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    二冊の文系・理系の本 
  01.05.2014 
             評とも言えない書評 




 アマゾンで”文系 理系”をキーワードで検索したとき、最初に出てくる2冊を、買ってみました。実は、じっくりと読むには値しないというのが、現時点での結論でして、極めて表面的な読み方しかしておりません。

 理由は簡単で、二冊とも、「文理融合が理想です。理系:コミュニケーションの練習をしなさい。文系:数学・物理に興味を持てるようになりなさい、というのが主張の本なのだ。これは無理筋だ」、としか読めなかったからです。

 これができるぐらいなら、最初から問題は何もないと思うのです。

 ツマラナイなら、新年早々、記事に書く必要はないと思いつつ、今後、なんらかの主張をするときのためのメモを作るつもりでこれを書きました。



1冊目

「理系バカと文系バカ」 
 竹内薫著・(構成)嵯峨野功一、PHP新書586、発売日: 2009/3/14

 まずは、著者の紹介から。

 1960年東京生まれ。猫好きの科学作家。東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院終了。理学博士。サイエンス・ライターとして、硬軟自在の執筆活動を展開。テレビのコメンテータ、ラジオのナビゲータとしても人気を博す。


第1章 こんなタイプが「理系バカ」「文系バカ」!?

 この本の最大の”売り”は、この章にある。文系バカと呼ばれる10の事例、および、理系バカと呼ばれる10の事例が上げられていて、それぞれに説明が付いていること。
 自己診断を含めて、ご披露してみたい。

文系バカと呼ばれる10の事例
(1)血液型診断や占いが気になって仕方がない。 筆者の自己診断:完全にNo。
(2)取扱説明書は困ったときにしか読まない。 自己診断:完全にYes。本来、取扱説明書が必要な機器などは、プロ用だけだと思うから。もっとも、最近買った、ソニーの学習リモコンは、コンセプトを理解するまでが大変で、取扱説明書を熟読してしまった。まあ、これもプロ用かもしれない。
(3)たいていのことは、「話せば分かる」と信じている」。 自己診断:Yes。実際には、決めつける人の意見を変えることはできないが、心のどこかに何かが残せると信じている。
(4)ダイエットのために「カロリーゼロ」のドリンクをガブ飲みしてしまう。 自己診断:完全にNo。
(5)アミノ酸、カルニチン、タウリンなどのカタカナ表示にすぐ飛びつく。 自己診断:完全にNo。
(6)「社会にでると因数分解なんて必要ないよね」と言ったことがある。 自己診断:Yes。実際、因数分解が役に立った経験がない。あれはクイズ。
(7)「インド式算数」を学ぶより、電卓を使えば良いと思っている。 自己診断:完全にYes。しかも、逆ポーランド式の電卓ソフトを愛用。
(8)何でも平均値で物事を判断してしまう。 自己診断:ほぼYes。一人あたりのデータは分かりやすいから。
(9)抗菌コートのトイレじゃないと入りたくない。 自己診断:完全にNo。
(10)物理学と聞いただけで、「難しくて分からない」と思ってしまう。 自己診断:ほぼNo。

 自己診断の結果は、Yesが5個、Noが5個。文系バカ度が50%

理系バカと呼ばれる10の事例
(1)できれば他人と深く関わらないで行きてゆきたい。 自己診断:完全にNo。
(2)新型、最新テクノロジーの商品を買うために徹夜してでもならぶ。 自己診断:徹夜は完全にNoだけど、通販で買えて、適切な値段であれば、買ってみたい。
(3)相手が関心のないことを延々と話す−女性との会話も下手。 自己診断:Noのつもり。
(4)独善的で、いつのまにか相手を怒らせている。 自己診断:No、と思う。
(5)「もっと分かりやすく説明して」、とよく言われる。 自己診断:No。
(6)わからないことは、何でもネットで検索してしまえ。 自己診断:かなりYes。
(7)感動するポイントが人とズレている。 自己診断:Noだと思う。
(8)文系より理系の方が人間として上だと信じている。 自己診断:No。文系、理系と人間としての上とは無関係。
(9)UFOや心霊現象について語ることは犯罪に近いと思う。 自己診断:No。それしか語れない人には同情する。
(10) 意外とオカルトにハマりやすい。 自己診断:全くNo

 自己診断の結果は、Yesが1個、Noが9個。理系バカ度10%

 とうことで、どちらかと言えば、文系バカ人間に近い結果でした。


第2章 理系と文系、どっちがトク?

 節のタイトルをいくつか選択すると、
 ●日本の首相は文系人間ばかり
 ●理系の職業ほど満足度は高い?
 ●文系エリートの限界
 ●メディアを握っているのは文系ばかりでいいのか?

 などの記述があって、どちらかと言えば、理系を押しているようにも思える。

 しかし、様々な議論はあるけれど、トクかどうかで人生を決めると碌なことはない。特に、トクかどうかを考えたとき、何歳まで予測してトクだと言えるのか。学生が就職をするとき、その時点で給料が高く、しばらくそれが維持できると思えるところがトクだと思うが普通。そして、それ選ぶのが普通だが、何年間見通せるのだろうか。

 研究室を卒業していった弟子達の人生を見ていると、卒業時に絶好調という企業に入った人々は満足度が低いように思う。


第3章 日本は理系人間が育ちにくいのか?

 ●激減する物理学専攻の学生
 ●物理学を敬遠する生物学者
 ●理科ばなれは子供だけの問題ではない
 ●科学コミュニケータの活躍の場所を
などなどの節がある。

 理科離れの節には、前回に記述した世界各国の基礎的知識の理解に関する情報が出ている。
http://www.yasuienv.net/HumSciApp.htm


第4章 「理系センス」がある人はどこが違うのか?

 ●微積分はなぜ必要か
 ●物理学と数学の違い
 ●「どうせ文系だから」と思わない
 ●環境問題に関する2つの疑問
などなどの節がある。

 どうみても、文系の人を文理融合型にできるような記述はない。「とにかく「科学」や「数学」に興味を持つことなのだ」、という言葉を読んで、「そうだ、そうだ」、というのは理系だけなのではないだろうか。

 「環境問題に関する2つの疑問」の節は、武田邦彦本のもろに影響を受けているようだ。「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」が2007年2月、その2が2007年の9月、その3が2008年10月に発行されている。

 一方、ゴア副大統領の「不都合な真実」もほぼ同時期で、2007年1月発行である。

 本書の記述だが、「ちなみに、温室効果ガスでもっとも温暖化が進むのは水蒸気だ。(中略)。それなのに、CO2だけがクローズアップされるのは、一つに絞った方が分かりやすいからだ」、とある。

 この著者は、今でもこのような文章を書くのだろうか。

 水蒸気の温暖化能が高いという話は事実ではある。しかし、次のような問題がある。

 まず、
(1)人間活動によって、水蒸気が増える訳ではない。すなわち、対策は不可能

(2)もし別の理由で気温が上昇すれば、海面からの水の蒸発量が増えるので、大気中の水蒸気は増える。その分温暖化は進む。

(3)水蒸気が増えれば、雲が増えて、地球の反射率が高くなるので、太陽エネルギーを反射する割合が増え、気温上昇を抑える。

 という訳で、水蒸気は重要であるが、これを単純に議論するのは難しい。(2)、(3)の効果のいずれが大きいのか、これは、なかなか難しい課題であって、現時点でも詳細は不明だと考えるべきだろう。

 水蒸気についての結論だが、(1)の「対策は不可能」、が決定的である。そのため、対策としては、二酸化炭素排出量を削減する以外に方法はない。すなわち、水蒸気削減の議論をしても仕方がないので、議論をしないのである。


第5章 文理融合センスを磨く5か条

その1:まずは聞き上手になる
その2:文系なのに科学書漬けになってみる
その3:理系なのにフィクションを楽しむ
その4:どんな情報も、まずは疑ってかかる
その5:気になったものは人に話してみる

 理系に対するアドバイスは、その1か。次にその3をやって、その5で仕上げか。これはありうるかもしれない。

 文系に対するアドバイスは、その2、その4、ぐらいか。「その2はない」と思う人にはあり得ないアドバイスである。

 その4も難しいのではないだろうか。文系型の主張の最大の特徴は、最初から答えがあることのように思えるからである。例として適当かどうかは分からないが、「東京新聞が反原発になっているのは、その方が販売部数を増やすことができたから」、が理由だと思うが、記者個人が反原発という結論が嫌でも、そう主張せざるを得ないと思うからである。

 さて、最終的な結論である。

 この本は、理系の人間によって書かれた本で、文理融合を理想としながら、理系にコミュニケーション能力を推奨しているだけの本である。しかも、コミュニケーションをどうやるか、についてほとんど適切なアドバイスが無い。



2冊目

文系?理系?―人生を豊かにするヒント
 志村 史夫 (著) (ちくまプリマー新書120) 発売日: 2009/10


 まずは、著者の紹介から。昭和23年生まれ。名古屋工業大学修士課程修了、名古屋大学工学博士(応用物理)。静岡理工科大学教授。著書は多数。なんと環境問題の著書もある。どうやら、竹内氏にも同様の傾向があるようだが、真性の温暖化懐疑論者らしい。


はじめに

 どうやら、文理芸融合がキーワードのようである。

第1章 なんのために勉強するのか

 その答えは、「ものごとを筋道を立てて考えることができるようになる」、だとしている。

 そして、文科系の人と理科系の人では、筋道の立て方が違うと主張しているのです。

 その説明は、次の通りである。

 「人文・社会科学と自然科学は、いずれも科学ではあるが、人文・社会科学の対象を考えれば、それによって導かれる結果・結論は、宇宙全体の観点からはもとより、地球(世界)的観点からも、普遍的にはなり得ず、その適応範囲の広さに違いはあっても、いずれにせよ、個別的であり、地域的なものにならざるを得ない」。

 これって正しいでしょうか。少なくとも、環境に関する本を書いた人の理解とは思えない。これでは、環境哲学などという学問領域は、成立しそうもない。

 さらに主張が続きます。

 「文化系の人の筋道の基盤や判断の基準が、時代や社会情勢、生活環境などによって変化、変動しうるということです。この変化や変動は、その時の気分で決めるという自分の行動を是認しがちになる」。

 これも、正しくないよう気がしませんか。

 「このため、自然科学においては、このような実在に対する実験や観測が重視され、それらで得た結果を客観的事実として認め、この自然を理解している」。

 「これに対して、理系の人はきちんと筋道を立てて考えることを、自然と自然科学から学ぶのです」、のだそうです。これができれば、苦労はしませんよね。

 「20世紀に地球レベルの環境問題が発生したのは、人間が地球上の物質とエネルギーを消費して文明を発達させ、物質的に豊かな生活を続けてきた結果のツケです」。この問題を解決するためには、「文化系の素養が不可欠」、だそうです。


第2章 数学、物理が苦手だから文系へ

 数学は面白い。ということで、ゼロの発明、自然現象と数式、数学は「外国語」の一種、など、歴史的、独自的な解釈と、物理の第一歩は感動すること、などなど、文系への誘い球が連発される。

 物理学入門の受講生の感想文が出ている。しかし、このような方法で物理が好きになった「文系」の学生はいたのだろうか。

 いつのまにか、本来、主題であったはずの「文理芸融合」が消えている。


第3章 ものの見え方と見方

 様々な実例で、興味深いと思われることが羅列されている。そして、最後の最後に考える脳を作るということの重要性が指摘されます。

 そして、結論は、本を読め、テレビを見るな。なぜなら、活字を読んで理解するには心の眼が必要だから。

 理系の知識の羅列になって、この章でも、「文理芸融合」の話がどこかに飛んでしまった。


第4章 つまらない勉強が面白くなる

 なんと日本史、世界史が面白いという話から始まるのです。

 ところが、その次で、二酸化炭素排出で地球が温暖化、という現代の常識を頭から否定しています。

 その後は、奈良の大仏、花火、二進法とデジタル、生物に学ぶ、擬態、本当は面白く楽しい微分積分、と話題が連なります。

 どう考えても、この本は、文系の人が「文理芸融合」になる方法論を記述しているとは思えないのです。理科系の大学の教授ですので、自分の担当する学生の興味を繋ぐための逸話の類を自分のためにメモしたものを素材にして、書いた本ではないか、と思われます。

 という訳で、最終的な感想は、「何か違う。理系的な知識があるということと、理系的な筋道を立てることができるということは同じではない」、でした。

 文系の筋道は、「普遍的にはなり得ず、その適応範囲の広さに違いはあっても、いずれにせよ、個別的であり、地域的なものにならざるを得ない」、という批判をもっと徹底的に追求してほしかったと思うのです。

 ものの筋道をどう立てるか、もともと理系の仕事というよりも、それは哲学者の専業だったのではないでしょうか。哲学者は、果たして、個別的・地域的だったのだろうか、と疑問符で頭が一杯になりました。




 さて、この二冊の本ですが、不思議なことに、両方共、理系、しかも物理系の出身者が書いたものでした。

 実は、もう一冊、すでに仕入れた本があります。これはやはり理系の、しかも大御所が書いた本です。

理系にあって、文系にない「シンプル思考法」 [単行本(ソフトカバー)] 和田 昭允 (著)です。

 和田先生はもともとは化学が専門だっと思うのですが、その後、東大理学物物理学科の教授、そして、生命現象(DNA)の物理、すなわち、生物物理学の創始者です。ひょっとすると、竹内薫氏は、和田先生の講義を受けたかもしれません。

 この本の書評もいずれの機会に。似たような経歴だと、似たような発想になるかどうか、それを検証してみたいと思います。



 再び、アマゾンを検索した結果、これから発注しようと思っている本が3冊あります。

文系も知って得する理系の法則(祥伝社新書318) [新書] 佐久 協 (著)

根っからの文系のためのシンプル数学発想術 [単行本(ソフトカバー)] 永野 裕之 (著)

文系のための理系読書術 (知のトレッキング叢書) [単行本(ソフトカバー)] 齋藤 孝 (著)



 先ほど、配送されてきました。

 これらの4冊から何かが得られることを期待して、今回は、ここで終了とします。

 それにしても、「理系のための文系の常識」といった本がないですねえ。なぜなのでしょう。どなたか書きませんか?