-------

   最近の企業不祥事の背景は?
     何が本当の問題なのか  12.03.2017

               




 このところ、日産・Subaruの車の検査不正の件、さらに神戸製鋼関係、そして、東レまで、企業不祥事が連発されています。この問題の本質、あるいは、背景はどこにあるのでしょうか。

 まずは、いくつかのブログの意見をまとめて見ると、平均的には、次のようなトーンになるかと思います。
「日本の緻密さはどうなったんだ。このような不祥事で、日本の製造業は地に落ちた。絶対に再発しないように管理してもらいたいと思う」

 まあ、日本国民の平均的な感想ではないか、と思います。

 しかし、これだけが、この事件の本質なのだろうかと思ってしまうのです。何か、単純すぎるのではないか。もっと別の要素は無いのか、より深層に問題点は無いのか。という訳で、Webをチェックして真の問題点を探す試みをしてみることにしました。

   
C先生:不祥事を起こした企業を弁護するというつもりでチェックを始めるということではない。これまでも、何回も記述してきたけれど、日本人という民族は、世界的にみても、非常に変わった民族なのだ。特に、何が正義なのか、あるいは、何が価値ある行動なのか、などという話題になると、グローバルな常識とは、かなり違った反応をする。日本人の最大の特徴は、自分へのリスクはゼロでなければならない、という信念、しかも、そのリスクだが、グローバルなリスク、例えば、気候変動に対しては感度が低く自分の身の回りのリスクだと、異常に感度が高いという特性だと思うので、この「緻密な管理」というものが、このような感覚によって正当化されている可能性が無いとは言えない。一方、グローバル企業のリスク感覚は、日本特有のリスク感覚からかなり離れたものになりつつあるように思う。こんな感触を維持しつつ、調査をしてみて欲しい。

A君:ちょっと当たってみましたが、余り意見が述べられていない感じですね。見つかったものは、
https://news.infoseek.co.jp/article/spa_20171130_01433284/
の記事。

◆相次ぐ偽装表示は日本経済の衰退を象徴している?

「大きく分けて、消費者の品質への要求度、コスパ意識が高くなっているにもかかわらず、企業側がその要求に応える体力、管理能力がなくなっていること、流通がグローバル化して表示の基準が国内と海外両側面からの対応が必要になっていることが理由として考えられます。さらに、日本企業特有の見て見ぬふりをする大企業体質が加わり、発覚したときは取り返しのつかない状態になっているというわけです」流通ジャーナリストの渡辺広明氏。

B君:消費者のコスパ意識に原因を求めている。これは、実際に存在するのだが、果たして、この考え方が、神戸製鋼や日産などの不祥事に当てはまるのだろうか。議論が限定的なように思える。

A君:本当か。という記事が見つかりました。
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/10300800/?all=1&page=1

★それでも中国の2倍の強度と高品質… 新聞が書かない「神戸製鋼」事件の裏側 週刊新潮

冷静なのが「被害者」のはずの顧客企業なのだ。たとえば、問題となったアルミ製品は、JR東日本の新幹線でも使われている。
 同社の担当者が言う。
「データ偽装されたアルミ製品は東北新幹線の『はやぶさ』や、北陸新幹線の『かがやき』、『はくたか』などの車両の壁板として使っています。具体的には、JIS規格より0・3ミリ厚くなっていたというものです」
 「『はやぶさ』や『こまち』などで、神鋼製の軸箱が使われていましたが、これもJIS規格と少し違っていました。“傷みやすさ”で5%高く、強度で0・4%低かったのです」
 この数値が、運行の安全を脅かすのなら、JR東日本はただちに新幹線を止めて、部品を交換しているはずだ。車両によってはスクラップ化もあるだろう。ところが、実際には何事もなく走っている。これはどうしたことなのか。
 「そもそもJR東日本が求めていたアルミ製品のJIS規格は『H4140』というものですが、金属製品には、多少の差が出ることを許容する“公差”というものがあります。それからすると、強度で0・4%低いというのは誤差の範囲と言えるのです」
 そう説明するのは別の鉄道関係者だ。
「鉄道会社は製品を神鋼から直接買うのではなく、日本車両や日立といった車体メーカーが神鋼の部品を使って車両を組み立て、それを納入しています。そこが十分強度に余裕を持たせた数値で製造していますから安全については問題ありません。新幹線は2年に1回は大がかりな検査を行うようになっていて、問題の部品を交換するにしても、その時の検査でも充分対応できるのです」(同)。
 また、神鋼の出荷先にはトヨタや日産、ホンダなどの自動車メーカーもある。彼らはどう見ているのだろうか。
「神鋼の問題はコンプライアンス(法令遵守)と安全性を分けて考えた方が良いと思います」
 とは、自動車業界の関係者だ。
「たとえば問題になったアルミ製品はスポーツカーなど高級車のボディパネルに使われることが多いんです。しかし、データが改竄されていたからといって走行中にパネルが剥がれたりなんてことはあり得ない。また、エンジンの部品にも神鋼のものが使われていますが、メーカー側が求めている元の基準が厳しいということもあって、問題にするレベルではない。今回のデータ改竄事件で、自動車メーカーは車種を発表していません。安全性に問題がないため、リコールをせずに静観するのが一番良いと考えているからです」。
 ということなのですが、この記事の締めが、以下の通り。
 「経営コンサルタントの田島章司氏も言う。『中国では鉄鋼メーカーがデータを改竄してもこんなに騒ぎになることはありません。一方で“これは当社の検査で合格しました”と言ってきても眉唾ものばかり。極端な話、日本の製品は、中国製品に比べて2倍安全だといっていい。金属製品もしかりです。特に人の命にかかわるような製品に関して、中国製がとって代わることは当分ないでしょう』」。


B君:最後の田島氏の発言、中国では鉄鋼メーカーがデータを改竄しても・・・・は本当だろうな。

A君:ここで問題はJISが引用されていることですか。受け入れ側が、JISのスペックが100%必要ではないにも拘らず、それを使っていて、しかし、実際の製品の設計段階では、マージンをさらに掛けているから問題ない。これは、材料製造企業にのみ、責任を被せていることになりませんか。

B君:もう一つ同じような記事が見つかった。
http://www.sankei.com/west/news/171014/wst1710140023-n1.html

◆阪急電車1000系と1300系に不正部材 安全性は確認、交換せず

 阪急電鉄は13日、一部車両の車体に、性能データが改竄されたアルミ製材が使用されていることを明らかにした。安全が確認されているとして交換は行わないという。
 車両メーカーの日立製作所によると、不正部材により、車体の外壁が設計より0・数ミリ厚くなっていたりしていた。出荷時の検査で重量や強度に問題はないことを確認しているという。

C先生:なるほど。材料関係については、まあ、そんなところだろう。コンプライアンスとして考えること、これが基本だ。法令に違反しているかどうか、と言われれば多分、そんなことにはならない。JISそのものは法律ではないので。したがって、取引条件として、どこまで厳守したのか、ということになる。結論的には、安全性が問題になるレベルではなかった。

A君:ただ、これ以外に、最近の企業文化として、納期を極端に厳しくして、自社に在庫を置かないという風潮がありますよね。

B君:トヨタのカイゼン以来の風潮で、日本中に広まった。

A君:となると、もしも1mm以下の誤差が出た場合に、もしも作り直していると、納期に合わなくなるという可能性が大きいですよね。

B君:受け入れ側も、それは困るし、逆に1mm以下の誤差ぐらい、加工段階でどうにでもなるのが実情なのだろう。

A君:このあたりの企業文化を変えることは、かなり難しいのかもしれないですね。

C先生:まあ、そんなところだろう。最終製品を作る企業がもっとも強いのは、どの国でも変わらない。例えば、アップルが中国企業に相当な無茶を言って製品の品質の確保をしているのは事実。アップルは、製造をしない企業だから、こんな行動をするのは当たり前だけれど、最終製品を自社工場で作る企業は、やはり、なんらかのBCP(=ビジネス継続プラン、地震などの発生でも、製造ができるだけ継続できるようにすること)を作っているのであれば、ある程度の在庫を持つのは当然、という時代になったのではないか。
 この話題を終えて、日産などの検査員の件に行きたいが、何か見つかった?。

A君:見つかりました。ダイヤモンド・オンライン。井元康一郎氏の記事。
http://diamond.jp/articles/-/150439

B君:この記事も著者は同じかな。論調が多少違う。
https://www.msn.com/ja-jp/money/news/%E6%97%A5%E7%94%81%A(省略)

A君:論旨は比較的簡単でして、いくつかの重要な事実を指摘しているところが重要です。
 まず、完成検査とは、いわば、「0回目の車検」。スピードメーターの誤差は?、ブレーキはちゃんと利くか、ライトの光軸は狂っていないか、クラクションは鳴るか、などなどで、これは、自動車メーカーが自社製品について実施します。
 しかし、チェック項目だけは決められているのですが、やり方そのものは、自動車メーカーによって異なっていて、国交省が求めていることは、「公的な車検場における検査官と同等の技量を持つという資格制度を社内で設け、資格があると認定された人物が検査を行う」こと。


B君:メーカーが行う商品品質検査は、こんなものではなくて、小さなキズや塗装ムラ、0.1mm単位でのドア、ボンネット、トランクなどの取り付け誤差、そして、その最終ゴールは、数万点の部品の役割をすべて理解して、自分ひとりで車を組み立てることができるというものらしい。

A君:それに比べれば、完成検査ができる人というだけなら、非常に簡単で、保安基準に適合しているだけを見るだけなので、もっと多くの人にその資格を取らせれば良いだけだった。

B君:どうやら、このところ生産台数が増えすぎて、フル生産に近い状態になった。そのため、試験などをやっている余裕が無かったということらしい。

A君:馬鹿げた問題ですね。要員を増やさなければならなかったのに、生産担当役員や工場長などの管理職が対応しなかった。彼らが、しっかりして居れば、こんなことは起きなかった。まあ、甘く見ていたとしか言いようが無い。

B君:この事件が起きたとき、西川廣人社長や生産担当役員が会見に出てこなくて、一般の従業員に任せてしまった。これが今回の日産の体質を示していることで、「役員に危機意識が無かったこと」を証明している。

A君:記事は、さらに、そもそも完成検査については、「車の品質がここまで高くなったので、完全に形骸化している。法は守るべきだが、昔のままの法や規則を放置していたのは問題」という国土交通省を非難する人も出ているとのこと。

B君:国交省は、許認可体質がもっとも強い省庁だから、分かるような気がする。

A君:さらに記事が見つかりました。この事件をやや違った観点で記述している人が、井上久男氏。
https://news.yahoo.co.jp/byline/inouehisao/20171124-00078528/

B君:なんだか、この井上氏の指摘が本当のところかもしれない。「こうした完成車検査制度は、車検制度と密接に絡んだ制度であり、車検制度を維持するために、国交省が無理やり古い制度を維持しているようにも見える」と述べている。

A君:かなり刺激的な記事で、「日産の無資格検査問題」で利権拡大狙う国交省が題目。

B君:主張を要約すれば、こんな感じか。「今回の問題は、法に触れたこと以外に、品質トラブルなど購入者の被害など、実質的な問題を何も起こしていない。となると、しかも、検査は簡単で、誰でもできるようなもの。となれば、検査自体が本当に必要なのか、という疑問も出てくる。法規や制度が実態と一致しなくなったら、それを変えるのが国の役割だ」。
 「そもそも、根拠となる道路運送車両法は、戦後6年目の1951年に施行され、日本のメーカーの品質力がまだまだ低い時代のもので、規制自体がもはや時代遅れ。車検制度を維持するために国交省が無理やり古い制度を維持しているようにも見える」
、というのが井上氏の意見。

A君:「車検は国交省の利権」だと断定しています。「国が認定した整備工場でないと車検は受けられない。そのため業界団体があって、国交省の天下り先になっている。役人にとって美味しい」。

B君:まだまだ終わらない。「ルールはルールなので守らないと行けない。しかし、時代遅れの制度で仕事をしていたら、国際競争力に影響しかねない。それには時代遅れの通達を変えてもらうように、日本自動車工業会が正々堂々と国土交通省に願い出れば良い。そのために業界団体はある」。なかなか鋭い意見に聞こえるが、実は、当たり前の意見なのだ。これが日本という国の現状。

A君:井上氏の意見をもっと読みたいと思って、探しました。分かったことは、個人のホームページも持っているのですが、自分の記事の広告だけで、何も見るものはありません。残念!

C先生:日本の車検は、極めて日本的なシステムだと思う。若かりし頃、1975年という大昔だが、米国で2年間ポスドクをやっていた。当然、自動車がなければ、生活できないから、超オンボロ車を買い込んで使っていた。こんな車だと車検でお金が掛かるだろうなあ、と思ったのだけれど、実際には、車検はガソリンスタンドでやるものだった。チェックするところは、操舵系、ブレーキ、ライトなど。以上で終わりだ。ハンドルが効いて、ブレーキで止まり、クラクションが鳴って、夜間走行のためのライトがしっかりしていれば良い。時間も1時間以内しか掛からないので、非常に安かった。

B君:井上氏の発言だが、「天下りが目的なのか分からないけれど、日本という国のシステムが古すぎる」ことで、競争力を失っているとしたら、アベノミクスなど、可笑しくて、という話になってしまう。

A君:日本製品の代表例である自動車は、本当に壊れない。その割には、リコールが多くて驚くぐらい。このような車になった一つの理由として、車検制度があるかもしれないとは思いますね。

B君:トランプ大統領が、米国車をもっと買えと日本に言っても、誰も買わない。未だに、機械としての信頼性が十分だとは思えないので。

C先生:最初にブログの平均的な意見はこんなものだ、と、ご紹介したけれど、このブログのような反応をしていたのでは、日本の未来はないと思う。やはり、問題の深層をしっかり見極めて、今後、問題の解決に取り組まなければならないと思う。加計問題、森友問題も、なぜか同じような臭い、すなわち、日本の政治家と官僚制度がもはや古くなりすぎたことが真の原因、という臭いがしていると感じるのだが、皆さんはどうなのだろうか。本当に正義を重んじる首相であれば、加計氏に対して、「私が首相である間は、親しい友人である君の利益は守ることはできない。覚悟して欲しい」、と言うと思うのだ。