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   豊洲移転が大幅遅延 11.20.2016
     
そろそろ豊洲劇場にも逆風が吹く?
               




 小池都知事の11月18日の発表によれば、豊洲市場への移転は、早くても1年後とのこと。今回、大人気となった「小池豊洲劇場」ですが、果たして、都民にとって東京都の職員が謝る絵を見たというメリットは有ったものの、今後、なんらかのメリットが有るか、大変疑問です。これは、歴史的な見地からも、しっかりと検証しなければならないことだと思って、今回、取りまとめを行うことにしました。

 まず、小池都知事のこの手法ですが、すでに、定番となっている過去を再現しているだけに見えます。しかし、その結末は、と言えば、大いに疑問です

 最初に結論ですが、今回のこの方法論は、2009年、民主党が政権に就いた直後に行った「仕分け劇場」とほぼ同一のように見えます

 民主党は、当時、何兆円もの無駄金が使われている、これを掘り出せば有効活用できると主張して大々的に「仕分け劇場」を開催しました。しかし、現実に、どれほど無駄金が見つかったというでしょうか。

 多少、歴史的なスタンスで見れば、この騒ぎで最終的に残ったことは、と言えば、それは「民進党にならざるを得なかった民主党の大凋落だけ」、なのではないかという評価になります。

 市民レベルへのメリットはあったのか、と言えば、一部の市民が、悪役=公務員!?がやられるテレビを見て溜飲を下げましたが、それだけでした。

 結局、大損をしたのは誰か。直接的には、時間と労力を無駄に使わされた「仕分けの対象となった組織」ですが、実は、その労力と無駄金は、税金によって賄われていたのですから、最終的に損をしたのは、国民全員だったのではないでしょうか。

 仕分け劇場に対する個人的な結論は、「仕分けで有名になった一部の政治家を除けば、得をしたのは誰もいない」、です。豊洲劇場では、元々有名人が主役ですから、さらなる得はないので、早期終結が得策でしょうし、しかも、今を逃すとそのタイミングは無さそうに見えます。

 という訳で、「豊洲劇場」も、「仕分け劇場」と似た結末に向かっているような気がします。そうなれば、都民が声を揃えて、「できるだけ速やかに終結させろ」と言わないと、結局、大損をするのは都民です。皆様はどう思われますか。

      
A君:本日の対談の司会は私です。C先生抜きで行います。そのかわり東京都の行政に詳しいD氏にご参加をいただいています。

D氏:今回の問題の構図を見ればすぐ分かるのですが、盛り土を行わなかった現行の豊洲の建物の設計と建設が悪くて、土壌汚染がなんらかの健康問題に関して悪影響を与えるということはないのですね。これが問題の本質ではないことは、すでに分かっていますね。それなら、何が本当の問題だったのか、と言えば、豊洲市場の設計・建設にあたって、東京都の巨大組織がバラバラで、有機体として十分に機能しなかったということが最大の問題で、このような体質がもしも改善されれば、東京都民にとっても将来プラスになる可能性がある、ということだと思います。果たして、そうなるのでしょうか。

B君:健康影響ついては、専門家の誰もが、現行の設計の方が、盛り土を全面に行うという方法よりも、もしもなんらかの事態が発生したときでも、より充分な対応に繋がると評価していますよね。むしろ良い設計が行われ、実際に建設されたという評価すればよいのでは。

A君:それが東京都の体質的かつ根本的な問題ですよね。技術委員会などからの諮問を貰ったとしても、それは形式だけで、それに従うのが義務だと誰も思っていない。まあ、参考にすれば良いと思っている。なぜなら自分たちが発注すれば、下請け企業は、日本のトップ企業なので、東京都の実力を遥かに上回る極めて有能なレベルであることが分かっている。まあ、言ってみれば、丸投げがもっとも良い結果を生むのだと思っているし、それが事実でもある。

B君:これまでの話だと、東京都が下手な決定を行わないことが、むしろ、最善の結果を生むとしたら、東京都の人員を大幅に削減して、むしろ、契約の適正化あたりを最大の職務にする機構の改善を行うことが最善の策だということになりそうだね。

A君:建設そのものの入札と設計の入札を別にして、設計の決定にお墨付きを与えるのが、技術委員会などの審議会という形にすれば良さそうですね。

B君:今回の問題の「盛り土」にしても、決定したのは、環境科学、特に、健康影響だけを考えての提案であって、盛り土をして、その上に豊洲市場の建物を載せるという提案をしたとはとても思えない。一応、専門家を自認することとは自分の専門分野以外のことは疑問を発することはあっても、分かったようなことは言わないのが条件だ。

A君:あれほどの重いコンクリートの建物を、盛り土の上に作ることは無いでしょうね。盛り土したばかりは、土壌が安定していないから、強度的に頼りにならない。どうしてもやるなら、コンクリートパイルの打つ本数をメチャクチャに増やして、盛り土の上にコンクリート製の人工地盤を作って、その上に建物を立てることになる。そんな設計だと、地震対応が難しくなりそうですから、誰もやらならない。

D氏:建物の設計者からは、実際、そんなアドバイスがあったのです。一旦、盛り土を全面的にやったとしても、厚さは2.5mだから、建物を建てようとすると、普通なら、そのぐらいの穴を最低でも掘ることになるので、盛り土をやったところですぐに取り除く。したがって、「無駄です」というアドバイスが東京都に行っているようですよ。当たり前ですよね。

A君:「このアドバイスは正しい」と判断できる程度の能力は、東京都の建設関係にも当然あった。ところが、すでに「全面盛り土」という諮問を審議会から貰っていた。ここでそれをやらないと発表すると、審議会の委員のメンツを潰すことになる。さて、どうしよう。実際には、委員としては、自分達は、環境問題として意見を述べたのであって、工事の妥当性まで評価した訳でないと言えば、それで面子もOKなのですが。

B君:ところが、東京都の担当者としては、当然、「黙ってやるしかない」という結論になる。これは、突き詰めれば、「制度が悪い」ことが根本的な原因。すなわち、その制度を放置した歴代の知事の責任。勿論、そんなことが起きる可能性があることを、知事に上げていない東京都職員の無責任さに問題があるが、果たして、歴代の知事がそんなことに関心をもってくれただろうか。名前を考えてみると、誰も、そんなことに熱心になってくれそうもない人ばかりなのだ。

A君:「問題はこれで終わり」になる程度のものだった。知事として、ここまでの問題を掘り出したのだから、後は、自分の努力で、都の体制と体質を変えれば良いのであって、本来であれば、小池知事も、すぐに移転を実施するという決断を、今すぐ、すべきなんだ。

B君:その通りだ。健康問題が最初に問題にされたが、メディアのレベルの低さを露呈しただけで終わった。問題が起きる可能性は、築地市場と変わらない。すなわち、リスクは、両方ともゼロではないが、敢えて、避けるほどのものではない。

D氏:ただ、これまでのメディア報道によって、豊洲市場というものの負のイメージが出来上がっている。だから、問題になるのは、「風評被害」。この「風評被害」を作り出したのが、小池豊洲劇場だったので、この風評被害に対して、元環境大臣としての実績を使って、どうやって責任ある対応をするか、それが問われる最大の問題。

A君:今のスケジュールを見ていると、風評被害を意識していることはチャンと意識していることが、見て取れますね。実際には、何もやることは無いのだけれど、いかにも「慎重にチェックした」という姿勢だけを示そうとしていることを感じますね。それで時間が掛かるのですが。

B君:しかし、時間が掛かるということは、それなりの補償費用が巨額になるということになる。だから、都民としては、「自分のもっている『不安感』を税金を使って解消してもらう」という形で代償を払うことになる。

A君:元々、健康被害に関しては、技術委員のメンバーも、大丈夫と言っている訳ですから、再度検討することは無いのですけどね。

B君:健康被害を煽る記事を書いた新聞社や放映したテレビ会社に費用の負担をしてもらうという案はどうだ。

A君:健康被害の流布に加担した都議も居ましたので、やはり費用負担をして貰いますか。

D氏:それは極めて正しい考え方だと思いますよ。しかし、絶対に成立しない枠組みでしょうね。なんといっても、メディアは『正義』だし、都議も『正義』なのだから。

B君:地方議会の議員が『正義』ねえ。その割には、政務費の使い方については、酷い例がいくつも見つかったけれど、それほど大きな問題にはならなかったなあ。テレビで大泣きをした議員は確かに話題になったけど、根本的な解決になっていないように思う。

A君:最近の若者は、自分のやりたい仕事が何か分からないので、「政治家にでもなるか、まずは、地方議員だ」、というのが多いらしい。

B君:例の富山市は市議報酬が60万円/月と高額だったけれど、それをこの6月に10万円増額したところ、例の事件が起きて撤回をするらしい。若者にとっては、かなり高額所得が得られる商売だと思う。一方、富山県舟橋村は15万円/月。これでは副業に過ぎないと思うだろう。

D氏:建設の実体と盛り土の話も、すでに議論した通りなのですが、これもニセ建築専門家がでてきて、ニセ情報を流すと、それを面白がるメディアが多くて、困った事態が起きましたね。

A君:盛り土が無いと、地震に耐えないという、全く建築の専門家とは思えないような説明をした人が居た。こんな専門家のウソをメディアはウソだと見抜けないのか、あるいは、ウソだと見抜けるけれど、どうせテレビなどは娯楽でしかない、として流してしまうのか。

B君:両方だと思うね。しかし、見抜けない人が大部分。もしウソだということがバレても、自分達の意見ではない。報道機関としては、意見の異なる両者を対決させてたのだから、公正な態度だという言い訳をする。

A君:例えば、天皇陛下の生前退位について、現在、有識者から意見の聴取が行われていますが、あの場合には、まさに、異なる意見を聴取するやりかた以外には方法論が無いのですね。しかし、科学的な事象については、もう一つ、やり方があるのです。それは、多くの専門家に意見を聴くというもので、メディアが探してきたあのニセ専門家の意見を正しいとして支持する専門家は、ほとんど居ないことがすぐに分かる。メディアには、健康被害などの科学的な事象については、この方法論を義務付けるべきです。

B君:べき今回の豊洲でも、「メディアは、科学的な事実というものをどのようにして確認すべきか」、という議論を、根本的な問題として提起したいね。変わった人が居るということは、バラエティーとしてなら面白い。

A君:確かに、バラエティーとは”Variety"であって、もともと『多様性』という意味なのだ。だから、色々な変わった人々を集める演芸が、バラエティー(・ショー)。科学的な事実を確認する方法論が、バラエティー・ショーであってはいけない。

D氏:建築物の地下に空間があるということも、実際には、良く考えられた構造ですね。ここで、一つ、図を示しますか。実は、この図は、現時点だと見ることができないのです。現時点の東京都のWebサイトだと、
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/book/book_all.pdf
ここに「築地市場の移転整備 疑問解消Book」があるのですが、そのp11は今、こんな状況。


図1: 現在調査中で見ることができない。 (築地市場の移転整備 疑問解消Book)

A君:前にダウンロードしたものがあって、それでは、こんな図になっていました。


図2:以前ダウンロードした図。(築地市場の移転整備 疑問解消Book)

D氏:この図2のような形に建物を立てたとき、地下水というものは、降水量などによって、レベル(水位)は変わる訳ですから、その対策を取る方法論を考えるのが、より安全サイドに立った妥当な考え方です。

A君:地下の空間で、地下水の質をモニターしながら、もし、環境基準を超えたら、処理ができるような対応を地下室に準備しておくことことで、より万全と言える状況になるでしょう。

D氏:この『疑問解消Book』には、もう一つ重要な情報があります。それは、p10の土壌汚染の分布図です。


図3:土壌汚染分布の図 10m四方ごとの4122地点について評価してある。
(築地市場の移転整備 疑問解消Book)

D氏:元々、ここにあったのは、東京ガスの石炭からガスを製造する工場でした。現在では、ガスは天然ガスですけれど、歴史的には、石炭ガスであった時代が長いのです。石炭は、樹木が炭化してできたものですから、樹木に含まれているリグニン分というベンゼンが繋がったような化合物も炭化して石炭になっています。だから、ベンゼン分があります。樹木は、天然物ですから、あらゆる微量の金属元素を含んでいます。天然物であるヒトの体だって、あらゆる金属元素を含んでいますから、全く、同じなのです。ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウムのような有害金属だって、天然物であるヒトの体にも、樹木にも、全く同じことですが、含まれているのです。生命というものは、地球の組成をどのように上手く利用すれば生きることができるか、という試みを非常に長い期間に渡って試行した結果として、その最適状態になっているのでして、体内に存在する微量の元素も、ひょっとしたら生命の存在にとって未知のプラス要素があるのかもしれないのです。デトックスが正しいとは限りません。有害元素は、自然濃度程度にして保っておくことが、最善の対応策で、有害物質だから避ければ良いとは限らないのです。

A君:ただ問題は、大量の有害元素を摂取すれば、明らかに有害であるということ。そのために決められている基準が環境基準。特に、飲用水については、厳しく定められていますね。

B君:ただ、飲用水とは、毎日2リットルを365日飲み続けることが前提で設定されていて、環境基準も、ほぼ同じような考え方で設定されている。そのあたりの川を流れている水を汲んでそのまま飲むので、さすがに、毎日2リットルも飲むということは無いのだけれど、ヒ素の場合だと2リットル飲むことが前提になっている。これは、人為的なヒ素汚染は、すでにほぼ制御されているからかもしれない。

A君:猛毒というイメージがあり、まだ、工業的な汚染がの可能性がないとは言えないシアンの場合では、毎日2L飲むことを前提としてはいなくて、毎日0.5L飲むことを仮定して、環境基準が作られています。シアン化合物は、有名な青梅などのように天然物もあるのが理由かもしれないですが。

D氏:ということなのでして、工場ですから、石炭乾留を行って石炭ガスを作っていた加熱炉のあった場所の付近は、汚染がひどいのです。その図3だと左側の赤い四角が集中しているところですね。この場所がどうなるのか、と言えば、計画では、市場としてではなく、道路で舗装をしてしまうか、あるいは、公園として公開されることになっています。公園のために、「盛り土」が必要なのです。地下水の水位が変化したとして、もし、地下水が上がったとしても、有害物は、途中のきれいな土に吸着されて地面レベルまでは上がらないように、ということが盛り土の本当の意味なのです。繰り返せば、本来、盛り土が提案された理由とは、公園用地対応だったということだと思います。

B君:いろいろと検討してみると、現状の豊洲そのままで問題になることは、ほぼ無いことがすでに分かっている状況だと結論できるね。

A君:敢えて言えば、地下空間に、もしも汚染された地下水が上がって来ることに備えて、適正に処理する設備を設置すべきことぐらいでしょうか。継続的に地下水をチェックして、汚染があったら処理するという方法になるでしょうが。加えて、それで、土壌汚染も徐々に改善されるでしょうし。

B君:まあ、色々と検討してきたが、こんなところだろう。それでは、司会者をさておいて、本日の結論をまとめたい
1)豊洲の状況は、東京都側に様々な問題点があったものの、処分が決まった現状で、未解決の問題があるとは思えない。むしろ、今後、工事発注の制度全体の見直しが重要だろう。今回の豊洲に関しては、日本のトップクラスの設計者の正しい対応のお陰で、十二分に配慮が行き届いた設備ができていると認識すべきだ。この幸運に感謝しよう。
2)となると、これ以上時間を掛けて、安全性の再確認をすることは、空白期間が長期化し、それに対応する補償金の増額を招くだけである
3)この出費の増大に見合うだけの利益を都民が受けることができるかどうか? これが判断の基準になるが、科学的な要素、例えば、より安全性が高まるといったことは、もはや無さそうである。
4)メリットがあるとすれば心理面だけで、「都民の安心感が増大する」ことは考えられなくもない。
5)移転する事業者への補償金など、東京都の出費の増大に見合うだけの「都民の安心感の増大」を狙うのであれば、現在、進行中の豊洲劇場的な方法が有効とは思えない。もっと直接的なリスクコミュニケーションを実施すべきである。ちなみに、今回の問題は、リスコミの中では、もっともやさしい課題に属するぐらい、適正な設計による対応がすでに実現できている。誰かに依頼すれば良いだけ。
6)もしも、移転を1年間も伸ばすようなことをすれば、補償金の出費が増えたその本当の原因は、「小池豊洲劇場」の落とし所を探った戦略のためであり、言い換えれば、「タイミングを計る引き伸ばしのための出費」であったと判断されるようになると予測できる。結果として、小池都知事にとっては、強い逆風が吹き出すことになる可能性が高い。
7)メディアにしても、東京都の責任者の処分もこれ以上無いと思われる現状で、「さすがに都民も、小池豊洲劇場に飽き始めている」と感じているだろう。すなわち、逆向きの風が吹き出すことを、メディアのカンとしてそろそろ想定し始める時期になっている。すなわち、報道のトーンはかなり速やかに、かつ、確実に変わるだろう。
8)結論:小池都知事としてのベストの戦略は、2から3ヶ月以内での速やかな移転開始を決断することである。

謝辞:本記事を記述するにあたって、「環境管理」11月号(一般社団法人 産業環境管理協会)を参考にさせていただきました。