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    栃木市訪問とサマースクールのご報告  09.08.2019
       未来に必須と思える活動の考察

               



 8月31日には、古川柳蔵先生(東京都市大学)をリーダーに、バックキャスト総合研究所の関係者数名と栃木市を訪問、同市を今後どのように発展させるか、その鍵となるかもしれない小学生による90歳ヒアリングなどについて、色々と議論をすることができました。

 栃木市では、実際に小学生などを交えた90歳ヒアリングという試験的活動が始まっているようです。90歳の意見なり主張を、できれば、市民層によるヒアリング、特に、小学生から中学生によるヒアリングを実施することは、最終的に面白い結果につながるかもしれないと思われます。

 このところ、SNSの普及などによって、人と人とがダイレクトに話をするタイプ交流というよりも、スマホなどを経由した交流が主流になりかかっていますが、まさか90歳ヒアリングをスマホでできるはずもなくて、直接ヒアリングをするしかないのですが、そのとき、ヒアリング側の年齢層を、様々な組み合わせにすることによって、様々な面白い相互作用が生まれそうな気がします。

 そして、先週は、9月2日から7日まで、第2期EcoLeadサマースクールの第4回目を渋谷のForum 8で開催しておりました。

 講師・プログラムなどの詳細は、http://www.eco-lead.jp/ をご覧ください。

 講師の先生方は、3時間という長時間の持ち時間でしたが、いずれも予想通り、あるいは、それを超えた素晴らしい講義をして下さいました。大感謝です。

 一方、参加してくれた大学院生などは、定員20名に対して、たったの5名だけ。これまでは、大体定員に近い数が確保できていたのですが、今年は、大敗でした。なぜならば、環境関係の学会のスケジュールを避けて、夏休みの終わりにセットしたところ、この時期は、今年就職をする4年生だけでなく、ほぼすべてのマスターの学生にとっては、インターンに行く時期であるということを把握しておらず、結果的に、無視してしまったからです。

 就職のルールにしばりがなくなったことも影響が大きいのですが、インターンが当たり前のことになっております。社会の価値観がドンドンと功利主義化していることを反映している証拠の一つのように思います。

 すなわち、高校の教育の目的は良い大学に入学するため大学に通う目的は良い就職先を得るため、という思いが非常に強くなっているように感じます。これは採用側にとっては、確実にメリットがあるのは事実なのです。なぜなら、インターン期間として2週間程度連続で観察すれば、その学生が人間性をいくら隠したとしても、人事の部署の人にとっては、その学生の良いところも、悪いところも、底の底まで見えてしまうからです。

 大学に通うという行為は、決して、良い就職先を得るだけではないはずで、このような短絡的な考え方だけになると、日本という国の将来にとって大きな問題になりそうな感じがします。

 一方、サマースクールは、院生の参加が5名だけだったということによって、このぐらいの人数でなければ出ない良さが、自然に、しかも、十分に引き出されたような感じです。定員の20名のときとは比較にならないほど、密なコンタクトが実現できたような気がします。なぜなら、20名だとグループ議論になるのですが、5名だと個人的な検討結果を戦わせるという形になって、その効果は大きかったと思えるもので、失敗だったというよりも、新しい経験を積めたような気がしています。


Part1 「栃木市へ」

C先生:栃木市というところに実は始めて行った。同行したメンバーは合計6名だった。議論の相手は、栃木市役所の方々。担当はかなり若いように思える方で、古川先生と90歳ヒアリングを実際に行なっているようだった。序文に書いたように、若手の栃木市の職員が、小学生を連れて、90歳のお年寄りにヒアリンをするということが行われているようで、これは、容易には予測できないなんらかのプラスの効果を生み出すような気がする。

A君:同行した栃木市の若手職員がなかなか熱心な人達でしたね。

B君:同感。その効果として、若手職員の日常生活に大きな変化がでるようなことになれば、非常に面白いと思う。

C先生:また、チャンスがあれば、栃木市に行ってみようという気になったのは事実だ。栃木市の魅力などについて、紹介して欲しい。

A君:栃木市は、現在、蔵の街として売り出しをしています。もう少々、見ものがあれば、ということですか。

C先生:そうとも言える。栃木市が蔵の街とは言っても、現時点で蔵が残っているのは、巴波川(うずまがわ)の左岸の一部で、道路で言えば、栃木佐野線75号のすぐ南のところ。遊覧船の出発点がある付近のみの一区画数100mに限られている。
 他にも、こちらは行かなかったのだが、文化庁の指定による重要伝統的建築物群保存地域がある。名前は、栃木市嘉右衛門町。栃木県としては唯一の場所。このような保存地域は、現在、全国で118地区が登録されている。もっとも多い県が、石川県の8か所。さすがに、東京都・神奈川県には無い。また、熊本県にも無いかもしれない。
 さらに言えば、渡良瀬遊水地が存在するのも栃木市だし、そのごく近くに三県境と呼ばれる地点がある。これは、群馬県、埼玉県、栃木県の県境が1点に集まっているところで、日本には他にもいくつかの三県境はあるのだけれど、それらが山の中なので、ここだけが平地にある唯一の三県境となる。

A君:米国には四州境があるとか。

B君:それは、Four Corners。ユタ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、コロラド州がその一点を共有している。

A君:C先生は自分でドライブして行ったとか。

C先生:バレたか。古い写真を調べてみたら、こんな写真を撮影していた。






 以上3枚の写真は、米国のFour Cornaersでの写真。何もないところなのに、結構多数の観光客が集まっていました。2008年9月撮影。


A君:ここに比較すると、三県境は、Google Mapで見ると、ちょっと情けない状況ですね。(Google Mapで「三県境」と検索すると現況を写真でみることができる)。

B君:やはり、観光地らしく、最低でも3県の旗ぐらいは必要だよね。

C先生:元に戻って、栃木市は、1日歩いただけでは、カバーできないところがいくつかあるようなので、もう一度行くことにしたい。

A君:若干、マニア向きかもしれませんが、栃木県と言えば日光ということになるのですが、その途中で寄ってみるのも良いかもしれません。

B君:東京から東北自動車道に乗れば、栃木インターチェンジで降りれば良いので、まあ、108kmですから、時間的には知れてますから。


Part2
 「EcoLeadサマースクール」


C先生:今年のEcoLeadサマースクールは、実は重大な失敗があった。それが、時期の選定。2018年の10月9日に、経団連が「就活ルール」を廃止すると発表し、大学生の就職活動のルールが消滅し、完全に自由になった。以前だと何月何日に解禁といったやり方だった。これが、自由になったこと自体は悪いとは思わないのだけれど、実は、そのためにインターンというものの意味が、これまでとは完全に違ってしまったようで、今年度で卒業するという院生は、インターン優先で、今回の参加者5名ということになってしまった。そして、参加者は、大学院入試に合格した4年生、すでに就職先が決まっている院生、といったことになってしまったのだ。

A君:しかし、結果的には、5名という数でしたが、参加者個人の戦闘力が過去最強だったような感触。これまではグループワークだったので、個性が生かせなかったという側面はありますが。

B君:参加者を簡単にご説明。
 R君:中国からの留学生で博士1年。農業副産物の利活用に関するライフサイクル視点による環境影響評価を研究。
 Sさん:大学院入試に合格したばかり。水の最適な利用法などを研究する予定。
 K君:大学院入試に合格したばかり。プラスチック問題に取り組む予定。
 S君:修士2年で、バイオマスを専門としている。金融系に就職予定。
 Fさん:博士3年で、高分子合成を専門。企業に就職予定らしい。


A君:特性として、全員、自己がすでに確立されている感じだったので、やや驚いた。多分、自分の意志で、参加を決めたのではないか、と思われます。その意味で、非常に興味深かった。

C先生:インターン制の悪影響を受けたことも一つの要素だったのだけれど、やはり、最近の若者の意識が把握しきれなかったもので、今年の課題としては、個人を対象として、以下のようないくつかの意地悪な質問に回答して貰って、こちら側として学生の思いの実情を知りたいと思ったのだ。

質問1: FFFのような行動:スウェーデンに住むグレタ・トゥーンベリさん(高校生)が2018年8月に始めた”Friday For the Future”(=FFF)の活動が、ヨーロッパでは非常に活発なのに、日本で活発にならないのはなぜか。(9月20日に世界的にFFFのマーチが行われるけれど日本はどうなる? 要注目)。

質問2: 功利主義的か?:例えば、大学は、有利な就職のために存在し、高校は、有利な大学に入学するために存在し、そのために、文系・理系をかなり早期に分けてしまう。今後の世界(地球)を確実に理解するためには、文系・理系の両方の知識が不可欠なのに、それを変えようという動きはないがどう思うか。

質問3: 幸福度の向上:国連組織による「各国の幸福度調査」によれば、日本の幸福度は低下している。43位→46位→53位→51位→54位→58位(2019年)。日本は、特に、寛容さ(実は、寄付をするかどうか)と自由度が低い。どうすれば、国民全体の幸福度が高まるか?

質問4: 将来に向けて有用な人間とは:未来をしっかり読むという教育が行われていない。これを身につけないと、この国は破綻するように思える。

質問5: 情報集める方法(オリジナルが重要):スマホで自動的に得られる情報だけを信じていると、非常に偏った情報だけを読むことになる。これを広げるには、活字を読むという時間のかかるプロセスが最善だけれど、どう考えるか。

その他の質問:関連して、以下の項目について、自由にどうぞ。
◆インターン制をどう見るか。
◆推薦図書を上げて欲しい。
◆話を聞きたい講師候補の名前。




Rさんの見解 研究課題:農業副産物の利活用

第1課題:FFFのような行動

 温暖化よりも早く解決したい個人的な問題があるから無関心。 → 重要性を十分に理解していない。対策:SNSなどで情報を伝達する。ポイント制度。環境に優しい商品を買ったら貰える。

第2課題 功利的な国か

 中国も同様に功利的。9年の義務教育、高校2年に文理分け。
 徐々に文理両立人材を求める傾向も。教育資源不公平。進学の目的は知識を学ぶ。教育の目的は考え方。

第3番目 幸福度の向上には

 環境要素を入れること。自由度がひくい。自分で決めるできる時間を増やす。国民に満足させる。自己実現。

推薦図書「デンマーク流幸せ国のつくりかた」銭元著。

第4番目 将来に向けて有用な人間とは

 ◎キーポイントを読み出す能力が必要。
 ◎言語能力が必要=語彙力やコミュニケーション力。それに人脈が重要。

第5番目 情報集める方法

 オリジナルデータを集めること。どんな方法でも良いから。



Sさんの見解 研究課題:水が専門

第1課題 FFFのような活動
 若者に関心を持ってもらうには?という問いと理解。
 「自分たちの力で社会変えられない」というあきらめがあることが問題。さらに、今は、個人の興味・考え方が多様化している。
 推薦図書「さとり世代−盗んだバイクで」

第2課題 功利的な国
 インターン研修を受けるべきかについて=「既に普及している(顔を覚えてもらっている人いる」。。。やはりできるだけやるべきではないか?

第3課題 幸福度の向上
 方法は多様で、守られている感を与えるために、福祉への投資。

第4課題 将来に向けて有用な人間
 有用な人材であり続けるには、質問する能力 and 解釈する能力。
 ブキッチョってのは、その代わりに覚えたらすごいんですよ。

追加
推薦講師 NPOなどの人々



K君の見解 研究課題:プラスチック問題

第1課題 FFFのような活動
 日本でもフライデーマーチはあるが、イメージが悪い。若者は、現在の生活にある程度満足している。将来を考えない。その一方、これだから、未来にはきわめて不愉快な事象が起きる、ことも事実。これを広める必要がある。

第2課題 功利的な国
 インターシップには利点と欠点がある。

第3課題 幸福度の向上
 幸福の要素として、国の安全度が入っていない。これは日本以外の国に有利なのでは。

第4課題 課題将来に向けて有用な人間
 人口減少のメリットを感じるためには、環境倫理学 都市の環境倫理 世代間倫理 未来の環境倫理学 などを学習することが必要。

第5課題 情報の集め方
 人脈を増やしたい。予防原則、順応的管理の発想



S君の見解 研究課題:バイオマスが専門

第1課題 FFFのような活動について から 第4課題全体についてのコメント

 最近、日本の若者は、現時点は高原状態にあると理解していて、現状に満足している。
 「宿命」だから頑張っても上に行けない。「宿命をいきる若者たち」。
 高原社会、「よりよい未来」の替わりに、過去を見ている。
 伝統、民族、生得的属性などが若者のよりどころになっており、閉じた人間関係に満足。成長が目的ではない。最初から最強が良い。閉じた人間関係に満足(地元感)が得られている。自己責任、努力主義の規範をも内面化、人生への期待値の低さ。
 成熟社会に対応した「生き方」、「考え方」が不在。
 原因を推論する。物事の因果関係。(温暖化現象に関する理解は)年齢層によるシンプトンのパラドックスである。

その他の問題
 △人工知能 vs、教科書が読めない子供たち。
 △「宿命」を生きる若者たちについては、
  Official髭男ダンディズムによる歌「宿命」を聴くこと



Fさんの見解 研究課題:高分子化学が専門

第1課題 FFFのような活動

 環境問題は、メリット・デメリットの問題ではない。関心を持つ自分事として捉える。 心にひっっかかる物語、映画、アニメ、などでの広報が重要か。さらに、小さなころから身近にすること。

第2課題 インターン研修に関連して
 どうも化学メーカーは環境に関心薄い。

第3課題 幸福度の向上
 &
第4課題 将来に向けて有用な人材

 嫌われる勇気&幸せになる勇気が重要



C先生:という訳で、たった5名の参加者であったけれど、これまでの定型的なサマースクールとは全く違った、新しい形態での成功例が生まれたような感触
 ただ、やはり5名では、効率的にはなんとなく物足りない。
 次年度のサマースクールが、実は、最終回の予定。国連大学時代に5回実施し、今年が持続性推進機構のEcoLeadとして4回目だった。さて、その最終回をどのような形式でいつ開催するのか。恐らく、これまでの実績をすべて白紙に戻して、新しいスタイルを模索しなければならないようなので、会場の予約を含めて、早速、検討を開始しないと、といった感じです。