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   未来を読むための必須アイテムは何か 
       AIは地球環境を守らない?? 03.18.2018

               



 前回の予告で、2050年といった未来を読み解くためには、宇宙限界、地球限界といったこれまでの経済的な予測を超えた知識のアイテムや広い視野が必要であると主張しました。

 今回は、その第1回目ということですが、余りにも難しい課題ですから、これで決定版という積りは全く無いのですが、まあ、様々な方向性であらゆる可能性を考えた上で未来を読まないと、思わぬ何かが起きるだろうという主張をしてみたいと思います。

 記述の項目としては、宇宙限界、地球限界、技術限界(AI限界)、経済限界といったものになるのだろうと思います。


C先生:それでは、最初は宇宙限界から。ここでもっとも基本的かつ重要なことは、地球は宇宙の一部であって、特異性は全く無いから、例えば、地球上のある元素が枯渇したからといって、宇宙に探しに行けば、それを代替するような元素が見つかるということは無いということだ。

A君:確かにその通りですね。話が変わりますが、最近の宇宙理論の進化は凄いですが、はっきり言って、何が何だか分からないぐらい難しい。理解するというよりは、そうなんだと思い込まなければならないような気がします。

B君:そうだな。説明は不能。高エネ研が作っているサイエンスキッズ向けのページもあるけれど、これで理解できたら、大人でも天才なのではないか。
https://www2.kek.jp/kids/greet/index.html

C先生:今回の記事の本当の目的は、「実用的な要素を明らかにしたい」。そのため、「もっとも人類が困る状況とは何か」、「対策をするには何が分かれば良いか」、といった論点なので、本当のことを言えば、素粒子論まで戻る必要は全く無いのだ。人類が困る要素とは、2050年には、かなり古くから使っている多くの元素が、枯渇に近い状況になるかもしれない。その対策として何を考えれば良いのか、といった程度の理解で良いのではないか。

A君:それでは、「元素の枯渇とは何か」、から行きます。地球はほぼ閉じた空間ですので、元素が無くなることはありません。勿論、本当に僅かですが、宇宙に向かって発射された探査機などは、地球に戻ってきませんから、これに使われた元素は失われます。一方、人工衛星がゴミになった場合には、何100年か経てば、地球に落ちて来ますので、元素は地表に戻ります。

B君:無くなるもう一つのケース、それが、地球の大気に含まれている微量のヘリウム。軽い元素なだけに大気の最高部分から少しずつ失われている。水素はもっと軽いけれど、化学的な活性が高いので、水として存在するのが普通。したがって、失われる速度は低い。

A君:なぜヘリウムは化学的活性がほぼゼロなのか。隣の元素である水素は活性が高いのに。これは原子の電子構造で説明されるのですが、実は「宇宙限界」の一つでしょうね。宇宙を構成している元素の特性を決める宇宙共通のルールがあって、ヘリウムのような電子配列を持った元素は活性が低いのが当たり前。地球上だけで不活性な訳ではないですね。

B君:しかししかし、宇宙レベルで不活性なヘリウムでも太陽のような大きな星だと、重力が大きいので、原子同士が強力に押し付けられて核融合を起こす。しかし、これだって、宇宙全体での共通ルールであって、たまたま地球は小さいから核融合を起こすほどの重力はなかったし、今も今後も、勿論無い。

C先生:話がずれたが、地球上で元素が枯渇するということの意味が、若干分かっただろうか。枯渇すると言っても、元素が地球から失われるために枯渇するのではない。単に、どこかに散らばって(散逸して)しまって(=エントロピーが大きい状況になるので)、それを集めて再利用することが難しい状態になるから、実用的には失われると同じことになる。

A君:そのための対策としては、とにかく、再度使えるようにという「散逸対策戦略」と、他の元素を使うという「代替戦略」ととの二種類があることになります。

B君:ただし、「代替戦略」については、これまた宇宙限界が立ちはだかる。「他の元素で代替」といっても、そんな元素はもともと存在していないのが普通。しかも、元素の量は、宇宙ができたときの原子核の安定度と原子の化学反応性によって決っているので、鉄、アルミ、シリコンなどのような存在量が多い元素と、金、銀、銅のような少ない元素と分かれている。これはいかんともし難い。

A君:最近の電池はリチウム電池ですが、このリチウムは、最終的には海水中にも存在するのですが、やはり、ボリビアあたりの塩湖の干上がったところあたりから採取するのが効率的ですね。

B君:リチウムが枯渇することはかなり可能性は低いと思う。しかし、新電池開発という観点から言えば、リチウムとナトリウムの間に、もう一つ、別のアルカリ元素があれば、電池用としては最高なんだど、という状況になったような気がする。

A君:ナトリウムと次のマグネシウムの間に元素があっても、電池屋にとっては、凄く嬉しいかもしれない。

B君:残念ながら、全宇宙を支配する原理によって、そのような都合のよい状況は無いことが証明されている。代替戦略は、宇宙レベルで否定されることが多い。

A君:元素枯渇でもっとも危険なのが、亜鉛の枯渇かもしれませんね。かなり大量に存在している元素なのですが、その用途から考えて。

B君:確かにそう思う。亜鉛は現在、鉄という簡単に錆びる元素の防錆用として使われることが多い。亜鉛が先に溶け出して、鉄の錆びることを防ぐという、通称「自己犠牲型」と呼ばれる使われ方なので、亜鉛は最終的には海に入る。

A君:確かに。亜鉛と同様の特性の元素というものはありますかね。

B君:無さそうな気がする。亜鉛は特殊かもしれない。かなり違う元素ではあるけれど、アルミを活用する以外にないのでは。

A君:となると、亜鉛以外の元素の枯渇対策としては、「散逸対策戦略」が本流だということになるのですが。すなわち、リユース・リサイクルですね。

B君:リユースは、不可能ではないのだけれど、やはり製品の劣化ということによって、本質的な限界はある。例えば、あらゆる製品を規格化して、再利用が可能なシステムにしたとしても、錆びてしまえば、無限には使えない

A君:リユースについては、それよりも社会的・経済的な制約が大きい。ガラスびんが直面しているのは、利便性と製品保証の二面で難しい。確かに、プラスチックで使用1回限りにすれば、コスト面でのメリットが大きい。といっても、それは、どのようなコストを製品に載せるかで決まってきます。例えば、PETボトルの回収は、製造者の責任であるという社会制度を作れば、全く異なった世界になりますからね。

B君:流通系の企業の主張は、ガラスは途中で破損する可能性があって、それが問題。しかし、ガラス以外に容器が無かった過去では当たり前の話だった。これも社会というものが変容したために起きていること。別の社会制度になれば、全く違う。

A君:リサイクルにしても、現在、都市鉱山などということが言われていて、使用済の携帯電話・スマホを集めて、東京オリンピックの金メダルを作るようなことが行われています。これもなんとか不可能ではないのですが、携帯電話・スマホはすべてレンタルとするという社会制度になれば、自動的にそのすべてが製造者のところに戻って来ます

C先生:「散逸対策戦略」は、いつの時点で、その元素が危機的な状況になるか。この予測がもっとも重要。現在の鉱業は、品位の高い鉱山が生産性がもっとも高い。すなわち、価格も安いので、そこから使われて、そこが枯渇すれば、次に移るというやり方で運用されている。全く新規の鉱山開発も無い訳ではないけれど、すでにかなり新発見は難しいのではないか。

A君:そこで都市鉱山からの回収は必須ということになりますが、現在、小型家電リサイクル法なるものがあって、ほぼあらゆる家電製品から有用元素の回収を目指しているのですが、実際に回収されているのは、金・銀・銅と鉄・アルミぐらい。もともと、この小型家電リサイクル法の本当の狙いは、これらの汎用元素以外の希少元素の回収にあったようにも見えるのですが。

B君:確かにそうかもしれない。小型家電リサイクル法の施行は平成25年(2013年)4月1日。約5年前か。

A君:記憶では、小型家電リサイクル法のきっかけになったのは、モータ用磁石に使われるジスプロシウム・ネオジムの価格高騰。2011年7月がピークでした。

B君:平成24年9月にまとめられた産業構造審議会・中央環境審議会の合同会合でまとめられた「レアメタルリサイクル中間取りまとめ」によれば、ジスプロシウム・ネオジムのリサイクルは、今後活発になるとされていた

A君:しかし、現実にはそうならなかった。なぜならば、ジスプロシウム・ネオジム(希土類)の生産は、中国独占状況だから。しかも、非常に変わった形態の鉱山(吸着鉱)から生産しています。もともと、花崗岩に含まれているのですが、それが雨水で現れて、溶解度の大きな希土類が流れ出て、それが、特殊な地層に吸着された。肥料にも使われる硫安の溶液を流し込むと、ジスプロシウムなどが簡単に溶け出してくる。したがって、山を掘削する方法に比べれば、生産コストが非常に安い。しかも、この類の鉱山は、どうやら中国南部にしか見つかっていない。

B君:地球限界の一つの形態がここに現れているための唯一性なのではないか。しかも、ジスプロシウムにしても、ネオジムにしても、他の元素では代替が不可能という宇宙限界に支配されている。

C先生:そして、日本では小型家電リサイクル法ができて、希土類などの希少元素のリサイクルをやろうということになったのだ。そのときの合同会合のレポートの内容をまとめた記事が、ここにあるが、
http://www.cjc.or.jp/raremetal/overview/needs-targets/neodymium-dysprosium
2025年までのネオジム、ジスプロシウムのリサイクルのポテンシャルという図が出ている。


図1 ネオジム、ジスプロシウムのリサイクル予測 平成21年度、平成19年度

A君:ところがどっこいでして、現実はどうなったか。当時、話題の中心であったジスプロシウムの価格は、かなり下がってしまった。その理由が、磁石にかなり大量に使われてたジスプロシウムの量を減らすことに磁石メーカーが注力して、その結果、ジスプロシウムの輸入量が下がった。

B君:となると、何が起きるのか、というと、希土類というのは、実は名前の「希」に反して、実際には結構埋蔵量があるものなのだ。これは宇宙限界支配だからだけれど、そこで、価格は下がった。

A君:値段が下がれば、リサイクルは行われない。したがって、この図1の未来予測は多分達成されない

B君:だから悪いのか、と言われれば、希土類が枯渇する危険性は、金・銀・銅に比べればしばらく先だから、取り敢えず問題はない、としか言いようはないけれど、超長期を考えれば、やはり、希土類も枯渇傾向にあると思われる。

A君:ただ、中国の吸着鉱のような存在形態は、赤道付近の多雨地帯であれば、他にあっても良さそうに思えるのですね。花崗岩が風化すること、雨によって元素が流されて、それがどこかに貯まるということならば、他の地域にも無いとは言えない。

B君:一方、ジスプロシウムなどの希土類がこれほど使われるようになるとは思わなかった。これも現実。これは、人間側の技術的な無限性によるものかもしれないが。

A君:しかも、モーターなるものが、これほどの勢いで普及するとは思わなかったですね。そもそも、スマホのバイブレーターは、小さなモーターですからね。

B君:やはり、EVやハイブリッド車の駆動用モーターは、リユースもしくはリサイクルの対象にすべきだと思われるが、スマホのバイブレータまで集めて、希土類を回収するということが、人類の未来にとって重要であるか、と言われると、むしろ、スマホは最低でも10年間使うという社会的対応をする方が、解決策として適切かもしれない。

A君:そうなると、スマホ製造業は倒産する。

B君:すでにその傾向は始まっている。AppleのモデルXが売れなかったのは、その証拠なのではないか。

A君:そう言えばC先生のスマホは何年ものですか。長い間同じような気がするのですが。

C先生:その通り。すでに4年目に入った。実用上全く問題がない。スマホを選択するとき、もっとも重視しているのが、電池の容量。このスマホの電池は多分3000mAhだったと思うけれど、そもそもスマホの寿命が電池の劣化で決まるというのは、理不尽だと思っている。他の製品で、そんなものがあるだろうか。この製品をリサイクルに回したとしても、多少の金しか回収されないだろう。勿論、バイブレータは付いているので、モーターは入っているだろうが。

A君:まあ、そんなものですね。スマホはそろそろ趣味(と信仰??)の商品から脱却すべきということでしょう。そうなれば、長寿命化の道を歩むことになるのは必然ですね。

B君:それが宇宙限界、地球限界を考えた生活の知恵だということになる。

C先生:そろそろまとまったようだ。宇宙限界、地球限界を意識しながら生活することが、すでに必須の条件になる時代も、2015年の大転換によって始まったように思えるのだ。
 それ以外にも、考えなければならないことは、非常に多いAIというものが人間の職業を奪うのか、それとも新しい職業を作るのか。しかし、これは、ある意味で人間界の限界の話。人間界では、これまで、ヒトという生命はクリエイティブに生きるべきだ、というのが全体的な善であったように思えるのだけれど、そもそも、クリエイティブとは何か。その定義からやり直さないければならないように思える。しかし、現時点でも、少なくとも、クリエイティブの条件は分かっている。他の人にはできないことをわざわざ好んでやること。そして、新しい定義が出来た。クリエイティブとはAIにはできないこと
 AIには限界がある。それは、AI側にではなくて、実は、使う側に限界があるからだ。何をインプットしてAIに学ばせるか。これは人間側が決めることだ。あらゆる情報を入れることも、容量的には不可能だとは思えないが、人間社会が経済原則に縛られて動いている以上、経済的に無用な不要な情報をAIに入れるという行為は、経済的に無駄な行為のまま残るのではないだろうか。
 しかも、AI入れることができる情報は、かなり確定論的な情報以外は無駄だろう。どういうことかと言えば、「このような条件下では、これが有利」という情報なら、AIシステムは積極的に活用するだろうけれど、この状況だと多分こんなことを人々は(ある特殊な集団を含めて)考えるのではないか、といった情報がAIに入ったとしても、有用な情報とは考えられないので、使われることは少ないように思える。
 結局、AIに勝てる人とは、ぼんやりした感覚的情報を大量に持っている人間なのではないか。このような情報は、多くの人と語り合うことによって得られると思う。さらに、感覚的にちょっと変わった情報であれば、さらに良さそうだ。
 今回、宇宙限界、地球限界などをトップダウン的に議論したけれど、AIにこれらを入力することは、当然可能だ。しかし、多分、経済的に成立しないという結論がでるようなデータは、そのうち、使われなくなって、AIが自分で廃棄するのではないか。宇宙限界、地球限界は、その中に入ってしまうような気がする。
 ところが、人類の本当の危機は、「経済的に成立しなければならない」という選択肢を積み重ねて、何年か実行した後に来るように思えるので、この矛盾点を指摘できるような考察方法を身に着けていることが、ひょっとしたらAIの盲点を突くことに繋がって、本当の意味でクリエイティブなことなのかもしれない。その一つの要素が、宇宙限界・地球限界の理解であり、そして、その限界に基づく人類の限界を理解することなのではないだろうか