ、自動運転が当たり前になると、それを電力網にどのように組み込むべきか、ということを考えなければならない。しかし、現状では、まだまだ早すぎるけど。

A君:本当に早すぎるのかどうか、それには、現在ほど、電力の周波数変動は大問題なのか、といった根本的な問題である系統の安定性についても、技術的な観点からも検討をしておかなければなりません。

B君:それについては、太陽光とか風力のようなインバーターを使った電源と、大型の装置が周波数に合わせてグルグル回っている従来のタイプの発電装置では、全く性能が違うのだ、という話がある。確かに、大型のはずみ車が回っているようなものなので、相当な運動エネルギーを持っている。その慣性力によって、一定の回転数を保とうとするだろう。数秒〜数十秒程度までなら、ゆらぎを吸収してしまう能力があるだろう。

A君:系統に対する安定を維持するために、大型の回転機器が必要不可欠なのだろうか。すなわち、これをEVの電池で置き換えることは可能なのだろうか。こんなことが、分かっている人はかなり限られているように思います。

B君:原理的には、仮想同期発電機制御という方法を使えば、なんとかなるという提案もあるようで、この説明は、こんな論文を。
http://www.kansai.meti.go.jp/5-1shiene/smart_energy_initiative/data/2016/E-3.pdf

A君:ただし、かなり大電流容量を出すことができることが条件ということでしょうか。

B君:それは、発電所レベルの大電流を出すことが条件にはなるだろう。

A君:となると、EVが様々な場所に分散して存在している場合とは、必ずしも等価ではないことになります。

B君:まあそういうことかもね。分散型だと、抵抗成分が大きいと判断しなければならない。しかし、需要側が変動要因だとすれば、需要側に近いところに電池があれば、系統の安定性の向上に寄与するだろうし、メガソーラーに近いところに電池があれば、それは、供給側の変動の抑制に寄与できるだろう。ただ、制御するのは、面倒なことになって、新しい仕組みが必要かもね。しかし、技術的に不可能とは思えない。自律的制御を可能にすることが可能のようには思える。

A君:現状ですと、系統が不安定になるかどうか、それは、周波数が変動することが問題とされているのですよね。そのため、周波数を0.2Hz以内とかいった変動幅に抑える必要がある。

B君:まあその通り。しかし、現時点でも0.2Hz以内といった制御が不可欠なのか。というのも、以前は、シンクロナスモーターというモーターがあって、電気時計などにも使われていた。これは、電力の周波数が一定であることを応用して、正確な時間を刻む電気時計ができたからだ。そのため、織物を作ること(織機)にも、このモーターが使われていて、周波数がフラフラすると、織物の柄が歪んでしまうという文句が来ることがあった。しかし、いまでは、石英発振器が簡単に使えるし、電波時計もあるし、ネットにつながれば、標準時も簡単に受けることができる。ということで、シンクロナスモーターの回転数が変わることは、本質的な問題点ではなくなっている。

A君:周波数が多少変わっても、系統の安定性が崩れるということでなければ、かなり自由度が上がりますね。

B君:しかし、何の準備もなしに、明日から、日本全国の周波数を55Hzに統一するというようなことはできないだろう。発電機も困るだろうけれど、それは、まだなんとかなるような気がする。多分、もっとも困るのが、トランス(変圧器)ではないか。素人判断である可能性も高いが。

A君:トランスは、電気的に言えば、インダクタンス。確かに、周波数が変わると、特性が大きく変わってしまうので、例えば、損失が増えて発熱が非常に増えるといったようなことも考えられますね。

B君:少なくとも、60Hz用に設計されたトランスを50Hzでは使うことができない、ということらしい。それは、鉄心の磁束が1.2倍になって、鉄心の断面積が不足して、過励磁状態になってしまうからとされている。

A君:柱上トランスが、現在の60Hzの範囲にいくつあるのか分からないけれど、全部交換するのは不可能でしょうね。

B君:もともと、50Hz用のトランスは、大型に作られているようなので、60Hzでも使えるらしいし、最近では、50/60Hz両用というトランスがあることはあるらしい。

A君:ということは、日本全体の周波数を60Hzに変更するということも、将来的にはあるかもしれないということですか。その逆は無いけれど。

B君:多分そんなところだが、果たして、実行可能なのだろうか。

C先生:こんなところで良いかもしれない。昔は、家電製品、特に、モーターを使う製品は50Hz専用と60Hz専用に別れていた。最近は、インバーターを仕込んだ製品が多いので、そんなことは無くなってきた。だから、ある日突然、周波数を60Hzに変えるなどということも、非現実的ではないかもね。しかし、二種類の周波数があることで、本当に困るのは、日本の東西で電力を融通するときぐらいなものなのだ。300万kWを超して電力を融通する必要があるとしたら、それは早ければ2040年、まあ2050年頃のことだろう。そのときまでに様々な準備をしておいて、一気に60Hzにしてしまうといった考え方もあるのかもしれないね。あるいは、電力幹線は直流にしてしまうという方が、インバーター技術の進化を考えると、より現実的なのかもしれないが。