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    予告:EcoLeadサーマースクール2019   04.21.2019
       テーマ:2050年の地球に貢献できる人材とは?

               



 今年も、EcoLeadサマースクール2019を開催します。日程は、9月2日(月)の午後1時スタート、6日の午後5時終了予定です。昨年の実績報告書が、
http://www.eco-lead.jp/archives/news_eco/summer-school2018-report/
にありますので、参照して下さい。
 このサマースクールは、筆者が国際連合大学の副学長を務めていたときに5回開催し、その後中断、持続性推進機構の理事長になってから再開したもので、現時点は、といえば、セカンドフェーズが進行中となるでしょう。2016、2017、2018と3回開催しましたが、2019を含めあと2回の開催で終了せざるをえない状況になる可能性が高いと考えています。
 今年のプログラムですが、例によって、6名の大学関係者(+企業人・官庁関係各1名)からの3時間(企業・官庁は半分)の講義、そして、与えられた課題に対する参加院生・学生によるグループディスカッションの結果報告、という構成です。
 サマースクールへの参加募集は、5月中旬にプログラム最終構成が決まってからスタートしたいと思っております。参加すべきかどうか、できるだけ早く判断できるような情報提供を行うのが、本日の目的です。すなわち、今回のサマースクールに参加することで、どのようなことを学んで、あるいは、経験して帰って欲しいか、さらには、現時点の環境問題や社会的情勢をどのように理解すべきなのか、大学院生(候補=現時点での学生を含む)として何を身につけておくことが必須なのか、などなど、個人的な見解に基づいて書いてみたいと思います。

 本サマースクールでは、数限定ですが、企業からの参加者も募集します。座席を占拠する権利金をお支払いいただき、その収入は、参加する院生など達の交通費と宿泊代などに充当します。座席は、会社名で確保されますので、交代で出席いただくことが可能です。企業からの参加者は院生のサポーターという立場ですので、講師への質問は、院生優先です。もしどうしても質問がある場合には、講師と名刺を交換されて、後日コンタクトという方式でお願いします。


C先生:国連大学時代に、サマースクールの開催を最初に考えた理由は、環境問題というものに取り組むと、非常に広い範囲の知識を要求される。一つの大学に存在する環境関係の教授は複数居るかもしれないが、その講義でも、すべての知識が獲得できる機会が得られるとも思えない。日本のトップクラスの教授・企業人などにかなりの時間の講義をしてもらって、それを経験することによって、かなりの確率で環境というものをどのような背景と道筋で考えたら良いのか、というヒントが得られるのではないか、と考えたからだ。

A君:かなり多くの環境系の大学人・研究者に講義をしてもらいました。やはり、非常に有用な体験をしたと思ってくれた院生が多かったように思います

B君:しかし、今年のサーマースクールは、特に、現時点の世界と日本の状況をしっかり反映したものにする必要があるように思う。日本政府が、やっと真剣に取り組む方向性が明らかになったのだが、大学は、やや置いてきぼり状況なので。

A君:確かに。海外では、2015年にパリ協定が合意された瞬間から大きなうねりが起きたのですが、日本という国では、「気候正義」というパリ協定の「根本的な思想にピンときた人」はほとんど居なかったですね。まあ、そもそも理解できない言葉である、あるいは、日本ではそもそも近寄らない方が良い単語である「正義」が使われていましたから。

B君:しかし、やっと、昨年夏に「パリ協定長期戦略懇談会」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/
が内閣府に設置されて、C先生が10名のメンバーの一人(他のメンバーはすごい人だらけ)に選ばれて、8月3日に第1回が開催された。会議そのものは、最初の議事録を見ると、
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/dai1/gijisidai.html
たった40分で終了している。

A君:それを5回やっただけで、この量の最終報告書「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会提言」(平成31年4月2日)ができているのは不思議。

C先生:確かに不思議だが、その経緯は、すでに2回に渡って本サイトで報告済み。
http://www.yasuienv.net/ParisLongTermMeet1.htm
http://www.yasuienv.net/ParisLongTermStrat2.htm

A君:そして、今回の趣旨は、以上の内容を学生・院生レベルの年齢層なら、どう理解し、どう、自分のものとして考えなければならないのか、その道筋を議論してみようとうものにしたいという意図である。これで良いですか。

C先生:まあそういうこと。しかし、学生だから、社会人だから、という区別は不必要だと思っている。2050年生きる人類の一人として何を理解し、何を考えておくか、ということが問題なので。その目的に合致した形で、今年のサマースクールは実施をする。すなわち、講師の選択基準を、これまでは「地球環境を語る様々な達人教授」だったのだけれど、今回、「パリ協定などで今後必要になる対応の様々な要素を語る達人教授」に拡大して見ようということだ。

A君:言い換えれば、「このような情報や様々なスキルを獲得しないで研究者や企業人になっても、すぐ通用しない人になっちゃうよ」、というスタンスで、各達人教授が、自分の考えを熱く語るというやり方。

B君:個人的にも是非、聴いてみたいね。

C先生:その通りだ。自分でもそう思う。ここまでで、「すべての記述が終わった」ということでも良いのだけれど、余りにも短いので、せめて、これぐらいは知ってほしい環境と地球に関する様々な歴史的な変化を短めにまとめてみるか。スタートは、環境問題が始まってから、終わりは、現在存在している国際的枠組みまで。年代で言えば、公害問題の発生から地球環境時代の現時点まで

A君:公害問題だと、日本が世界的な代表国ですから、国内問題としてどうこうという話になります。しかし、それでは全く通用しないので、国際的なレベルでどんなことがあったか、ということからスタートですかね。公害は、日本だけではないので。

B君:終わりは、2015年パリ協定までの国際的な枠組みの変化を追うといことで良いのではないか。

A君:それでは、始めますが。さて。スタートは、公害先進地域=先進国であったヨーロッパ・アメリカ・日本からということになります。

B君:なるほど。ではスタート。
1873〜1892年 ロンドンで大気汚染で500〜2000人が死亡。
1900年 足尾銅山鉱毒事件
1949年 農薬工場の災害で250人の被害
1952年 ロンドン・スモッグ事件 推定死者4000人
1962年 レイチェル・カーソン「沈黙の春」出版。化学物質汚染、特に、農薬。
1960年代後半 水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく、など日本で被害者
1972年 ストックホルムで「国連人間環境会議」
1973年 OECDによるPCB規制
1976年 イタリア・セベソで化学工場(枯葉剤)爆発。
1978年 アメリカのラブ・キャナルでダイオキシンを含む有害物質地下埋設
1984年 インド・ボパー・農薬工場から有毒ガスで2000人以上死亡
1987年 ブルントラント委員会による報告書「Our Common Future」
1992年 リオで「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」
1993年 国連、生物多様性条約発効
1997年 地球温暖化京都会議で京都議定書
1997年 日本で容器包装リサイクル法
1998年 日本でダイオキシン問題
1999年 オゾン層に関するモントリオール議定書で、フロン類規制
2001年 船底塗料用有機スズ化合物禁止。
2005年 京都議定書発効。アメリカ、オーストラリアは離脱したまま)
2007年 IPCCがノーベル平和賞
2007年 温暖化懐疑論が日本で話題に
2010年 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋で開催
2010年頃 使用済み電気電子機器問題
2011年 福島第一原子力発電所事故
2012年 大規模気候災害 各国で
2013年 水素自動車&電気自動車へ
2015年 SDGs、パリ協定
2018年 プラスチック問題


A君:これを項目別に議論するのが目的ではなくて、大きな流れとして、環境問題としてどのような要素が重大だと考えられたのか、という価値観の流れについてやや分析できれば嬉しい、といったことになるのでは。

B君:その通り。

A君:では、最終的にどんな表記法になるか分かりませんが、ちょっと分析をしてみますか。

特定の要素に関する環境問題が継続した期間。

1.石炭燃焼による重大環境汚染の時代
 19世紀から1952年頃
2.鉱山が産業公害は原因の時代
 1900年頃から1970年頃
3.農薬が環境破壊の主因である時代
 1949年頃から1964年頃
4.一般化学産業が産業公害の原因の時代
 1960年頃から1972年頃
5.農薬系の有害物質が主因の時代
 1976年頃から1984年頃
6.持続可能性の指摘
 1987年から現在まで
7.地球環境の国際的な対
 1992年から現在まで
8.フロン類の規制の効果発現
 1999年から2016年
 完全復活は、2060年頃?
9.海洋汚染の先駆け=防汚剤
 2001年有機スズ系禁止
10.温暖化対策発効 米国・オーストラリアは無視
 2005年から
11.日本での温暖化懐疑論 武田邦彦
 2007年から
12.生物多様性条約COP10名古屋
 2010年
13.使用済み電子機器問題(資源的見地)
 2010年から2013年
14.原子力が主力を外れる
 2011年から 福島第一事故
15.大規模気候災害が多発
 2012年から 
16.電気自動車&水素自動車
 2013年から
17.SDGsとパリ協定
 2015年から
18.プラスチック問題
 2018年から 過度の利便性と生態系

B君:エイヤとばかりまとめれば、環境問題は、人間の健康に対する悪影響でスタートした。しかし、大体、1985年頃には先進国では解決に近い状態

A君:その次に問題になったのが、人間活動が、地球上の人類の将来的持続を危機に陥れているという指摘。いわゆる持続可能性に関する指摘で、これが1987年頃から現時点

B君:持続可能性という言葉は今でも使われるけれど、1987年当時、まだ、化石燃料がそのうち枯渇するということが共通理解だった。

A君:持続可能性の基本は世代間調停。この言葉はこのところ使われることは無いですが。その最大のココロは、化石燃料を将来世代とどのように共有するか、ということだった。すなわち、石油がもっとも重要で、石油ショック=オイルクライシスが起きたのが、1973年だった。その延長線上に持続可能性という問題が議論されていた。

B君:その後、地球そのものの持続可能性が問題になって、様々なグローバルな問題に対する地球レベルでの対策が行われた。しかし、気候変動の怖さに対する認識は、少なくとも、20世紀の間では、それほど強くは無かった
 問題となった単語を年表的に書けば、こんな感じか。
 1999年 オゾン層
 1997年 京都議定書
 2010年 生物多様性条約
 2010年 エネルギー資源問題 シェールなど活用
 2012年 大規模気候災害
 2015年 大気中のCO2の増加抑制→パリ協定へ
 2015年 人間社会の在り方=SDGs
 2015年 気候変動が気候災害多発
 2015年 人間の在り方を変える=SDGs
 2016年 フロンを温室効果ガスとしての規制の枠組み決定(キガリ改正)
 2018年 プラスチック=過度の利便性が地球生態系に影響


C先生:かなり全体的なイメージが構築されたようには思うが、まだまだ複雑すぎるし、気候変動のように対策に長時間を要する問題と、同じく地球レベルの問題であったのに、やはり、大気中の寿命の問題で、予想よりもやや早く問題が解決してしまったオゾン層破壊問題もある。もっともオゾン層破壊物質ではないが、親類関係にあるフロン類は、温暖化ガスでもあって、しかも大気中の寿命が非常に長い。そんなこともあって、2016年にルワンダで行われたキガリ改正で、温室効果物質としてのフロン類の規制が始まったと言える。

A君:これからの未来に、もっと重大な環境問題が発生するかどうか、そのことはまだまだ予測不能ですが、歴史を見ると、段々に狭い範囲の公害問題から地球レベルの問題になり、そして、温暖化問題は、全地球レベルになった。そして、現時点では、その上で生存している人類を支えている生態系の破壊によって、人類の存在基盤が消失するという可能性に到達してしまった。

B君:これについて有名なものとして、ストックホルム・レジリエンスセンターの指摘がある。
https://www.stockholmresilience.org/
 温暖化が危機的であるのは、今や、共通理解なので当然だが、それ以外に、食糧生産のために大量に使用されている窒素肥料も、すでに地球の限界を超えた量が使用されていると指摘している。

A君:この場合の地球限界とは、食糧の増産。それが必要になるのは、人口増加がその主たる原因なので、これがまだ指摘されていない最後の環境問題になる可能性があって、食糧生産が追いつかなければ、大量の餓死者がでることになりますね。

B君:一時期アフリカで大問題であった食料不足の原因は、実は、配分の問題だったと言えるのではないか。現時点では、一応、片付いているのだけれど、それは、あの時点でも食糧の生産量はそれほど不足していなかったのに不適切な配分が起きた。しかし、今後、気候変動などが収穫量の減少につながる可能性もあって、やはり、今後の環境問題は、発生してからでは遅いので、事前に様々な可能性を考えて対策をしておくことが重要。

C先生:今世紀前半になにをやるか後半には何をしなければならないかこれを見極めるのが、人類にとって最大の義務になった。その義務のうち、大部分は、化石燃料からの離脱である。
 そして、義務のもう一つが、発生してしまったCOのCCSによる処理。あるいは、CCUによる利用といった新しい科学と化学。しかし、CCSには適地という概念があって、日本は苦しい状況だ。
 いずれにしても、別の言葉で言えば、イノベーションによって解決する以外に方法は無さそうなのだ。
 その全貌を知ることが、政策を考える上でも、あるいは、企業の新戦力を考える上でも、すなわち、文系の職務を含めて、新しい社会を作るためには、イノベーションというものを理解して、それを推進することができる人間になる以外の活躍の道はかなり狭くなるのではないかと考えられる。
 イノベーションは、理系だけの仕事ではないイノベーションを「技術革新」と訳すのは不適切。この言葉の創始者であるシュンペーターは、1912年のことだけれど、イノベーションを「新結合」と呼んだのだ。すなわち、これまで共同作業をしたことのない人と人の結合新しい技術と別の技術の結合社会システムと新技術の結合。などなど、これらが新結合だ。この新結合を実現するには、技術屋ばかりでは不可能。全く新しい発想をするような文系の人間が必要なのだ。
 今回のサーマースクールでは、2050年がどんな社会になるか。そのためには、どのような技術が必要なのか。それには、どのような新結合が有効だと思われるのか。そんな人間になるには、何を学ぶべきなのか。こんなことを熱く語る講師群を準備したいと思っている。
 理系・文系を問わず、未来に役に立つ人材になりたいと思う大学院学生、あるいは、大学院生の候補が集合することを切望している次第。理系の講義も、「文系に分かるように」を条件にして、講師を選択する予定なので。勿論、逆のケースも十分に配慮したい。