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 25%削減に向けた技術と社会   10.12.2009
      その2 比較的早期に導入可能な技術
 



 前回、既存技術と社会システムという副題で、主として、国立環境研が麻生首相の中期目標検討会に提出した技術シナリオの検討を行った。

 論点は、既存のこれらの技術が社会に実装されるためには、様々な考慮すべき要素がある。特に、現状の行政の仕組みとの整合性をどのように考えるかなどの問題があるという指摘を行った。

 今回は、まず国立環境研のシナリオをもとに、産業技術を除いて、比較的早期に社会実装が可能だと思われる技術を追加リストアップし、そのいくつかについて、技術的な検討と、望ましい社会システムとしてどのようなものがあるかを検討したい。



C先生:ということで、二回目だ。今回は、2010年、すなわち、来年から社会実装に向けて努力すべきだと考えられる技術をリストアップして、個別の問題があるかどうかを検討したい。

A君:了解。まずは、2010年から導入の検討が可能だと思われる技術リストを次に示します。前回検討した、国立環境研のリストと重なるものもありますが、主として、追加すべきだと考えているリストです。産業技術は入っていません。
 今回すべてを説明するのは無理ですが、こんなものではいかが。

自然エネルギーなど
バイオエタノール直接混合ガソリン導入
■バイオディーゼル燃料導入
ごみ・下水汚泥利用の地域暖房
地熱発電
■洋上風力(漁業権)
■潮力発電(漁業権)
■小水力(水利権)
ナノ水力+風力ポンプ
■オフラインの自然エネルギー

エネルギー
SOFC燃料電池
スマートグリッドは不要でマイクログリッドを
■低コスト太陽電池(CdTe)
■蓄熱剤による熱の売買
■NAS電池
■廃プラスチック発電の効率向上
■高効率コンバインドサイクル

建築物
■地中熱利用エアコン
■外光導入型照明システム
■新コタツ文明型=ビューティートワレ
■自然通風型ビルディング
■グリーンカーテン式機能
■ソーラー暖房ハウス
■高度断熱リフォーム(既存住宅用)
■Home Energy Management System

交通
■電気バス・電気宅配トラック
■電気自動車用バッテリーシェアリング
■電気自動車カーシェアリング
■プリウスの太陽電池充電
■プラグイン・ハイブリッド
■プラグイン・ハイブリッド充電用太陽電池

B君:まずは、自然エネルギーから。その最初に出てくるのが、バイオエタノール直接混合ガソリンか。

A君:バイオエタノールですが、LCA的な検討を行うと、現状だと、サトウキビ系のもの以外はまず見合わない。従って、もっとも手っ取り早い方法が、ブラジルからエタノールを輸入すること。

B君:しかし、日本の石油連盟などは反対だったはず。そして、ETBEというエーテルに転換して混合する方式を推奨。その理由は、エタノールを混ぜることになったら、誰でも混合ができてしまう。水分などが混入する可能性が高くなる。したがって、エンジンに損傷を与える可能性が高くなる。

C先生:歴史的には、ガイアックスに代表される高濃度のアルコール含有ガソリンがあった。

A君:混ぜられていたのはエタノールではないですが、アルコールを高濃度で混合したガソリンは、色々と社会的な問題を引き起こしました。

B君:環境省もこの燃料を使ったときの排気ガスの成分についてテストをしている。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=2478
 それによれば、ガイアックスは、炭化水素分を49.3%、イソブタノールを21.2%、イソプロパノールを12.0%、MTBEを17.4%含んでいたようだ。

C先生:MTBEはオクタン価向上剤だが、米国で大問題を起こした。米国のガソリンスタンドは保守が悪いというところも多いようで、地下のガソリンタンクからガソリンが漏れているという恐ろしい話もある。MTBEが地中に漏れ出すと、親水性があるために、地下水と混ざって、飲料用に使われている地下水が臭いがひどくなって飲めなくなった。カリフォルニア州のサンタモニカなどで、実際にそのようなトラブルが発生した。

B君:ホルムアルデヒドの発生量が、ガイアックスの方が多いという結果だったが、他の項目については、それほどの差がない、という報告だった。

A君:そんなテストを環境省がやったのも、このガイアックスが超低公害新自動車燃料であるという主張があって、それを丸ごと信じた国会質問なども行われている。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a149005.htm

C先生:確かに、硫黄分は圧倒的に少ない。しかし、MTBEがこれほど入っていて、超低公害だという主張はもともと無理だったのではないか。

A君:いずれにしても、日本では、アルコール燃料ということだけでも業界には抵抗感が相当あるということですか。

B君:ガイアックスが無税だったのが大きな問題だった。自治体が揮発油税を課税しようとして、違法の判決を受けたりしていた。

C先生:現時点では、エタノール含有量は最大でも3%と法律で決まっているようだ。これを変えなければならない。日本の場合だと、現時点で販売されている車は、10%エタノール含有ガソリン、いわゆるE10までの対応はできているようだ。

A君:そろそろ検討を開始して、E10ガソリンを導入するところまで決断できれば、それなりのCO2削減効果は有ります。

B君:どのような法制度にするか。どうやって違法ガソリンを排除するか。その工夫次第ということだろうか。

C先生:2020年までにはなんとかE10をスムースに導入したいところだ。バイオディーゼルも非常に重要。なぜならば、トラックの動力が電気になるとはとても思えないからだ。ジャトロファ由来の油になるか。

A君:パーム油は個人的には嫌な気がします。パームプランテーションがますます増えると、結果的に、温暖化を加速するように思えます。

B君:土壌中に蓄積されている有機物が分解されて、二酸化炭素が大気中に放出される。

C先生:しかし、パームのプランテーションは増えるだろう。原油価格が上がれば、商業的に成立してしまうからだ。まあ、この議論はここまでにしよう。

A君:次が、清掃工場・下水処理場などからの排熱を利用した地域暖房

C先生:これは、スウェーデンなどが積極的に取り組んでいる。

B君:調べてみたら、北海道ではすでに実現している。札幌の真駒内地区の駒岡清掃工場のごみ焼却炉排熱を有効利用しているとの記述がある。
http://www.chidan.co.jp/f-m-3.html

A君:東京都には19ヶ所の清掃工場があるから、そこの排熱の利用を考えることは意味があることだと思って、調べてみたら、すでに有りました。
 「東京都23区内清掃工場排熱の利用可能性に関する研究」中沢 潔他。
 URLが出せないので、題名で記述しました。

B君:他にもある。
「低温廃熱資源の総合的有効利用に関する研究」http://www.nira.or.jp/past/pubj/output/dat/2051.html

C先生:東京都でもやっているとも言えるようだ。環境白書(昭和63年版)によれば、
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun.php3?kid=201&serial=7071&bflg=1
 「東京都の練馬区、板橋区にまたがる光が丘パークタウンでは、光が丘清掃工場(焼却能力150t/日×2)内の蒸気復水排熱(45℃程度)と超高圧地中送電線の冷却排熱(20℃程度)を熱源として、ヒートポンプにより暖房・給湯用の60℃温水及び冷房の7℃の冷水を得て、住宅に対しては暖房・給湯を、病院、商業施設等に対しては冷暖房・給湯を行っている」。

A君:ヒートポンプで温度を上げているということは当時としてはかなり先進的だった。

B君:最近はどうなっているのだろうか。

A君:社団法人日本熱供給事業協会というものがあって、現在の状況をまとめています。http://www.jdhc.or.jp/
ただし清掃工場の排熱ばかりではないです。東京副都心のように、ガスタービン・コージェネによる電力・熱同時供給もありますね。

B君:最近の大規模開発では、大体この方向のようだ。汐留北地区が比較的新しいところかもしれない。

C先生:コージェネによる電・熱同時供給が優れたシステムだということになる。

A君:しかし、日本熱供給事業協会にあるものがすべてかどうか。少々数が少なすぎるように思いますね。

B君:やはりかなり集中した都市でないと、成立しないのだろう。東北など、岩手、福島、山形の各県に一つ。青森などには無い。

C先生:そろそろ次に行きたい。地熱発電だが、これは過去何回も取り上げている。レスター・ブラウン氏も日本は地熱をもっとやれと言っているが、なかなか進まない。

A君:国立公園内にあることや、温泉街の反対などがあって、これこそ社会的な問題を解決しなければ実現不能というのが結論。

B君:現在、53万kWという認可出力しかない。なんとか増やしたいものだ。

A君:ポテンシャルがある地域に送電線を引くコストなどが問題という話もありますが、それこそ、エネルギー自給率を高めることは、エネルギーセキュリティー上重要問題だという考え方で取り組むべきでしょうね。

B君:やはり、化石燃料に対する環境税がかなり高額に掛かる状況にならないと無理だろうか。

A君:それ以後のいくつかの項目は、すでに議論が済んでいる。

C先生:最後のナノ水力や風力ポンプというのは、若干趣味的だが、先日、白川郷に出かけたときに周囲の水が豊富だったことに感動して、傾斜地の農業用水をちょっとせき止めて、数100W級の発電ぐらいはできて、街灯ぐらいには使えるのでは、と考えたからだ。

A君:水力の発電量は水のポテンシャルエネルギー変化×効率で算出可能ですね。

B君:1分間に1000L、高低差1mで計算してみるか。

A君:効率を70%だとして、100W強。

B君:街灯ぐらいには使えそう。しかし、経済的には成立しそうもない。

C先生:もう一つは、米国の西部にある風力による井戸ポンプ。

A君:それもわざわざ電気を使うまでもないという程度なのでは。

B君:風力のように揺らぐエネルギーでも、水のくみ上げに使えば、揺らぎが全く問題にならない。なにか、このような発想は無いものだろうか。

C先生:揺らいでいる電力を蓄電池に貯めるのであれば、なんとかなりそうだ。オフラインの自然エネルギー利用というのはありそうだ。

A君:蓄電池として家庭にあるものは、自動車以外には、電動自転車ぐらいではないですか。

B君:太陽電池で電動自転車を充電する。これは良いかも知れない。

C先生:2kW以上の電池を搭載して、パワーコンディショナーで電力網に接続するというやり方だと、面積も必要だ。もちろん価格も高い。となると、普及にも限りがある。

A君:普通の太陽電池1枚だと150〜200Wぐらいですから、20枚で3〜4kW。こうなると面積も馬鹿にならない。そこで、太陽電池1枚でも設置して、なんとか有効活用してもらう。それには、単独で使える用途を考えなければならない。

B君:三洋の電池だと最大動作電圧が40V以上はある。

A君:京セラのサムライだと、46Wという出力のものあるのですが、最大出力が5.9Vしかない。62Wのものだと7.9V。

B君:京セラのエコノルーツは、23.6Vだ。三菱電機の標準モジュールは24.6V。いろいろなんだな。

A君:いずれにしても、1枚の電池モジュールを各家庭に設置したとして、その電力を何に使うか。

B君:やはり蓄電池が鍵だろう。

C先生:家庭の消費電力を限界まで下げようとすると、結構問題があることが分かる。24時間常時ONの機器がまだあることだ。

A君:冷蔵庫はその代表ですが、それ以外にも、FAXがあり、無線ルータがありますね。

C先生:最近は、24時間換気を行っている家が多い。室内環境を考えると、どんなに外気が汚いところでも、室内環境はそれよりも悪いので、換気は重要。

B君:しかし、そのためには、最大50W程度の消費電力がある。常時50Wのファンが回っている状態だと、年間の消費電力は、8畳間用のエアコンの半年分の消費電力に相当する。

A君:なるほど。その換気をバッテリー駆動でやるのはどうか、という話ですか。ただし、そんな機器がある訳ではない。

B君:だから、そんなオプションを作ったらどうかという話。100W程度の太陽電池1枚。それで昼間は駆動すると同時に、余剰電力をバッテリーにため込む。車用の鉛蓄電池がもっともコストパフォーマンスが高いだろう。万一、雨の日が続いて電池が空になったら、100Vラインから充電するようになっていれば完璧。

C先生:電気代にすると、年間に1万円も節約にならない程度のものだから、総設備代として、5万円程度で収めなければならない。太陽電池も中古品、バッテリーも再生品などといった組み合わせにする必要があるのかもしれない。

A君:そんな設備であれば、風力を組み合わせるのも面白いかもしれない。やはりオフライン以外は無理な機器だから。

B君:趣味としてはおもしろそう。

C先生:そろそろ次に行こう。これは、将来の大物になるのではないか、と予測しているものだ。それがSOFC(固体電解質)型燃料電池

A君:原理的には、これも何10年も前から分かっているもの。今、Ene−farmなどに使用されているPEFC(高分子電解質)型は、水素イオンが動く。そして、酸素と結合する。そのため、燃やせるものは水素だけ。

B君:そうか。酸素が動いて行けば、普通に燃やせる燃料なら何でも燃える。

A君:不完全燃焼を起こすと炭素が溜まるので、ネバネバした液体などは難しいですが、気体ならなんでも。

C先生:現時点で都市ガスで供給されている天然ガスの主成分はメタンだから、これをそのまま使うことができる。SOFC型燃料電池が完成すれば、ガスが主役になってくる。何と言っても熱効率80%が狙えるので。

A君:すべてが電気というわけではなくて、温水と電気との同時供給で80%というですが、発電効率が高いので、熱が無駄になりにくい。

B君:家庭内で自家発電が行えるということは、自然エネルギーなど揺らぎが大きい電源との組み合わせで、安定した電源を作ることができるということを意味する。

A君:自家発電ならなんでもそうできるというものではなくて、レスポンスが十分に速くないと、揺らぎには対応できない。Ene−farmなどの高分子型では無理でしょう。太陽電池の発電を見ていると揺らぎの変化は極めて速いですから。

B君:それがSOFC型なら対応可能。ということは、もしもこれが組み合わされれば、スマートグリッドのようなものは不必要ということか。

C先生:スマートグリッドということが余りにも注目を集めているが、その定義がはっきりしない。

A君:米国でスマートグリッドが注目を集めている理由は、電力自由化を推し進めた副作用として、電力供給網の保守に費用が回らなくなった。そのため、いまや電力供給網がガタガタの状態。そこに、オバマ大統領の方針で、大量の風力発電、太陽電池を導入することになったが、もしもこれを実施したら、ガタガタの電力供給網に止めを刺すことになりかねない。

B君:一方、米国の今後の産業は、Googleに代表されるインターネット上での巨大情報産業であることに間違いはない。iPodやiPhoneだって、個人をインターネットと強く結びつけるということで、同じような方向性だ。

A君:エアコンや電気自動車用の充電設備、さらには、消費電力計にIPアドレスを与えて、すべてをインターネット上に載せれば、なんでもできる。ある特定の家庭のエアコンが冷えすぎであれば、それを誰かが止めることすら可能になるし、電気自動車に充電した電力をちょっと逆方向に流して、エアコンが借りるということだって可能になる。

B君:それって、家庭への外部からの干渉だという理解にはならないのだろうか。

A君:家庭からアクセスの認証を与えることが条件でしょうね。それにしても、日本の電力網のように、停電時間が極めて短いようだと、受容しない人が多いでしょうが、米国のように、年間1〜2時間も停電するような状況だと、停電が回避できますからお願いしますというメッセージを受けて、それならしかたがない、と思う人々も多いかも知れない。

B君:日本の場合、逆に、電力の品質が良すぎて、電力のありがたみを感じない人ばかりを作ってしまった。スイッチを入れれば、いつでも好きなだけ電気が来ると思い込んでいる。

C先生:そもそも日本には米国流のスマートグリッドは不要なのだろう。日本の問題はむしろ逆で、太陽光発電が余りにも普及すると、5月に最大の出力になることはご存じの通りで、しかも、5月は気候が良いからエアコンが不要。そのため、昼間の電力が余るのが問題。

A君:これまでは深夜電力が余っていたので、安く販売していたが、今後は、昼間の電力が天気によっては余るので、それを安く売るようになる。

B君:となると、エコキュートだけは、スマートグリッドに載せることになるのだろうか。

A君:太陽電池がかなり大量に設置されている家庭を考える。勿論、SOFC型燃料電池も設置されていて、発電だけでなくお湯も沸かすことができる。これで5月のように天気が良くて太陽電池がフル稼働している。そのため昼間に電気が余るという状態では、当然、給湯もエコキュートにして、昼間にお湯を沸かすということが妥当ですよね。電気自動車以外のバッテリーで電力を貯めるのは、割には合わない。

C先生:太陽電池の場合、昼間に電力が余るといっても、夜間には発電できないのだから、それこそ水の電解による水素で、エネルギー貯蔵を行って、夜間には水素で発電という新システムを開発することが必要になるのではないだろうか。これもスマートグリッドとは違う話。

A君:これまでの深夜電力は安いということが前提となってエコキュートなどが普及した。しかし、25%削減に向かうどこかで、深夜電力料金は廃止になるだろう。

B君:いつごろ廃止するか、その見通しを語っておかないと、エコキュートが高価になる可能性があって、文句がでそうだ。

C先生:それには、まずは、国の基本方針が固まらないと。12月にデンマークで行われるCOP15だが、どうみてもそれまでに米国の意志が固まらない。健康保険制度などの問題が片付かないので、気候変動に集中できない状況だからだ。ポスト京都の枠組が、米国は不参加ということでまとまる訳もないので、COP15の継続版、しばしばCOP15−bisと呼ばれるものを来年の6月頃には開催しなければならなくなるだろう。ちなみに、bisとは2を意味する言葉だが。日本としての対応の詳細も、6月頃まで伸びるということを意味するのだろう。
 掲載されたリストの説明が半分もできなかったが、本日はここまで。