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  ブタインフルエンザ   04.29.2009〜
     



 ブタインフルエンザA (H1N1)ウイルス感染が世界的に広がりを示している。
 ひょっとすると、極めて重大な事態が起きつつあるのかもしれないので、記録を残すことにする。



 4月28日、WHOはフェーズ4を宣言した。フェーズ4とは、WHOが定義している6段階の4番目。

フェーズ1:ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、ヒトに感染する可能性を持つウイルスが動物から検出される。

フェーズ2:ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、動物からヒトへ感染するリスクの高いウイルスが動物から検出される。

フェーズ3:ヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、ヒトからヒトへの感染は基本的にない。

フェーズ4:ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、感染集団は小さく限られている。

フェーズ5:ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認され、大きな集団発生が見られる。パンデミック発生のリスクが高まる。

フェーズ6:パンデミックが発生し、世界の一般社会で急速に感染が拡大している。

そして、フェーズ4が宣言されることで、ブタインフルエンザではなくて、新型インフルエンザと呼ばれることになった。



WHOのDisease Outbreak News

28 April 2009--The situation continues to evolve rapidly. As of 19:15 GMT, 28 April 2009, seven countries have officially reported cases of swine influenza A/H1N1 infection. The United States Government has reported 64 laboratory confirmed human cases, with no deaths. Mexico has reported 26 confirmed human cases of infection including seven deaths.

 米国ではCDCが4月28日11AM:ET時点で64名の発祥を確認しているが、
http://www.cdc.gov/swineflu/
WHOによるメキシコのデータは、26名の発症と7名の死者としており、100名以上が死亡したという新聞などの報道とは大きく異なる。

 4月27日付けのロイターによれば、メキシコのコルドバ保健相は、メキシコ国内で豚インフルエンザによる死者は103名。豚インフルエンザと疑われているのは1614人に上り、そのうち400人が入院していると明らかにしている。



 今回問題となっているインフルエンザウイルスはA型である。なぜならば、B型、C型のウイルスはパンデミックを起こさないと考えられているからである。その理由は、B型、C型は変異が遅く、特にC型では一度感染すれば、一生その免疫を保持できるという。

 はしかのような病気でも、一生に一度の感染しかしないが、これもはしかという病気を引き起こす麻疹ウイルスの変異が遅いからだと考えられる。

 それに対して、A型ウイルスは、変異速度が非常に速いのが特徴である。ウイルスの表面にあるHA:ヘマグルチニン(HA:赤血球凝集素:haemagglutinin)とノイラミニダーゼ(NA:neuraminidase)という糖蛋白が変異をすることが多く、インフルエンザウイルスの種類が多い要因になっている。

 HAにはこれまで16種類が知られ、NAには9種類が知られている。そのため、H1N1からH16N9までの組み合わせが存在しうるが、これらを亜型と呼ぶ。

 新型インフルエンザとしては、これまで鳥インフルエンザが注目を集めてきた。それは、亜型がH5N1というもので、これまで流行したインフルエンザとは異なる全く新しい型だったからである。ちなみに、2009年現在でヒトのインフルエンザとして知られている亜型は、H1N1(Aソ連型)、H3N2(A香港型)、H1N2、H2N2である。

 今回の豚インフルエンザの亜型はH1N1なので、これはある意味でヒトにとってはなじみのある型である。したがって、豚インフルエンザは、あまり危険視されていなかった。だからといって安心できないのは、同じH1N1であっても、毎年流行するインフルエンザは少しずつ違うのである。

 現時点で謎だとされているメキシコでの死者の多さであるが、これまでメキシコで流行したインフルエンザがどのような亜型であったのか、という歴史を解明すればわかることなのかもしれない。あるいは、全く別の原因があるのかもしれない。



 日本でこのH1N1豚インフルエンザがどのぐらい流行するのか。その一つの目安になりそうなことが、H1N1に対してどのぐらいの抗体をもっているかである。

 そのようなデータは、国立感染症研究所に蓄積されている。
http://idsc.nih.go.jp/yosoku/Flu/2008Flu/Flu08_3.html

 このページの図3によれば、H1N1に関しては、5歳から29歳まではかなり高い抗体をもっているようであるが、30歳以上になるとあまり抗体を持たないようだ。

 となると、日本にこの豚インフルエンザウイルスが入ってきたとき、もしもH1N1の抗体が有効であるとするならば、むしろ、働き盛りから高齢者にいたる年齢層がまんべんなく罹患する可能性がある。

 メキシコの抗体保有率などのデータは把握できなかった。どうも若年層に死者が多いという情報があるので、最近、メキシコではAソ連型のインフルエンザが流行していなかったのかもしれない。



 WHOが現時点でどのような推奨をおこなっているか、記録をしておく。


旅行者に対して

2009年4月28日 WHO(原文)

 いくつかの国においてブタインフルエンザの確定症例が発生している。ブタインフルエンザに関する一般的情報はWHOのウェブサイトに掲載されている。

 WHOは国際渡航を制限することを推奨していない。従来通り、体調の悪い人は国際渡航を延期し、国際渡航ののちに症状を呈している人は医療機関を受診することが賢明であると考えられる。

 インフルエンザウイルスに感染するリスクに関しては、旅行者は可能な限り人で混雑した閉鎖空間や急性呼吸器感染症に罹患している人との濃厚な接触を避けるよう勧告される。体調の悪い人やその周辺環境への直接接触の後に行う手洗いは、病気のリスクを低下させるかもしれない。体調の悪い人は、咳エチケット(距離を保つ、咳やくしゃみが出る時にティッシュペーパーや布を口や鼻にあてる、手を洗う)を実行することが勧められる。

ブタインフルエンザに対する防御に関連する特定の方法に関してであるが、抗ウイルス薬の使用に関する勧告を作成するには現在のところ情報が不十分である。ブタインフルエンザウイルス感染の治療における抗ウイルス薬の使用に際して、医師は臨床的および疫学的評価と、患者の治療の害と益に基づいて、判断を下さなければならない。


ブタインフルエンザ全般について

ブタインフルエンザ−更新4
      2009年4月28日 WHO(原文)

 状況は急速に進展し続けている。2009年4月28日19時15分世界標準時(訳注:日本時間 4月29日午前4時15分)現在、7カ国がブタインフルエンザA/H1N1感染の症例を公式に報告している。アメリカ合衆国政府は64例の検査確定されたヒト症例を報告しており、死亡者はいない。メキシコ政府は、7例の死亡例を含む26例の確定ヒト症例を報告している。

 以下の国が検査確定された症例を報告しているが、死亡者はいない:カナダ(6例)、ニュージーランド(3例)、英国(2例)、イスラエル(2例)、スペイン(2例)。

 状況に関するさらなる情報はWHOのウェブサイトで定期的に閲覧可能になる。

 WHOは通常の旅行の制限や国境の閉鎖をなんら勧告していない。体調の悪い人は国際的な渡航を延期し、国際的な渡航ののちに症状を呈している人は医療機関を受診することを、国の当局の指針に沿って行うことが賢明であろう。

 十分に調理された豚肉や豚の加工製品を消費することで、このウイルスに感染するリスクもない。個々の人々は、定期的に石鹸と水でしっかり手を洗うことが勧められ、インフルエンザ様疾患の症状を呈した際には医療機関を受診するべきである。



 こんな世界レベルで情報が錯綜しているときに、頼りになるインターネット情報は、

(1)日本の厚労省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/
 しかし、本文がPDFになっているので見るのが面倒。しかも、あまりにも文書が長い。新型インフルエンザとは何かに関して、教養を付けるには良いが。。。

(2)日本の外務省の渡航情報
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info.asp?num=2009C135
分かりやすいが、いきなり注意書きから始まるのは日本的。

(3)国立感染症研究所感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html
他の機関からの引用などが多いが、的確。WHOの推奨などを読むことができる。

(4)WHO 世界保健機関 日本語版
http://www.who.or.jp/indexj.html

(5)WHO 英語版
http://www.who.int/en/
必要な情報が比較的簡単に得られる。

(6)CDC 米国疾病対策センター
http://www.cdc.gov/swineflu/swineflu_you.htm
 一目で必要な情報が得られる。



 ちなみに、4月からの職場である(独)製品評価技術基盤機構では、国立感染研究所から不活化されたウイルス検体が送られてきたとき、迅速に遺伝子の解析を行うことを可能にする人的体制を整えて、連休中も待機している。

       以上 04.29.2009記述