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このところニュースに出てくる「トリチウム」。「またまた新語だ」と思う人、あるいは、「また危険なことを隠していた」と怒る人も多いかもしれない。 環境関連で、このところの新語はPM2.5だったが、日本という国では、新語は過大に恐れられる。しかし、トリチウムは、ある種の水素の名称なので、多少とも化学をかじれば、極めて常識的に理解できる用語ではある。 トリチウムの放射線の危険性についてはどうだろう。セシウムと同じ程度なのか、あるいは、これまで問題にならなかったのは過小評価されていたからなのか、今後、その危険性をどのぐらいだと見ることが妥当なのか、どこまで情報を理解すれば良いのか、などを検討してみたい。 C先生:またまた新語だと思う人が何%ぐらい居るのだろう。トリチウムは水素の同位体なのだが、普通、同位体に専用の名前はない。数字を付けるだけ。例えばセシウム137、セシウム134などのように、名称+質量数というものが名前になっている。トリチウムは、水素で、質量数は3だから、本来なら水素3と呼べば良い。ところが、質量数が一桁だと、化合物の名称のときにつかう原子の数と混同しやすいからということなのかもしれないが、トリチウムあるいは三重水素と、特別に名前が付けられている。 1.トリチウム・三重水素の歴史 A君:日本語では、水素には、質量数2の重水素、質量数が3の三重水素・トリチウムがあることになっています。 B君:水素の同位体の存在率は、質量数が1の普通の水素が99.985%、2の重水素が0.015%。この2つが安定して存在している元素。トリチウムは放射性で不安定。 A君:重水素は中性子を吸収しにくいので、それなりの用途があるし、質量が違うと化学反応が違うので、生物学・化学どの分野ではしばしば使われる。 B君:重水素は、1931年に米国の科学者ハロルド・ユーリーが発見していて、ノーベル化学賞を得ている。どうやって発見されたのか、と言えば、水素を冷却して液体にしてから蒸発させ、残った部分を集めてまた液体にして、ということを繰り返して、普通の水素の沸点20.6K=零下約250℃よりも沸点が23.8Kと高い水素があることを見つけた。重さを測定したら重かった。 A君:トリチウムの発見者はマーク・オリファント(英国)。水素の核融合も発見しているらしいが、ノーベル賞などは貰っていない。 2,東電発表のトリチウム流出(8月2日発表) http://www.asahi.com/national/update/0802/TKY201308020432.html C先生:福島第一原発からトリチウムが海に流出しているというが。 A君:新聞発表によれば、20兆から40兆ベクレルのトリチウムが海に放出されているとのことですね。 朝日新聞の発表要旨 「地中から海への流出量について、東電は港湾内の海水のトリチウムの濃度が上昇した今年5月以降は汚染水の流出量がさらに増えたと試算。7月末までで総量で20兆〜40兆ベクレルに達すると見積もった」。 B君:すでに20兆〜40兆ベクレルが出ているとのこと。これからどのぐらい排出されるかは問題だけれど、まず、この20兆〜40兆ベクレルというものがどのぐらいなのか、その相場観を得ることが重要だ。 A君:それには、天然にどのぐらい存在していて、それをどのぐらい被曝しているのか。過去はどうだったのか、などなどを、できるだけ抜け落ちのないように、淡々と調べてみますか。 3.トリチウムの存在量(バックグラウンド)・発生量 C先生:ウランなどの放射性物質は、地球が出来たときにもっとも大量に存在していた。それ以後は、減るばかりなのだが、トリチウムは違う。宇宙線として降ってくる中性子もしくは陽子が、地球の成層圏にある窒素あるいは酸素と核反応を起こし、トリチウムができる。その量は、7.2京ベクレル/年ほどとされている。半減期が12.3年なので、無限に増えることはなくて、全地球に存在する量は一定値になる。国連のUNSCEARの報告書によれば、それは、127.5京ベクレルとされている。 A君:トリチウムも水素なので、かなりの量は、水(普通の水はH2O、トリチウムの元素記号をTと書けば、HTOという形)として存在しているけれど、水素は、有機物の主要構成元素なので、地表と生物圏にも存在する。全存在量の35%が海洋の混合層に、深海に30%が、そして、地表と生物圏に27%が存在しているとのこと。残りは、成層圏や対流圏にあります。 B君:これ以外にも、人工的にできてしまうものがあって、そのうち重大なものがカナダの重水型原子炉(CANDU)。天然ウランを燃料に使うことができるので、ウラン濃縮が不必要ということで開発された。重水素からなる重水を中性子の減速材に使っているので、D+n→Tという反応(D:重水素、n:中性子、T:トリチウム)が起きてしまう。 A君:CANDU炉は、日本には無いが、中国や韓国にはある。 B君:重水を使っていない軽水炉だと、水に含まれている重水素は0.015%なので、中性子を照射しても、トリチウムの発生は少ない。 4.トリチウムによる被曝 C先生:ベクレルというのが線量ではあるけれど、その生体影響は放射線の種類によって様々だ。 A君:トリチウムが出す放射線はβ線。β線は電子の流れ。しかも遅いのでエネルギーが低い。そのため、生体への影響を示すシーベルトSvに換算するときの係数が小さい。 B君:このあたりのデータを見るときには、原子力資料室の放射線ミニ知識が使いやすい。高木仁三郎氏が作った組織で、基本的な姿勢は反原発だったが、提供している情報については、極めて科学的に中立で信頼できる。山本太郎やその応援団体とは違う。 A君:地球上に存在するトリチウム量は、96京ベクレルだとしていますが、まあ、いずれにしても推測値ですから。 B君:指摘で重要なのは、水素爆弾によって、大量のトリチウムが大気圏に放出されてしまったということ。 A君:水素爆弾がなぜ大量のトリチウムを放出するのかは、付録で簡単に説明します。 B君:「頻繁におこなわれた大気圏内核実験の影響が大きかった1960年代半ばの降雨中の濃度は100ベクレル/リットルになっていた」、と記述されている。 A君:1960年代には、これを飲料水として飲んでいた訳です。ちなみに、現時点での飲料水の基準値は、10ベクレル/リットル。その当時の放射線量は今よりも10倍も高かった。 B君:その通りなのだけど、だからといって10倍も生体への影響があったという訳ではない。それは、トリチウムの出すエネルギーの低いβ線は、影響が少ないからだ。なぜならば、β線は、水だと深さ0.01mmまでしか届かない。生体は水でできているようなものだから、外部からの被曝は問題にならない。 A君:したがって内部被曝が問題になるのですが、トリチウムを含む水を飲んだときに、シーベルトに変換するための実効線量係数は、1.8×10−8。この値は、かなり低くて、例えば、セシウム137の場合には、1.9×10−5なので、約1000分の1ということになる。 B君:この実効係数というものは、体内に取り込んだ水がどのように生体内で代謝されていくのか、といったことも考えて作られている。体内に取り込まれたものは、約2ヶ月で体外に排出される。勿論、どこに存在しているかによって、排出される速度は違うし、そもそも全量が排出されるというものでもない。 A君:まずは、水の状態で存在しているのか、そうではなくて、体を作っているタンパク質などを構成している水素を置き換えるという場合も有りうるのですが、そういうことを全部含んでいるのが実効線量係数。 B君:いや。外部から水として与えられたトリチウムが置き変わる水素というものは、イオン性の水素に限る。言い換えれば、イオン交換が可能なも水素だ。かなり数は少ないはずだ。 A君:ちなみに、人体を構成する元素の10%が水素。体重60kgの人なら、6kgが水素の重さ。しかし、かなりが水の形として存在している。なぜなら、60kgの体重のうち、60%が水。というと36kgぐらい。そのうち、水素は、1/9なので、4kg。これが水として存在している水素で、残りの2kgがタンパクなどを構成している水素ということになりますか。 B君:セシウム137などの場合だと、γ線が放射線の主体なので、これは透過力が非常に強いので、どんな状態で体内にあるかは余り問題にならず、細かいことを言っても、意味はないとも言えるが、別の意味で、水素も体内のどこにあるかを問題にしないで済む。 A君:今、飲料水が10Bq/Lという規制値で、これは極めて厳しい値ですが、この放射性成分をセシウム137のみだったとすると、実効線量係数が1000倍なので、トリチウムに換算すると、1万ベクレルの水ということになる。 B君:水素爆弾の大気圏核実験の結果、1960年台の降雨は100ベクレル/Lぐらいの放射線があったといっても、それがすべてトリチウムだったとすると、セシウムにすれば、0.1ベクレル/Lぐらいのもの。人体影響が甚大だったということではない。 A君:被曝限界を1mSvと安全サイドに考えたとしても、5000万ベクレル/Lぐらい水であれば、1年に1Lぐらい飲んでもほとんど何も起きない。 B君:そう言えば、がんの検査であるPETは、どのぐらい放射性物質を飲むのだっけ。 A君:2億ベクレルぐらいですが、これは半減期が非常に短いフッ素19なので、シーベルトに換算すると2〜3mSvぐらい。 B君:ちなみに1mSv/年という被曝量は、安全限界でもなんでもなくて、食品に関して、CODEXが国際的に定めた「このぐらい増えても誰も気にしない年間被曝量の増分」。その根拠は、花崗岩が多い地域、特にヨーロッパの一部には自然放射線が3mSvといったところが多く、海岸に近く自然放射線が低い地域から、花崗岩地帯の自然放射線が1mSv/年ほど多いからだといって、そこに引っ越すことを躊躇する人はいないということが根拠。 A君:パリでも2mSv/年ぐらいはあるので、東京(≒1mSv/年の大地からの被曝)からパリに引っ越すと1mSv/年の被曝量の増加にはなってしまう。しかし、誰もこれを気にしない。 5.海に放出されたトリチウムはどうなる C先生:トリチウムを海に放出すると言えば、その地域の魚が悪影響を受けるという印象を持つだろうが、実際にはどうなる。 A君:それは、どう考えるのか、極めて難しい問題。 B君:なんとしてもトリチウムとは言っても水として放出されるのだから、海水に混じる。何日かかって、どこまで広がるか、その速度が問題。魚も、あるトリチウム濃度の海水に生息していれば、早晩、その濃度のトリチウムを体内に取り込む。 A君:魚は、大量の水を呼吸に使っているので、体内のトリチウム濃度も、かなり早く海水と同じ濃度になりそうに思う。 B君:一旦体内に入ると、生体分子と多少は結合するだろうから、減る方は時間がかかるかもしれない。すなわち、生物濃縮が多少起きるかもしれない。しかし、待てよ、トリチウムといっても、そもそも水素であることを考えると、有機物の水素と置き換わることは少なくて、置き換わるのはイオン性の高い水素だけかもしれない。そんなものは、体内には少なそうだ。水の方は、魚の体の全体に均等に分配されると考えれば良いと思う。すなわち、ある特定の場所に濃縮されるとしても、それはごくわずかだろう。また、生物濃縮も余り考えないでも良いだろう。 A君:もしもこの考察が正しければ、魚をどこで漁獲したかだけが問題になって、それまでその魚がどこを泳いできたかは余り気にしないでもよさそうですね。 B君:多分そういうことなのだろうけど、それを風評被害を起こすような人々は、そんな事情が理解できないのではないか。 A君:しかも厄介なことには、トリチウムの測定は水に含まれているものは測定できても、魚に含まれているごく微量なトリチウムが測定できるとは思いにくいですね。 B君:トリチウムの測定は、日本分析センターによれば、試料を蒸溜などによって精製し、液体シンチレータを加えて測定試料とし、低バックグラウンド用の測定装置により測定する、とある。 A君:セシウムの場合でも、食品に含まれている100Bq/kgといった放射線は、測定が極めて困難なほど低いので、苦労して測っているが、魚中の微量のトリチウムは測れないかもしれない。 B君:そこが最大の問題かもしれない。 A君:やり方としては、魚をミンチ状にしてそれに水を加えてしばらく置いて、次にろ過し、さらに蒸溜してから、液体シンチレータを加えて測定するというやり方かもしれませんね。 B君:先ほどの日本分析センターによれば、蒸留法で0.6Bq/Lまで測れるようなので、セシウム137の1000倍多くても同じ実効線量になるとすれば、600Bq/Lといった数値を測れば良いことになるので、なんとかなるのかもしれない。 A君:しかし、風評被害を作り出す人にとっては、何を説明しても、同じかもしれない。 6.風評被害を作り出す人々の主張への反論 C先生:それなら、トリチウムについて、どのような風評があるのか、どのような主張があるのか、調べて見て欲しい。 A君:東電の資料を批判している人を発見。東電作のパワポ。 http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130228_08-j.pdf B君:なるほど。以下の東電の主張に対して反論をしている。 @ 宇宙や、海や、大気、水にも含まれている A 微量なβ線なので外部被曝のような影響はない B 水なので、体内に留まらず排出される C 1Bq飲み込んだ場合、カリウム40との係数比較が0.003 D 保安規定に示された放出基準値(事故前)22兆Bq/年 E レントゲンやその他との比較 ただし、@とAは、科学的にも証明されていることだとは同意している。Eは馬鹿げているとして反論もしていない。 6.1 B 水なので、体内に留まらず排出される A君:それでは、Bから行きます。「B 水なので、体内に留まらず排出される」への反論ですが、次のようです。 「これは全く根拠のないデタラメだ。 トリチウム有機物に化合するとDNAの一部になり、胎児へも移行するという研究論文がある」。 B君:その研究論文が引用してある。 http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/sub040208saitou.2.htm A君:これは、京都大学の齋藤眞弘名誉教授のもので、DNAの原料となるチミジンの水素をトリチウムで置換したものを飲料水に溶かして投与し、マウス胎児への移行を調べた結果。 B君:子のマウスの肝臓を分析してみると、親に与えたトリチウムが子に移行していることが分かった。そして、新生児マウスは3週間は母親からの乳で育つが、母親を代理母にする。すなわち、トリチウムを全く含まない代理親のミルクを飲ませる。そして、子マウス中のトリチウムがどのように減少していくかを見た。その結果、親に与えたトリチウムを含むチミジンの45%は子マウスのDNA成分として移行することが分かったが、55%は、出生後2.5〜2.9日の生物的半減期で、体外に排出されることが分かった。 A君:要するに、チミジンの水素をトリチウムで置換したものは、その結合が長期間に渡って維持され、特にDNAのような生体高分子に入ってしまえば、体内からはなかなか出て行かない。 しかし、トリチウムが水の形で与えられた場合には、生体通常の指数関数にしたがってかなり速やかに減少していく。肝臓などの臓器中のトリチウムも同様という結果。 A君:齋藤先生は、トリチウムを二つに分けて、OBT(organically bound tritium=有機結合によって結合されたトリチウム)とFWT(Free Water Tritium=水になっているトリチウム)に分けて、極めて冷静にかつ科学的に記述されています。OBTは、FWTよりも相当に長く体内に残る。逆に言えば、FWTは、1週間で濃度が1/10になるぐらい、体内から速やかに消えるということです。すなわち、FWTで与えたトリチウムが、体内でOBTを作るということは無い。 B君:ただし、さらにこの論文を詳しく読めば、例外がひとつ紹介されている。それは、トリチウム水を与えられた母マウスでは、母乳の脂肪分の成分としてトリチウムが使われ、それを飲んだ子マウスの脳にトリチウムが蓄積する(脳は脂肪分が多いから)という報告もされている。 A君:それが1985年3月16日の毎日新聞に掲載されたようですが、齋藤先生自身、「この記事ではいささかセンセーショナルな取り扱いになっている。放射能の生物影響を云々する場合には、量的に線量を評価することが必要であり、脳に特に長く残るからといって、ただちにトリチウムを悪者扱いすることは早計である」と述べられています。 B君:ということは、「これは全く根拠のない東電の反論だという反論」のために、ご親切にも紹介してくれた引用ページを読むと、自身の反論の根拠が極めて薄いということが分かってしまうという仕組みになっていることを意味するようだ。 A君:その通りです。しかも、本人は、この論文をちゃんと読んでいない。この手の反論にそうだそうだと頷く人は、自分達に都合の良いところしか読まないという性格なのです。普通、引用文献までしっかり読む人はいないでしょうから、いかにもしっかりした先生の論文を引用をしているのだから大丈夫だ、信用しろという程度の扱いなのでしょう。 B君:Bの反対主張は、完全に破られた。 6.2 「C 1Bq飲み込んだ場合、カリウム40との係数比較が0.003」 A君:それではこれに行きましょう。 B君:これに対する反論が、 「またこの話、バナナやナッツを食べるとカリウム40を摂取し被曝しているという話か。 原子力推進派はいつも自然も人工も放射線は同じだと言う馬鹿げた話をする。 放射性カリウム40は確かに存在するが、人間は進化の過程でカリウムを排出し常に循環させている。自然のカリウムに極僅か含まれる放射性カリウム40を取り込み濃縮させない為である。 多数の原子力関係者が、この放射性カリウム40を比較として論ずるのは「皆さん、これまでも食べてますよ」という安全論を展開しやすいからであるが、こと生態濃縮に関しては一切説明されていないのが常である。」 A君:何を問題にしているのか、意味不明ですので、以下は推測です。 「セシウムは生物濃縮されるが、カリウムは生物濃縮されない」と言いたいのではないか。 B君:そうかもしれない。セシウムが生物濃縮されるということは、実効線量係数を算出する際に計算に入っていること。生物濃縮といっても、その仮想実験で説明すれば、こんなこと。カリウムとセシウムが例えば、1000:1の割合で混じった水と食糧だけを摂取したとする。これを何ヶ月間か続けて、体内の存在量を分析すると、これも例えばだけれど、カリウムとセシウムの比が1000:2〜3になっているということ。これは実際起きていて、セシウムの生体内半減期が長いということで、実効線量係数にも反映されている。 A君:「人間は進化の過程でカリウムを排出し常に循環させている」ですが、これは理解が違う。ヒトの身体の本音としては、カリウムを排出したくはない。カリウムは細胞液の成分として極めて重要(低カリウム血症参照)なので、できるだけ捨てたくはないのだけれど、どうしても生命維持機能上、そんな使い方になってしまう。そのため、毎日、補給をしなければならない。そして、大体、130gぐらいのカリウムを体内に常時維持している。カリウムは、どのような状態のものであっても、0.0117%が放射性のカリウム40なので、ヒトの身体はいつでも0.015gぐらいのカリウム40を持っていることになって、これが4000〜5000ベクレル程度の放射線を出す。これで内部被曝が起きている。 B君:カリウム40の説明は、恐らく大変苦労をしてこのような文章に落ち着いたのではないか。どう説明しても、誤魔化すことが極めて難しいほど、明らかな事実なので。いずれにしても、反論になっていないと結論。 A君:いずれにしても、『自然も人工も放射線は同じ』だと言う馬鹿げた話だと言っていますが、それが残念ながら真実。 B君:放射線に関することで怪しい説かそうではないか、これを見破るには、カリウム40についてどう書いてあるかが判断基準になる。その意味で重要な項目なのだ。また、カリウム40について何も書いていなければ、それも怪しいのだ。 6.3 D 保安規定に示された放出基準値(事故前)22兆Bq/年 A君:Dの反論も意味不明で、放射線というものは、管理施設の特性によって、努力をすれば良いところが厳しくし、厳しくしすぎれば、管理の実施が不能というところとして、今の福島第一があると理解するだけではないですか。 B君:なんとか管理を最大限努力は続けて欲しいが。 A君:地下水ですが、原発の敷地の上流側からバイパスを作って、汚染される前に海に出す以外に方法はないと思う。 7.結論 C先生:さて、トリチウムの説明は以上。淡々と説明(?)をしてもらったが、結論としては、齋藤先生の「放射能の生物影響を云々する場合には、量的に線量を評価することが必要」に尽きるのではないだろうか。 付録:水素爆弾とトリチウム 水素爆弾とは、核分裂のエネルギーを使って核融合を起こし、放出エネルギーを格段に増大し、威力を拡大した爆弾。 核融合とは、水素と水素の原子核を融合して他の元素に変換する際の質量の減少をエネルギー源にするが、通常の水素や重水素では極めて起きにくい現象で、もっとも容易に核融合が起きるのは、重水素とトリチウムとの核融合である。すなわち、いわゆるDT反応を利用する。 D+T→He+n という反応である。 ところが、これを起こすにはトリチウムを供給する必要がある。トリチウムは気体であるために、また、半減期が12.3年であり徐々に分解してしまうために、通常は 6Li+n→T+4He 7Li+n→T+4He+n のいずれかの反応を使って、トリチウムを爆発時に生産して、これを重水素と核融合を起こす方式である。重水素は、リチウムと反応させて、重水素化リチウムにしておく。 この反応の中性子の供給、さらには、高温にして核融合を起こすことが必要なので、起爆用に原子爆弾が使用される。 このトリチウムは全量が核融合を起こす訳ではないので、結果として、大量のトリチウムが地球の大気圏にばら撒かれた。 |
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