史上最悪の東北巨大地震    03.12&13.2011  




 12日の14時46分に発生した大地震は、明治以来の観測史上最大の規模で、マグニチュード8.8(13日に9.0に変更)。
 13日のニュースでは、数万人が未だ安否不明とのこと。


−−−−3月12日−−−−−
 テレビのニュースを見ていると、想像を絶する余りの酷さに落ち着いて見ていられない。だからといって、テレビを消しても、何か仕事ができるという精神的な状況でない。

 実は、本来であれば、土日と東北大学の環境科学研究科の外部評価委員会と社会人コースの講義とで仙台に居る予定だった。1日遅れていれば、落下物かなにかで、命が無かったかもしれない。それだけに、余計に人ごととも思えない。

 もし無事でも、帰ってくることもできず、どこにどうやって生きているのだろう。

 福島第一、第二原発での冷却トラブルも、これ以上ひどいことにならないことを願うが、明らかに、炉心溶融、そして、水素爆発が起きた。

 今週は、東北大学に行くためにHPを書く暇はないはずだった。「新こたつ文明論」が中央公論の3月号が出たのが2月10日だったので、すでに1ヶ月経過した。そろそろ最初に用意したもっと長い初稿を掲載する予定だった。

 時間はある。しかし、何か虚しさを感じて、普通に掲載する気にもならない。このHPを最初に書き始めたのが、1997年の6月。それ以来、この週末がもっとも元気が出ない。


−−−−−3月13日−−−−−
 昨晩は、なぜか、胃腸の調子まで悪くなって、若干発熱(多分、テレビの見すぎによるマイナス情報摂取過多による欝症状)して、何も考える余裕が無かったが、今朝、目が覚めて見れば気力・体力が共に回復している。

 落ち込んでいる状況ではない。こんなときこそ、前向きの思考を持たなければ、と今後のことを考えている。

 震災復興となれば、見本は、例によって後藤新平か。あの時代だと、充分な情報をもっている特定の人間にしか、あのような壮大なビジョンを描くことはできなかったが、現時点のインターネットは、エジプトの政権を変える力を持っているだけではなく、より積極的なビジョンなどを共有しつつ、それぞれの専門的知識と情報を持ち寄って、ポジティブな議論を行うツールとして使えるのだ。

 多数の人の協力によって、「バーチャル後藤新平」をネット上に構築することこそ、すぐに始めるべきではないのか。

 ということで、この段階で、Facebookにアップして議論を開始した(13日正午)。

 その段階で提示した議論の対象になりそうな課題の例は、

(1)南三陸町、陸前高田市のように、今回の津波で完全崩壊した地域が、100年先を考えた形で復興するために、今、何をやるべきか。

(2)原発依存型の電力構成が、地域依存性が高くなるという原因で、意外と脆弱であることが判明。東京電力の電力供給が向こう3年間程度不安定であるという事態を予測すると、今後の都市構造としては、電力依存一辺倒ではなく、温暖化への配慮をした上で、都市ガス+SOFCによる地域分散型のエネルギーシステムの整備を再度考えるべきではないか。

(3)日常生活の省エネを極限まで進めるとともに、自然エネルギーとして、安定した出力が狙える地熱や海流、あるいは、海上風力など、を真剣に考えるべきではないか。

(4)今回の地震による様々な事態を、リスクに対して過敏な社会にますます移行するキッカケにするのではなく、ヒトの生存は、所詮リスクとの共存なのだという理解に変えるには、どうしたらよいか。


 まだまだ考える必要がある事項は多いが、取り敢えず、この4点に限って、考えてみたい。


(1)南三陸町、陸前高田市のように、今回の津波で完全崩壊した地域が、100年先を考えた形で復興するために、今、何をやるべきか。


 まだ、考え始めるのは早い。当面の対策で手一杯という感想はあるだろう。しかし、復興が始まってからでは、手遅れになる部分が出てくるのではないだろうか。

 まず、津波対策をどのように行うのかを考える。

 どの程度の津波がどのぐらいの頻度で再発するのかを検討する。

 三陸の津波の歴史は、1960年のチリ地震、1933年3月3日の昭和三陸地震(M8.1)、1896年の明治三陸地震(M8.6)。

 現在、三陸地域の主な都市の海岸線には、高さ10mぐらいの防潮堤が設置されているが、それは、1933年の昭和三陸地震の死者1522名、行方不明者1542名という被害の再発を防止するために、1958年頃から、1982年程度までに建設されている。そのため、チリ地震津波の被害を最小限に食い止めた。

 しかし、今回の超巨大津波は、高さ10mの防潮堤を楽々と乗り越えた。

 明治三陸地震は、巨大地震ではあったが、地殻変動がゆったりしていたため、震度は大きく無かった。2〜3程度ではなかったかとされているようだ。

 この地震の津波の高さは、大船渡市で22.4mだそうだ(Wikiによる)。今回の津波の規模は不明だが、やはり同程度なのではないだろうか。

 どうも、100年に1回程度の津波の襲来を予測した上での都市設計を行う必要があるように思う。

 今回の巨大地震では、仙台市南部で、海岸線から最大10kmも津波が遡上したようだ。これを標準にものを考えるのは無理だろうが、そのうち明らかになる最大到達高さと、防潮堤との関係などを解析した上で、津波が到達する想定距離以内の建物は、耐津波構造のRC・SRC建造物にする以外は無いのではないだろうか。

 具体的なイメージは、RC・SRC7〜8階建ての基本構造で、1階2階は駐車場などの共用スペース、3階を共用空間(集会室)や店舗用などとし、3階レベルで隣のビルとの歩行者用空中通路を作る。この通路で、車椅子でも、隣のビルへの移動も可能になる。ただし、超巨大津波に対しては、設置場所によっては、3階では高さが不足するという可能性も皆無ではないので、防潮堤の性能との関係で、要検討。

 今回の三陸地域には、鉄道が通っている。駅をどこに作るのか。その地域の状況によっては、それから考えることができる可能性もある。

 駅を中心とした市街を、このようなRC・SRC7、8階建てにすれば、人口のかなりの部分が吸収できるだろう。それ以外の地域をどのようにデザインして、どのように居住するのか。無難には、農地あるいは公園などにする。農地になったら、誰が農業をやるのかを決める必要があるが。

 津波の心配の無い高度があるところは、土地の私有を希望するか、あるいは、RC構造などでは満足できない人々のための地域とする。

 最大の問題は、このような建物を誰がどこに建設するか、ということ。これまで、日本の土地制度は、「所有者が完全に自由に使える。公共事業などがあると、特定の所有者が大きな利益を得る」、という制度で、その自由度の高さは、世界でもトップだった。

 これを今回の巨大地震を契機として、公的な都市計画が私権に優先する例を作ることが必要。この土地所有の制度改革に現在の政治家が取り組めるのか。そこが問われる。

 いささか過激な提案であることは自認しているが、このぐらいのことが進められないようでは、日本の未来は無いように思える。


(2)原発依存型の電力構成が、地域依存性が必然的に高くなるという原因で、意外と脆弱であることが判明。東京電力の電力供給が向こう3年間程度不安定であるという事態を予測すると、今後の都市構造としては、電力依存一辺倒ではなく、温暖化への配慮をした上で、都市ガス+SOFCによる地域分散型のエネルギーシステムの整備を再度考えるべきではないか。


 東京電力の原発は、現在、全部で17基。福島第一が6基、第二が4基、柏崎刈羽が7基。このところ地震に好かれているというか、相性が良すぎるぐらいの状況で、被害に合っている。

 柏崎刈羽原発を停止に追い込んだ断層は、1000年に1回動く程度のものかもしれないが、福島のあの場所は、危険性が高い。しかし、それでも100年に1回だろう。「まさかほぼ同時期に起きるとは」、というのが東京電力首脳の正直な感想だろう。

 現在、下北半島の東通に新しく立地をして、2基を建設する予定。しかし、この3ヶ所以外の場所への建設はもはや難しい。

 今回、廃炉が決定的な福島第一の1号機の跡地に、3倍ぐらいの能力をもつ新機種を設置するぐらいが、今後、やれることだろう。

 となると、原発の増強が例えできたとしても、今後、地震・津波・高潮、さらには、国際的な問題などの影響で、電力供給が不安定になるという懸念が残る。

 やはり分散型エネルギーとの共存を、エネルギー安全保障の観点から、図るべきなのではないか。

 その候補は、これも毎回書いているような気がするが、都市ガス+SOFCによる発電・給湯である。

 700W〜1kW程度のSOFCを設置し、電・熱同時供給によって、総合熱効率80%を目指すということが良いのではないだろうか。

 ただし、本来の候補である太陽熱温水器を使うことが難しくなるので、その分担はしっかりと考える必要がある。

 分散型の究極形は、超小型原発(原子力潜水艦用をイメージ)による分散型原子力だという考えもありうるが、事故・故障対策などや、日本の市民社会の受容性を考えると、ここ30年程度では実現不能だろう。

 今回、東京電力は、「輪番停電」の導入を決めたようだ。それがいつまで継続するか分からないが、オール電化をこれまで推進してきた責任を多少は感じて欲しい。

 この停電を契機に、電力事業者とガス供給業者の連携を深めるため、なんらかの法的な整備を行うことが必須なのではないだろうか。

 エネルギー供給業は、もともと法律によって守られている事業である。安全保障が必要な分野であるので、国の指導力をもっと強化すべきではないか。

 その一つに、これを機に、50Hzと60Hzの問題の解消を目指すというものがある。中部電力と東京電力の境目に50−60Hzの変換所があるようだが、その容量は僅かに100万kW程度。根底から解消するには、DC送電の基幹を作るという方法があるのではないだろうか。

 ついでに、家庭でも200Vのコンセントが使えるようにすべきである。韓国は、最初訪問したのは、すでに20年以上前だが、その時には100Vだった。しかし、その後、200Vに変えた。現在の送電方式のままでも、家庭に200Vのコンセントを作るのは、簡単なのだから。


(3)日常生活の省エネを極限まで進めるとともに、自然エネルギーとして、安定した出力が狙える地熱や海流、あるいは、海上風力など、を真剣に考えるべきではないか。


 2050年の5つの社会を検討しているとき、2050年には、エネルギー消費量が40%しか減らないのに、CO2排出量は80%削減をする社会を想定していた。

 その様子を示す図が、次のようなものである。


図 2050年のエネルギーとCO2排出量

 しかし、さらなる省エネを進めて、エネルギー消費量は60%をぐらいの削減をすべきなのではないか。それが、エネルギー安全保障上も、重要なことなのではないだろうか。

 それには、すでに上で述べた、都市ガス+SOFCによる総合効率の向上も寄与することだろう。

 いずれにしても、CO2排出量を80%を削減するとなると、電力はほぼゼロカーボン電源になっていて、二酸化炭素の排出源としては、産業用の高温の供給と、長距離トラック用のLNGか何かに限られるという想定であった。

 ゼロカーボン電源を実現するのは、自然エネルギー、CCS、原子力の3者コンビの役割である。自然エネルギーは、太陽光と風力が主力と考えられがちであるが、日本という雨や雪が多く、風が気まぐれな地域では、どうにも主力に成り得ない。自然エネルギーは、やはり、現在の石炭火力発電を置換できる性能をもったものを選択すべきである。

 となれば、地熱発電が第一候補である。二番目が中小水力、第三候補がバイオマス、第四候補がいまだ未着手の海洋風力を含む海洋エネルギー、特に、海流発電か。

 これは、発電ではないし、お天気任せではあるものの、日照時間の長い地域であれば、家庭用の太陽熱利用を進めるのが良い。

 この5本柱を早急に強化する必要がある。自然エネルギー買い入れの義務化を進めるべきだろう。「輪番停電」が行われる時期が、そのような政策を進めるチャンスである。



(4)今回の地震による様々な事態を、リスクに対して過敏な社会にますます移行するキッカケにするのではなく、ヒトの生存は、所詮リスクとの共存なのだという理解に変えるには、どうしたらよいか。


 今回の巨大地震の副作用で、福島第一第二原発の複数の原発の停止が上手く行かない。第一の1号機には、海水が注入されたようだ。

 基準値は超えているものの、微量の放射性物質が放出されたことを過大視している記事が多いのだが、本当のリスクが何であるか、記者も知らないだろうし、実は、筆者自身もよく分からない。なぜならば、炉心溶融が起きたのは、チェルノブイリ、スリーマイル島の2例に続き、今回の例しか無いからである。

 チェルノブイリは、黒鉛炉で、今回の軽水炉系の原発とは構造が全く違う。

 少なくとも、人体への被害がほとんど無い程度の放射性物質の放出を過度に気にするよりも、しっかりと避難を実施した上で、原子炉を確実に停止することに注力すべきだと、メディアは書くべきだ。

 今回の津波での行方不明者の総数も分からない状態だが、日本のメディアは、その人命の損失と、微量の放射性物質のリスクの重みの比較をどうやってしているのだろう。メディアの感覚では、「津波による死亡は、天災だから諦めろ、しかし、放射性物質による被害は、いかに微小でも、人災なのだから追求する」、ということなのだろうか。

 これは、どう見てもバランスが悪い。確かに、死亡した人は生き返らない。しかし、まだ家などの残骸の中で生存している人の救助を進めるべきことを、もっと優先して記述すべきなのではないだろうか。

 救助のためには、行政自身が被災していて、追いつかない。これも事実だろう。自衛隊は10万人レベルの投入のようだ。それでも不足しているだろう。

 しかし、メディアが、リスクの大小をしっかりと理解して、その尺度を提示しながら、生存者救出をもっと進めるように、提案することが必要不可欠だと思う。

 そうはいっても、JCO事故(1999年)のときのNHKの報道などに比べれば、原子炉についての勉強をしている様子は伺い知ることができる。

 さて本題。市民レベルでのリスクへの理解をどうやって増進するか。どう考えても、良い答がなかった。

 今回、そのキッカケになりそうなのが、本当に行われそうな気配の「輪番停電」である。これまでエネルギーというものに対する理解が少なかった東京電力管区内の住民も、エネルギーというものを作るのに、どのようなリスクを犯しているのか、それに対しても多少の気配りをする必要があることに気付くのではないだろうか。



 以上、4つの課題についての意見。一人でも多くの被災者の命が救われることを祈りつつ。


 以上のようなことですが、「バーチャル後藤新平」を実現すべく、Facebookへのご登録をお待ちします。

 100人程度で参加登録をクローズしようと思っていたのですが、現時点のように145名になっても、実際には、何も負担が増えないので、しばらく参加募集を続けるつもりです。