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   EcoLeadプレミアムサマースクール2016
     
21名の応募があって無事開校 09.11.2016



 明12日から開校するEcoLeadプレミアムサマースクールは、次世代の環境研究者を育てる試みで、最初、国連大学の副学長時代に5回ほど行った成果をもう一度見なおして、再挑戦したものです。

 しかし、なかなかの産みの苦しみでした。原因は、一つは、私自身にあって、学会の世代交代が進んで、最近、教授・准教授の皆さんとのコンタクトが薄くなったことです。具体的には、口コミが余り効かなくなったということです。第二に、学生さん達が、例えばアルバイトで忙しくなったということ。そして、第三に、学生さん達のマインドが変わったことがあるかもしれません。「見返りが無いとやらない」から、単位でも設定することを大学に頼んだらどうだ、という提案もありました。しかし、それよりも、第四は、大学という組織の機能がなんとなく単機能化したことが原因かもしれないと思います。あえて言えば、インパクトファクターの高い論文を書けば、それで一流になれるという単純化された評価システムのためかもしれないということです。環境などという学問の範囲では、やはり、実際に社会が変わるかどうか、ということが重要で、そのような提案が大学人から出せるのかどうか、これが本来問われるべきだと思うのですが、なかなかそのような評価基準にはなりません。まあ、難しいから当然ですが。簡単に言えば、大学人が、特に、学長が文部科学省の方向しか見ていないためではないか、と思います。

 しかし、なんとかなりました。様々な方々、特に、知り合いの大学教授にお願いのメールを出す羽目になりましたが、それ以後、勢いが上昇し始めて、結果的に応募者21名と予定よりも1名オーバーになり、無事に開催に漕ぎ着くことができました。今回初めて、ポストドクターにも参加を認めることにしましたが、3名のポスドクの応募もありました。

 今回のプログラムやスケジュールは、このWebサイトで公開しております。
http://www.eco-lead.jp/archives/news_eco/summer-school2016/
私を含めて10名の講師が1時間〜3時間の持ち時間の範囲内で、21名の大学院生に加えて、10名程度のスポンサー企業からの参加者に対して講義を行い、できる範囲で議論を行う、という方式です。

 これまで、大学院生にしか質問の権利を与えておりません。しかし、大学院生が全く黙っていたら、企業人からどのような質問が行われるのか、という体験を大学院生にしてもらうのも有効かどうか思い、私の持ち時間については、大学院生優先という形で、解禁をしてみても良いかと考えています。

 大学院生にとって、やはり考える場にして欲しいと思っています。そのため、考えることは強要しようと、次のような仕組みを作りました。

 未来予測に関する5種類の課題を与える。学生は4つのグループに分ける。グループ構成は、様々なバランスを考えて、こちらが決定。グループには、モデレータと発表者を選択してもらう。

 課題は、以下に示すようなものですが、未来予測に関するものなので、課題の付録として、こちらが考える「なんとか答えがでそうなやり方」を提案しています。勿論、これ以外の考え方でやることができれば、それに越したことはないのですが。

 ということで、午後5時に講義が終わって、それからの時間にグループで取り組む課題などについて書かれた、次の文書を公開いたします。




EcoLead Premium Graduate Schoolのグループ課題

1.受講者の班分けによるワークショップの目的

 同じ課題に取り組む目的は、他の専門分野の人との会話(言語)が通じるようになること
 どのような議論が行われたか、最終日の最後のコマで、一応、各班からの報告をお願いしたい。時間は10分から20分程度で自由。できれば、PPTを使った報告が分かりやすいと思う。
 その結論や提案の妥当性を評価するつもりはないので、自由に議論を楽しんで欲しい。


2.検討するテーマ

4つの班のテーマは、次の5つから選択することとする。ジャンケンで勝った順に、選択させる(重複不可)。

課題1.日本の人口は、このままの状況が続くと、2050年には9000万人程度になっている可能性がある。しかし、人口が少ないことは、例えば、オーストラリアが広大な国土を持ちながら、人口は2300万人しかいないことは、それ自身が大きな問題だとは言えない。
 課題:日本の人口問題の本質を明らかにし、どのような国を設計すれば(教育政策、都市政策、地域政策、経済政策、社会福祉、税制、移民政策、などなど)、解決に向かう可能性があるかを考えよ。特に、どのような政治家を選択すれば、各種問題が解決する可能性があるか。これが重要な問題であることを意識し、なんらかの考察を行ってみよ。

課題2.日本における東京の存在は、オリンピックを迎えることも含めて、かなり特殊だと言わなければならないだろう。しかし、このままの形で、2050年を迎えるとも思えない。
 課題:日本の大都市を一つ選択し、都市のエネルギー供給や他の環境対策を考えると、その都市は、どのような都市になっていると考えられるか。また、政策によって、それは変えることができるか、2050年頃を前提として推測してみよ。

課題3.日本は製造業で生きている国であると考えているかもしれないが、すでに製造業への依存度は低下しているとも言える。今後、日本が経済的な活力を維持することはできるだろうか。
 課題:2050年における日本の経済は、どのようなものになっていると考えられるか。それに基づき導入される技術などを想定した上で、2050年に、どのような製造業が生き残っているか、推測して見よ。

課題4.パリ協定のお蔭で、CO2排出量のゼロ化が必要不可欠だという状況にはなっている。しかし、なんらかの問題解決が合意されても、それが未来永劫、環境問題が出ない訳ではないと思われる。
 課題:環境問題のこれまでの推移を延長するとき、CO2排出問題が解決した後の2100年頃、どのような問題が重大な環境問題として考えられているだろうか。推察してみよ。

課題5.スマホが個人の行動に与えている影響は非常に大きい。しかし、スマホは、アップルに見られるように、経済に与えている効果も絶大なものがある。今後、2050年を想定したとき、やはり、なんらかの新規な製品が普及し、経済にも影響を与えると同時に、個人の行動にも影響を与えていると思われる。
 課題:2050年頃、具体的にどのような種類の製品が、現在のスマホのような形で、個人の行動に大きな影響を与えているかを考え、それが個人の環境に関連する行動に与える影響を考察して見よ。


3.お奨めする取り組み方

a. 上記のような未来を推測することは、当然、そう簡単なことではない。例えば、技術などについて、何が実現されるか、などなど、誰も確実なことは言えない。政策に関しては、ますます難しい。例えば、自動車の自動運転も、どこまで一般的になっているか、実際に、どのような事故が起きるかに依存しているものと思われる。

b. ただし、永久機関が特許の対象にはならない、というルールがあるように、「絶対」にダメなものはダメである。しかし、「絶対」の判断を行うのも実は難しい。

c. そこで、なんらかの対応法を用いることが必須だろう。
(1) もっとも現実的な方法は、過去から現在までのトレンドが分かっていれば、それを未来に延長してみることである。ただし、未来まで延長することに意味があるかを判定する必要があって、難しい。
(2) もっと楽な方法としては、次のようなものもある。
 ご存じのように、これまでにも、未来予想、あるいは、予想される未来を主題とした科学書、映画、小説、などなどは、鉄腕アトムが日本のオリジナルとしてあるように、諸外国にも実に様々なものが存在している。
 そこで、このような先駆者達の想像力がどのようなものであったか、ネットを調査して解析する。それらの中で、選択した課題に関係する事象を調べ上げる。様々な観点から、実現性、普及性などを判定するために、議論を行う。さらに、その未来像に関しても、ネット上で、様々な人が意見を述べたり、感想を述べているだろう。それも可能な限り調べ上げる。そして、それらを組み合わせて未来像を作り、その実現可能性をできるだけ科学的に検討した上で、そのチームとしての一つの結論を作るという方法をお奨めする。
 勿論、これ以外の方法を発明することができれば、それはそれ自身に価値がある。

                                       以上
          
 さて、この課題に若干関わるように、という思いも込めて作った講演用のPPTも、そのうち、公開いたします。