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 低炭素得意技を主張できない日本   07.25.2010 07.31補
     



 新人参議院議員の議員歳費が、6日分ではなく、1ヶ月分支払われるようだ。一方、来年度の国の予算は平均して10%カット。消費税議論もどうやるのか。

 消費税について、どうして毎年1%ずつ上げるという案がでないのだろうか。日本経済はデフレに苦しんでいるのも一面の真実。毎年1%ずつ上昇するなれば、もはや物価が下がることは無い、という意識になって、消費が誘起されるのではないだろうか。景気は「気」の問題が大きい。


 さて、最近、日本の経済競争力の低下を嘆く言葉が随所で聞かれる。低下したことは事実である。しかし、その理由は様々だが、多くのことが日本という国の深層にへばりついていて、そう簡単に解決できるような問題ではない。

 韓国は、人口規模が日本の1/3強。まだ発展途上の部分もあって、元気が良い。まだ深層にこびりついた抵抗成分、船で言えば船底にへばりついているフジツボがまだ少ないのかもしれない。あるいは、1997年のIMF危機や2008年のリーマンショックの影響で、フジツボが取り除かれたという可能性もある。事実、自動車産業などは、キレイに整理されてしまった。

 グリーン・イノベーションが話題になっているが、本当の意味で優位性がある技術=得意技が、国家的なシナリオに組み込まれていないという不思議な国、それがこの日本という国である。

 本当の意味で、日本という国が、国を挙げて取り組むべき得意技は何なのか。これを考えよう。さらに、国を挙げて取り組むことが可能かどうかを考えよう。

 オバマ大統領が着任早々に提案したグリーン・ニューディールには、しっかりと米国の得意技を仕込んでいた。ここで提案されたスマートグリッドという概念は、GoogleとGEのための新産業だったとも言える。



追補:先週、図1 3種類のエンジンとモータを使う車 をアップせずに放置しまして、失礼しました。やっと作りました。

 しかし、まだまだいくらでも種類がありそうです。その後、ボルボが、後輪をモータ、前輪をエンジンが駆動する車を2013年から発売すると発表。 エスティマ・ハイブリッドはそれに似た構成ですが、前がエンジン+モータ、後がモータのみ。むしろ、四駆にするために、後輪にも駆動力を付与した形。前がエンジンだけだと、ハイブリッド車として最大の難点は、どうやってエンジンをスタートするか、だろうか。マツダのi-Stop技術が欲しいところかもしれない。プリウスなどの場合には、強力なモータがエンジンを始動するため、最初、モータのみで走りだして、いつのまにかエンジンが掛かる状態が実現できるのだから。



C先生:菅内閣になったため、今後どうなるのか。中期目標も、かなり見通しが難しくなった。恐らく、15%(90年比)マイナスぐらいのところで行くのではないだろうか。残りの10%は、現在の京都議定書の枠組みであるCDMとか、国家間の排出権取引といった形で確保することは無い。新しい枠組みを作るのだ。いよいよ、日本の何を世界に対して売り込むのか。本当の意味での得意技は何か。しっかりと判別し、国民全体としての共通認識になければ駄目だ。

A君:話は、2020年までにこれを使わなければ問題外といった得意技的技術を再確認すること。

B君:それが終わったら2050年になるが、C先生の新コタツ文明は、本来、2050年向けなのだが、一部、2020年にも実用になるものが多い。

C先生:グリーン・ニューディールの時代から様々な文書がだされている。内閣府総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、などなどだ。現時点でどれが正本なのかよく分からないので、新成長戦略からキーワードを拾うことにしたい。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf

A君:p15から始まるのですが、個別技術として取り上げられているのは、以下の通り。

*固定価格買取制度の拡充などによる再生可能エネルギー
  −太陽光
  −風力
  −小水力
  −バイオマス
  −地熱
  −など
*IT技術を活用した低炭素社会
*原子力利用の着実な取り組み
*蓄電池
*次世代自動車
*火力発電所の効率化
*情報システムの低消費電力化
*省エネ家電の普及
*日本型スマートグリッド
*リサイクルの推進
*レアメタル・レアアースの代替材料
*エコ住宅の普及
*ヒートポンプの普及拡大
*LEDや有機ELなどの次世代照明
*緑の都市
*オフィスビルの更新
*公共交通の利用促進などによる地方都市


以上ですね。

B君:さて、上から行くか。
 まずは、太陽光。毎回述べているように、太陽光発電は、もはやROI(Return on Investiment)、すなわち投資をしたときにどのぐらいリターンがあるかで決まってしまう。となると、安価な太陽電池が有利。中国製あたりに支配される可能性が強い。

A君:量子ドットのような超高効率を目指す技術は、どうみてもデバイスが高くなって、また、寿命が長いとも思えないので、コスト的に成立しない。もしやるのなら集光型なのだが、それは日本では適さない。土地の確保が問題になるから。

B君:同じ太陽でも、太陽熱発電。集光型の大規模なものも同様。太陽熱温水器は、どうみても現状では価格が高い。もっと長持ちするようなものでないと。現在では、エコキュートのオプションとして付けるタイプがオススメなのではないか。

A君:ただ、エコキュートも、カタログ通りにCOPが出ていないという噂もありますね。また、使い方を誤ると省エネでないということは事実のようですね。

B君:このところ、あらゆる環境技術に疑いの目が向けられているとも言える。

A君:次は風力。風力は、このところ、超低周波音などが問題にさせるようになった。かなり主観の問題だと思うが、余り好まれなくなったということなのだろう。コミュニティーにその売電の一部を配当するような仕組みができれば、再度普及するものと思われる。風力発電機も、どうも価格競争になっている。

B君:小水力。これは、コストで見ると、ベトナム製の発電機を買うことになる。そうでなくても、電力網に接続するようなものは信頼性などの点で問題になるので、ミニでもマイクロでもなくて、ナノ水力をオフラインで使うというのが良いように思うのだが、どうだろう。例えば街灯など。昼間も付けっぱなしで良いのでは。すでに電力網があるところではコストが合わないので、それ以外のところということになるが。

A君:バイオマス。これは熱利用が妥当なところだが、とにかく伐採コストが大変。発電用に専焼設備を作るのは絶対にコスト的に合わない。むしろ石炭との混焼で、多少なりともCO2削減に寄与するのが良いように思える。

B君:地熱。やっと動き始めたようだ。最近の掘削技術の進歩で、国立公園の外から斜めに泉源に向かって掘り進むことが可能になったようだ。是非がんばって貰いたい。今後、アジアではインドネシアやフィリピンなどでの普及が見込まれるが、日本製の設備は、とにかくコストが問題か。

A君:以上で終わり。ただし、いずれも2020年までの技術。それから先も、多少の改善策に留まるのでは。例えば、洋上風力とかいった形。

B君:2050年でもこれらが主流なのか。それは寂しい。あとは、大量普及できるような技術を作るとか、北澤先生(北澤宏一、現在JSTの理事長)の主張のような超伝導送電か。
 「科学技術は日本を救うのか」、北澤宏一著、ディスカバー21、ISBN978-4-88759-792-1、1200円。

A君:それには、やはりコストが安くならないと。

B君:あるいはその本にあるように、地磁気が弱りつつあるが、人工地磁気を作るためにどうしても超電導送電が必要になるといった場合か。

A君:さて、これ以外、「など」として何があるだろうか。2020年までの技術としては、是非とも多少の海洋エネルギーを創りだして欲しいところですね。デモ用として、四国佐田岬のあたりにでも海流発電機の設置を。

B君:漁業補償を回避するために、漁協に電力の権利の一部を提供するとかいったことが必要になるかもしれない。

A君:海洋発電と高深度地熱は2050年までの開発課題。高深度地熱は、高温岩体発電と呼ばれることもある。

B君:水力以外で、真の国産エネルギーとして期待できるのは、この2つぐらい。だから、これを得意技にしなければならない。それには、相当の覚悟をもって望むべし。

A君:一部には、メタンハイドレートなどを候補だと上げる人もいますが、まず不可能。採取するために必要なエネルギーが、獲得できるエネルギーを上回って、結局エネルギーロスにしかならないように思う。

C先生:例の話だな。「一般に、資源は枯渇しないが、エネルギー資源だけは例外的に簡単に枯渇する。それは、エネルギーを獲得するのにやはりエネルギーが必要だから」。コストの問題ではない。

A君:それなのに、これまでコストコストと言い過ぎているのですが、それは、投資をする条件が、3〜5年で元が取れるというもので、余りにもコストだけを考えているというのが、われわれの主張なのです。

B君:そろそろ次に行きたい。
IT技術を活用した低炭素社会」、これは余りにも多様なので、何を特技にするのか、よく分からないぐらいだ。

A君:よく言われるのが、テレビ会議。確かに使えない訳ではない。日頃、気心の知れた社内などの会議であれば十分以上。

B君:バーチャル旅行やバーチャル観戦が本HPの提案なのだが、余り受けが良くない。

A君:観光地のガイドや車両に搭載されているビデオカメラ+マイクをある時間借り受けるというもの。

B君:テレビ放映の無いスポーツのリアルタイム観戦とかでも、自前のパソコンとWebカメラがあれば、インターネットアクセスが可能なら、サービスをすることも不可能ではない。

A君:どこかのJ2リーグのサッカーチームあたりが試みれば良いのではないだろうか。

C先生:いささか小物だが、先日、山口県立大学に行ったときに、やはり公共交通を復活させる手法について、議論になった。バスは、どんどんと潰れているという。1時間に1本のバスは、やはり誰も使わない。時間が運行不安定だとさらに誰も使わない。
 東京のバスは、全部ではないだろうが、その路線のどこにバスがいるか、ネットで分かるものがある。どういうシステムなのだろう。GPSを搭載しているのか?
 東急バスナビhttp://www.busnavi.net/tokyu/
 これだと、我が家に近いバス停から渋谷に行くバスは10〜15分おきぐらいなのだが、今、行ったばかりで、次のバスが来るのが、大体、16分後だということが分かる。これなら乗ってみようかという気になる。

A君:次が原子力。これは、今や、日本の特技になったのですが、国内の競争が激しくて、なかなか売り込みが難しい。鳩山首相がベトナム首相に直接売り込みを図ったが、そもそもどの企業を推薦するつもりだったのだろうか。

B君:東芝は、WH(ウェスティングハウス)を買収してPWR(加圧水型)のトップ。三菱重工は、昔からPWRを生産してきた。日立がGEからのライセンスでBWR(沸騰水型)。フランスにはAREVAなる世界最大の原子力企業グループがあるが、三菱重工はここと提携している。

C先生:韓国だと、先日、UAEの原発を受注したのが、韓国企業聯合だが、連合体にはWHが入っている。当然、WHの技術を一部採用しているため、WHの親会社である東芝が協力することになるのだそうだ。

A君:ということは、世界中の原子力企業は、すでになんらかの意味で繋がっている。

B君:ベトナムへの売り込みに成功したロシアはどうなんだ。

A君:ロスアトムという国営企業があって、これが対外的には、ロシアを代表しているということらしいですね。

B君:さすがにチェルノブイリの黒鉛炉ではなく、軽水炉なのだろうが、いささか心配が無い訳ではない。しかし、軍事援助をテコにして、ベトナムへ売り込みに成功した。

A君:いよいよ蓄電池ですか。リチウム電池、ニッケル水素電池、ナトリウムイオウ電池(NAS電池)、などは、日本の得意技ですが。

B君:日本のリチウム電池業界は、自動車業界によって、完全に分断されてしまった。またまたプレイヤーの数が非常に多くなった。プレイヤーの数が多すぎるのが、日本の企業の最大の弱点。そのため、国内での戦いで消耗してしまって、国外で戦うまでエネルギーが回らない。

A君:リチウム電池の主要プレイヤーは、以下の通り。

パナソニック+三洋 → トヨタ
GSユアサ+ホンダ → ホンダ
GSユアサ+三菱  → 三菱
NEC+日産    → 日産
日立        → 米GM
東芝        → 独VW


B君:ニッケル水素電池は、現時点ではホンダとトヨタが使っているが、いずれも、パナソニック系になっている。

A君:ということは、ニッケル水素電池は、世界を支配できるということ。しかし、特性として、やはり難しい。重くて嵩張るのが最大の欠陥か。自動車用としては、選択肢がやはりリチウムになってしまう。

C先生:ニッケル水素電池は、水素吸蔵合金なるものに、原子状の水素を吸わせて負極とし、正極には、水酸化ニッケルを使って、ニッケルの2価と3価の価数の変化という化学反応を使用している。水素吸蔵合金は、様々な形式のものがあるが、希土類系が多いのだろう。重金属だから重い。ニッケルも重い。

A君:電解質は、水酸化カリウムの濃厚水溶液。すなわち、固体正極:液体電解質:固体負極型の電池。電極に固体を使っている電池の場合には、その反応に固体が関与するために、どうしても寿命がある。固体が別の組成の固体に変化するのは、なかなか難しくて、「そのうちハゲ落ちる」と言いたいぐらい。要するに性能が落ちる。しかし、水素は比較的用意に固体の中に入り込むためもあって、このところ、かなり長寿命のニッケル水素電池が作れるようになってきた。

B君:リチウム電池は、負極には、炭素にリチウム元素を無理やりに押し込んだ(インターカレーションと呼ぶ)材料を、正極には、遷移金属の酸化物で、リチウムイオンを押しこむことができるものを用いる。電解質は、有機液体。これも固体正極:液体電解質:固体負極という構造を持っている。ということは、電極に寿命がある。

A君:ナトリウム硫黄電池NAS電池)は、
http://www.ngk.co.jp/product/insulator/nas/principle.html
動作温度が300℃という中温型なのですが、この温度だと、ナトリウムも硫黄も溶けて液体になっている。したがって、これらの活物質が寿命を決める訳ではない。固体なのは電解質。βアルミナと呼ばれるナトリウムとアルミニウムの酸化物を使っている。この固体は、ナトリウムイオンをかなり良く通すので、電解質として使える。

B君:特に、不純物が入り込むと、βアルミナの劣化が激しくなる。それは、ナトリウムイオンの通路に入り込んで妨害するからだと考えられる。

A君:さらに、βアルミナは、焼結体なので、その粒界は、ナトリウムイオンが集中的に通る。その際、粒界に損害がでる可能性がある。これもβアルミナの寿命を決める要素になる。

B君:しかし、根本的に、活物質が液体だから、この電池の寿命は長い。特に、良質なβアルミナが使われている場合には、相当長寿命である。

A君:そのため、不安定な風力発電の平準化のための蓄電池として活用が期待されている。現時点で、この電池を作ることができるのは、日本ガイシ1社だけ。

C先生:まずは、このナトリウム硫黄電池は、日本の特技として世界に売り込もう。あるいは、パテントを京セラなどにもライセンスして、世界中への供給量を増やすとか。

A君:日本ガイシの資料によれば、リチウム電池のコストの1/8で済むとか。

B君:ナトリウム硫黄電池(NAS電池)を世界中に売り込もう、ということをなぜ政府は言わないのだろうか。

C先生:それがこの国の不思議なところなのだ。ある特定の企業だけを押すことができないのだ。その企業がいかにトップランナーであってもなのだ。
 グリーン購入法という法律があることは良く知られているだろう。国は、環境性能の良い製品を率先して買いましょう、という法律だ。しかし、その対象製品になるには、複数の企業が十分な量を市場に供給していることが条件になる。
 これは奇妙なことで、本来であれば、環境面で先端的な製品は、育てる必要がある。育った後で買いましょうというのは、余り効果がない。

A君:次が次世代自動車です。

B君:7月20日の日経、21日の朝日などが記事にしているが、ホンダは、2013年からプラグインハイブリッド車を発売すると発表した。やっと、自動車の正常進化型がプラグインハイブリッドであることを宣言した形だ。

A君:これまでトヨタ1社だけがプラグインハイブリッドを作ることができた。これで、2社になる。やっと日本という社会で認知を得られる形になった。

B君:本当に簡単なことなのだ。電気自動車に移行するということは、中国製が普及する社会に変えるということだ。さらに、電池の価格が1/5になったとしても、電気自動車に搭載できる電池の量はそれほど増えないことも理解されていない。もっとも決定的な要素は充電時間だ。

A君:米国テスラモータースのEV、ロードスターだが、なぜ買う人がいるのか。それは、価格が高いから。要するに、ひとりで複数台の車をもっているクラスの金持ちが買う車である。

B君:そういっても説明になっていない。ポイントは、搭載している電池の量。といっても、サンヨー製の18650という円筒形の電池を7000本近く搭載しているということではなくて、その電気容量。58kWhもある。これは、三菱iMievの16kWh、日産リーフの24kWhと比較して、2〜3倍以上。

A君:問題は、充電時間。現在、日本で考えられている充電設備としては、次ようなものがある。


20kWhのリチウム電池なら

普通充電(200V) 充電時間7時間*
   設置コスト 65〜90万。
中速充電(20kW) 充電時間1時間*
   設置コスト 250万円+工事費
急速充電(50kW) 充電時間30分*
   設置コスト 800〜1000万円
 *。急速充電の場合には、80%ぐらいまでは速いが、それ以後、遅くなる。


中部経産局作成の報告書 平成22年3月
「クルマの未来とすそ野の広がりを考える懇談会」
より。

B君:もしも、テスラ・ロードスターの電池が完全に空だったとして、満タンになるまで充電するなら、普通充電だと、約20時間になる。家庭に設置できるものは、コストから考えて、普通充電だろう。一度空にしたら、翌日フル使うのは不可能。

A君:ロードスターは、カタログ値で360kmの航続距離があるのですが、実際には200km程度だと思う。だから、これで旅に出たとすると、米国では1日600km走ることなども普通のことなので、急速充電でも2回は充電しなければならない。急速充電は、100%充電できるような方法ではないので3回になるかもしれない。1回80分の充電だとしても、3回だと所要時間が4時間というありえない充電時間になる。

B君:それに加え、急速充電設備に乗り付けて充電しようとしたら、先客がいた。どうする

A君:ガソリンスタンドなら待っても5分ぐらい。しかし、急速充電スタンドだと、短くて20分ぐらい、長いと40分ぐらい待たなければならない。これは解決不可能な問題。しかも、ちょっと考えて見れば分かることです。
 もし、きちんと考えるとどうなるか。どうせ売れない電気自動車のために、急速充電スタンドに巨額の投資をする企業が居るとは思えない。電気自動車のインフラ整備は、普通充電までは進む可能性があるが、急速充電の整備は進むかどうか疑問です。国がやるべきだというのは、とんでもない考え違いで、日本の得意技を消すためにやるようなもの。

B君:こんな本がある。「日本経済の勝ち方、太陽エネルギー革命」、村沢義久著、文春新書691

A君:なるほど。電気自動車とソーラーで不況脱出ができるという主張ですね。表層的にモノゴトを捉えると、そうなるのかもしれない。現実は、全く違う。しかし、ゴーンCEOの言葉は給料分の重みがあるということなのでしょうか、無条件に信じる人が多い

B君:とにかく、プラグイン・ハイブリッドは日本の特技。本命は大事にしよう。プラグイン・ハイブリッドは、現在リースでの販売が行われているプラグイン・プリウスの場合、電池は5.2kWh。これなら、100Vの家庭の電源でも、4時間もあれば充電が可能なので、夜間に充電すれば十分。このような考え方で行けば、16kWh程度が、家庭で毎晩充電できる電気自動車の搭載すべき電池の量になる。

A君:ということは、iMievはOKだが、リーフだとフル充電は無理。航続距離が減ってしまう。

B君:すなわち、ローカルな用途以外には使えないという結論が重みを持ってくる。

A君:各家庭が充電設備に70万円も出すという仮定が成立するならば、搭載可能な電池の量は2倍になって、リーフでも余裕。

B君:要するに、何が問題か。各家庭が毎日使っている電気量が10kWh程度であるということと、電気自動車がその2倍もの電池を積んでいるということが理解されていない。

A君:言い換えれば、自動車というものがいかにエネルギー的に無駄な製品であるか。たった1名か2名の人を運ぶのに、これほどのエネルギーが必要だということが理解されていない、とも言える。

C先生:電気自動車については、こんなところで良いだろう。要するに、プラグイン・ハイブリッドだけが正常進化系であって、電気自動車は、全く異質の製品であるということだ。しかも、プラグイン・ハイブリッドを作ることができるのは、世界でトヨタとホンダしかない。この日本1位と2位のメーカーだけが、世界全体でみても本命と言える技術を持っている。となれば、日本人としては、「プラグイン・ハイブリッド以外は、本命ではない。だから、この本命を主流にするのだ」、と述べるべきだ。

A君:プラグイン・ハイブリッドを作ると言っているのは、これまではトヨタ1社だったので、なかなかそれが言えなかったのが現状。ホンダがどんなプラグイン・ハイブリッドを作ってくるのか、プリウス流のハイブリッドではないかもしれないが、現在のインサイト型では、本当の意味でのプラグイン・ハイブリッドとは言えない。

B君:シボレー・ボルトのようなエンジンを搭載した電気自動車は、エクステンデッドマイレッジEVと呼ばれるが、その効率は、やはりプリウス型のプラグイン・ハイブリッドには効率面で勝てない。

A君:スズキが計画中のものは、シボレー・ボルト型なのだが、なぜか日本のメディアはプラグイン・ハイブリッドと称している。どうにも、日本のメディアは、海外崇拝思想がまだ抜け切れていない。

B君:何がプラグイン・ハイブリッドなのか、それを定義すべきだ。

定義:「プラグイン・ハイブリッド車とは、モータとエンジンの両方を備え、状況に応じて、モータだけで、あるいは、モータとエンジンの両方を駆動力としての走行が可能である車で、外部から充電が可能なもの」。

付随する定義:「充電専用のエンジンを搭載した電気自動車は、プラグイン・ハイブリッドとは呼ばないのが正しい」。少なくとも、プラグイン・ハイブリッド大国を目指す日本ではそう呼ぶべきではない。

A君:図で違いを書いて見ましょうか。



図1 電気、ガソリン両方を使う充電可能な自動車の分類。

A君:まず、プリウス型。これは複雑です。エンジンが1台。モータが2台。それに電池。モータのうち1台は発電機用。駆動用モータ、エンジンは、任意の割合で駆動用に使える。モータを止める。エンジンを止める。いずれも自由自在。

B君:制御が余りにも複雑なので、他のメーカーは、トヨタの特許なしに、これは作れないと言われている。トヨタは、それを公開してしまった方が、結果的には良いのかもしれない。

A君:ホンダIMA型、あるいは、インサイト型。エンジンとモータは直結されていて、一体になっている。別々に回すことはできない。ただし、モータは、発電機にもなりうる。エンジンが十分のトルクを供給しているときには、発電用になるし、回生ブレーキ用にも使える。

B君:ホンダだけでなく、メルセデスとBMWが共同開発したものも、ほぼこの形式。簡単。しかし、モータだけで走るには、エンジンのバルブを全部閉じるという荒業を使って、エンジンが空転できるようにしなければならない。

A君:シボレー・ボルト型。これは電気自動車。エンジンは発電機に直結されていて、車の駆動用には使うことはできない。電気を供給するだけ。

B君:富士重工なども開発をしていた。しかし、プリウス型に効率面で勝てないので、現時点では、シボレー・ボルト以外には、市販予定は無い。と思ったら、そう言えば、スズキが開発中とのこと。販売までいけるかどうか。

A君:なぜ、充電専用エンジンをもつ車が先進的でないか、と言えば、モータのみで走っているときには、エンジンは錘(おもり)でしかない上に、上り坂など負荷の大きい状態では、エンジンとモータが協調して動作する方が、より効率的なのだが、それができないから。

B君:充電専用エンジンを搭載したものは、歴史的にシリーズ型ハイブリッドと呼ばれていたこともある。充電専用エンジンは、ある運転状況だけで動作すれば良いので、結構効率を上げることはできるのだが、最終的に、勝てるところまで行かなかったという歴史がある。

A君:ところで、ホンダが考えている12年発売予定のプラグイン・ハイブリッドはどんな形式なのでしょうか。個人的には、現在のIMA型の拡張型ではないかと思います。モータ出力を今の5倍ぐらいにして、エンジンのバルブを全閉状態にすることで、モーターだけでの発進と走行を可能にした車を出してくるのではと想像します。

B君:シリーズ型を出してくることはないだろうか。まあ、可能性は低いだろうが。

A君:これまで電池の価格が高すぎて、開発が上手くいかなかったということなら、分からないですね。可能性はなしとは言えない。

B君:この方式なら、トヨタの特許に抵触しない。それが理由か。

A君:まあそうですね。トヨタは、プリウス型のハイブリッド車の特許を1500件ぐらい持っているようなのです。これをライセンスすることは名言しているのですが、日本のメーカーでは、以前、日産がアルティマに搭載して、米国で売っていた。最近、マツダが新たにライセンスを受けることになった。

B君:日産は、アルティマ・ハイブリッドを現時点でも米国で売っている。
http://www.nissanusa.com/altima/#/key-features/hybrid/
ハイブリッドシステムは、カムリハイブリッドやSAIと同じかもしれない。

A君:日産は、自力でハイブリッド開発をやっていて、この秋にはフーガ・ハイブリッドを出します。走行時間の半分ぐらいはエンジンが止まっているというから、そのままプラグイン・ハイブリッドになりそうです。

B君:しかし、当分の間、ゴーンCEOは、プラグイン・ハイブリッドが将来の本命だとは言わないだろう。やはり、小型のハイブリッド車を出してから、そう言うことになるだろう。

A君:まあ、2年後ぐらいには、ゴーン氏も言うかもしれないですが、そのときには、ゴーン氏はもはやCOEではないかもしれない。

C先生:余りにも長くなったので、ここで、中断。残りは次回もしくは別の機会に。