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    台風の被害はさらに増大傾向  09.15.2019
       台風15号の勢力を解析する



 9月15日の正午のニュースによれば、依然として13万戸が停電しており、完全に解消するのに、9月27日ごろまでかかるとのこと。現代社会にとって、電力はほぼ生命線に等しい。特に、夏季と冬季では、冷暖房が使えないことは、命に係わるとんでもない事態である。それに加えて、断水という条件が加われば、江戸時代に戻ったようなものではないか、と思われる。場合よっては、それよりひどい状況かもしれない。
 いかに台風の進路が特殊だからといって、ここまでの被害が出たということは、東京電力の現時点での状況を示しているようにも思える。要するに、「送電線を整備するというマインドが不足していた」という要因があったのではないだろうか。
 今回は、台風の被害が今後どうなるかという予測を含めて、過去の台風などに関する気象情報を解析してみたい。


1.概要
 9月8日、気圧955hPa・最大風速45m/sと「非常に強い」勢力。東京湾を北東に進み、9日5時前には、千葉市付近に上陸。上陸時にも「非常に強い」勢力を保ったままで、上陸時でも中心気圧960hPa、最大風速40m/sであった。

2.今回の台風の特性
 非常にコンパクトな台風であった。しかし、9月9日の風速だが、観測史上1位だった地点が、千葉県にある15の観測地点のうち、なんと11ヶ所だった。
 観測された風速が最大であった地点は、千葉県中央区では35.9mで、この地点での観測史上1位であった。
 千葉県全体での過去最大風速だったのは、気象庁の記録によれば、銚子市における48mで、これは1948年とのこと。
 今回の35.9mをどう見るかであるが、2018年に関空・大阪などを襲った台風21号が最低気圧が9月1日に915hPa、最大風速が同日に55mであったことと比較すると、それほど強いとは言えないのかもしれない。

3.一般的な台風の特性から考える

3.1 海面温度
 海面温度が27℃以上であると、海面からの水蒸気の供給が継続するので、強さを増すことが知られている。
 そこで、9月9日から9月5日までの海水温度を以下に示す。27と書かれたやや太めの線に注目していただきたい。

 9月9日 太平洋側では、27℃のラインが房総半島の先端から北北東方向にある。しかし、日本海側では、
27℃のラインは、日本列島をかなり離れた日本海にある。 東京湾は、27℃以上の海水温であった。 


 9月8日 太平洋側の27℃ラインはあまり変わらないが、日本海側の27℃ラインは、いささか南にあった。


 9月7日 27℃ラインは、日本海側では、かなり陸地に近いところにある。
 

 9月6日 27℃ラインは、日本海側では、陸地に接触している部分もある。



 9月5日、太平洋側でも、大島と三浦半島の先端との中間に27℃ラインがある。
  

 もちろん、上陸すれば、水蒸気の供給量もほぼゼロとなり、台風は弱化を始める。
 しかし、今回の15号は、東京湾を進んだ珍しい台風であった。
 その時の海水面の温度をチェックすると、気象庁のデータによれば、9月9日の図の通りである。すなわち、海面温度のデータは、27℃ラインが明示されている。太平洋側では、房総半島の南端にちかいところが27℃であったが、東京湾は28〜29℃程度であったと思われる。房総半島よりも西の地域では、太平洋側はほぼ28℃の海面温度で、27℃のラインは、日本海のかなり陸から離れたところにあった。
 この図から推定されることは、台風は東京湾に入ってからも、強度を増したのではないか、と考えられる。
 比較のために、9月5日の海面温度を見ると、27℃のラインが三浦半島と大島の間にあって、千葉市付近の海面温度は26℃であったように見える。
 さらに言えば、日本海側の27℃ラインは、ほぼ海岸線にへばりついた状況であった。 もし、この状態で台風が今回と同様に東京湾の真ん中を通過して千葉県に到達した仮定すれば、今回ほどの被害は出なかったものと推定される。

 海面温度だが、9月5日から上陸前日9月9日までの推定される温度変化を以下のようにまとめてみた。

 9月5日:房総半島と伊豆半島を結ぶ線が海面温度27度線
 9月6日:東京湾の海面温度が27度以上に上昇。
 9月7日:東京湾の高温化がさらに進行
 9月8日:東京湾は余り大きな変化ではないが、日本海の27度のラインが北上した。
 9月9日:そして、日本海の27度ラインがさらに北上。

3.2 台風の経路
 東京にとっては、今回の経路は、比較的ラッキーなケースだった。なぜなら、地球の自転の影響で、台風は、北半球では左巻き(反時計回り)。ここでは、その理由の説明しないので、「コリオリの力が作用する」で検索してください。
 左巻きだということから、台風が進行する方向の右側の風が左側の風よりも強くなる。それは、風は、台風の進行速度の影響を受けるから。
 今回の台風は、その点、東京の味方をしてくれたので、東京都民はラッキーだった。逆に、東京の西を通過したらどうなったのか。風の左巻きの影響で強い風が吹いたという可能性はあり得るけれど、過去の台風の進路をみると、東京に強風をもたらす台風は、多くの場合、伊豆半島に上陸し、そして、その先の箱根山地にぶつかる。さらに経路によっては、丹沢山地の上を通る可能性もある。この山地との衝突によって、台風はかなり弱くなる。言い換えれば、東京都、特に、その西部は、台風に対する天然防止壁をもっているような場所である。
 千葉県にとっては、今回の経路が最悪で、むしろ、房総半島の先端に上陸する経路であれば、今回ほどの被害は出なかった可能性が高い。

3.3 風速と被害
 今回の台風で、千葉県にどのぐらいの風が吹いたのか。
         時間       風速
 木更津 9月9日午前3時 28.5m
 館山   9月9日午前3時 32.4m 
 勝浦   9月9日午前3時 25.7m 
 牛久   9月9日午前5時 13.5m
 茂原   9月9日午前4時 15.8m
 銚子   9月9日午前7時 24.3m
 千葉   9月9日午前4時 29.2m
 香取   9月9日午前6時 21.1m

 台風15号の影響で鉄塔2基(45mと57m)が倒壊したのは、君津市。東京電力パワーグリッド広報室によれば、10分平均風速が最大で40mの強風まで耐えるように設計されていたとのこと。

 上に示した風速のデータは、いわゆる瞬間最大風速ではない。むしろ、10分平均風速に近いデータではないか、と思われる。残念ながら、君津市の風速のデータは気象庁のWebサイトからは得られなかった。しかし、極常識的に考えると、館山や木更津と比較して、君津だけが風速が飛びぬけて大であったと推測することは難しいように思える。

 君津市では、送電線の鉄塔2本が倒壊している。そのために、停電からの普及に時間を要している。

 倒壊した写真は、このページからご覧いただきたい。
https://www.nikkei.com/news/image-article/?R_FLG=0&ad=DSXMZO4957514009092019000001&ng=DGXMZO49573070Z00C19A9EA2000&z=20190909
 鉄塔倒壊に関してWebサイトを探してみると、こんなページが見つかる。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190911/dom1909110010-n1.html
 このページで、ウェザーマップの気象予報士・饒村曜(にょうむら・よう)氏は、「今回の台風も10分間平均風速は最大で約35メートルにとどまっている」となると、なんらかの特殊な条件によって、「極めて局所的な強風が吹いたために鉄塔が倒壊したのではないか」、ということになる。しかし、その他の可能性としては、鉄塔の強度が劣化していたという可能性を考えることも必要のようにも思える。

 それと同時に、鉄塔付近の地形などをモデル化して、極めて局所的な吹くような特殊な条件があるかどうか、といった検討を行う必要があるものと思われる。

 さらに、もしかして、このようなことが無かっただろうと信じたいが。

 9月9日の風速は、観測史上1位だった地点が、千葉県の15観測地点のうち、11ヶ所もあった。風速が最大だった地点は、千葉市中央区で35.9mであったが、これもこの地点での観測史上第1位であった。

 すなわち、この過去のデータから判断しても、今回の台風の経路は極めて特殊なものだったといえる。となると、送電線の設計も、過去最大の風速が35mを超すことは、まずないと判断して、設計強度をはじめから手加減していたという可能性がないことも確認しなければならないものと思われる。なんといっても、過去の風速データを見ると、最大風速は、1948年に銚子市で観測された48mだった。

 銚子市のようなところでは、太平洋から台風などが来て、そのための強風はありうるけれど、それ以外の千葉県で、それほどの強風はまず吹くことはない、という判断をすることは、ある意味であり得る。当然、対風速強度を高めれば、それだけ鉄塔のコストは高くなるのが当然だし、そもそも、無用な強度を与えることは、無駄でしかないのだから。

4.地球温暖化の影響
 今回のような自然災害の増加は、地球温暖化が起きると仮定すれば、もっとも簡単に予測できる事態である。
 しかも、地球温暖化は確実に起きることが見えている。いくら人類が努力したとしても、やはり、化石燃料ほど便利なものはないので、そうすんなりと自然エネルギーに転換ができるとも思えない。
 しかも、日本という国の自然エネルギーのポテンシャルの無さは、世界全体でも最悪の国だと言える。ということは、自然エネルギーの価格は、この国の場合、そう簡単に安価にはならない。個人宅で太陽電池と電池を設置しようとすれば、数100万円を準備しなければならない。
 となると、洋上風力発電を計画的に設置しなければならない。
 現時点での政治的状況は、国会議員、地方議員はいずれも反原発のスタンスが得票率アップのために必須だと考えているので、かなり難しいのが事実ではあるが、2070年ぐらいから、例えば、CO発生のない手法で製鉄をやろうとすれば、コークスでの還元はCOを発生してしまうので、水素還元法を実用化しなければならない。ところが、水素還元は、反応として吸熱反応であるために、外部から高温空気を導入することが不可欠である。となると、もっとも合理的な対応は、今世紀であれば、原子炉の一種である高温ガス炉を用いること、それから先には、なんらかの核融合装置を作ること以外に方法は無さそうである。
 鉄を新規には作らないで、すべてリサイクルでやることも、日本のように、すでにかなりの量の鉄が存在していて、今後人口が減少する社会では不可能ではない。その場合には、電炉を利用すれば十分だからである。しかし、まだアフリカなど多くの途上国では、一人当たりの鉄の総量が足らない。しかも、世界人口は、特に、アフリカにおける増大の可能性が非常に大きい。しかし、アフリカに高温ガス炉をいきなり設置するのも難しい。
 いずれにしても、今後、低炭素時代を構築することは必須であり、そのためには、電力をどのように供給するか、それを12分に考慮することが不可欠であるが、日本全体では、まだまだその認識不足の状況が続いている。

5.結論
 今回の台風の経路が非常に特殊であったことは事実。こんなも狭い東京湾を通らなくても良いだろうに。まさに、最悪の経路だったと言えるのではないだろうか。
 そのため、このような停電騒ぎが起きたということが、恐らく真実に近いだろうとは思う。しかし、現時点は、電力の重要性が過去にもまして上昇している。停電になったら、それこそ手も足も出ないという家が多いのだと思う。
 我が家は、具体的には述べないけれど、一応、停電対策、給水対策をいくつかの方法でやっている。しかし、現状だと、とても十分だとは思えない程度である。停電になってもエアコンを使うことまでは想定していないからである。冷蔵庫が辛うじて動くかどうかぐらいである。
 今後、地球温暖化が加速すれば、というか、加速するに決まっているので、台風などの被害が起きる確率は格段に増大する。せめて、停電時でもスマホの充電ぐらいできるように、小型の太陽電池ぐらい買い込むべきだろうし、できれば、ハイブリッド車の一部(例えばプリウス)のように、1500Wの発電機になるような対応をすべきであろう。電気自動車よりも、非常用電源としては、給電可能量の面で、ハイブリッド車の方が優れているように思える。常に満タンにしておくなど、うまく活用すれば、1週間ぐらいは1500Wの電力を供給し続けることが可能なのでは。