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    国連の気候行動サミット   09.29.2019
       
  何が行われ誰がどう発言したか  



 次のWebサイトに、9月23日に行われた気候行動サミットで何が行われ、誰がどのような発言をしたか、そのかなり詳細な記録が掲載されている。
 https://www.climatechangenews.com/2019/09/23/un-climate-action-summit-live/
 その内容をざっとご紹介してみたい。
 なお、プログラムはここにある。
 https://www.un.org/en/climatechange/assets/pdf/CAS_Draft_Agenda_20192009.pdf
 このプログラムによれば、17時40分に閉会の辞となっているが、実際には、19時20分から国連事務総長による閉会の辞があった。実に、1時間40分間以上の延長がなされたことになる。日本的な常識からはかけ離れているが、海外の会議は、かなりいい加減なところがある。特に、国連などで多くの国が参加する会議は、まあ、時間通りには進まない。

 結果として、日本人がなんらかの発言する機会は全くなかった。「小泉環境大臣が出席していたのに」、である。しかし、現実は厳しくて、発言の機会を与えられたのは、首相級のみだったのも事実なので、もし、日本がなんらかの発言をしたいのであれば、安倍首相が参加する以外に、方法は無かったものと思われる。

 このサミットの前日、小泉環境大臣が国連気候変動枠組み条約のクリスティアナ・フィゲレス前事務局長と同席して記者会見を行ったときに、「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」と発言したことになっている。このセクシーという言葉に、英語を知らない日本人記者が反発して、ガタガタ文句を言っているらしいが、その行為は、現在の日本人記者の知的レベル(外国語の)を示していて非常に恥ずかしい

 より正確と思われる報道によると、
 https://www.fnn.jp/posts/00048326HDK/201909261830_tomonorisato_HDK
 そもそも、フィゲレス前事務局長が「セクシー」と発言したことを、小泉環境大臣が引用したに過ぎなかったのだ。さらに言えば、日常的英語会話での「セクシー」は、昔はとにかく、最近では「非常に魅力的」、といった程度の意味しかないことを、日本の記者連中は知らなかったというのが現実のようだ。
 ところで、安倍首相が参加すれば、発言の機会はあったのだろうか。それもなんとも言えないが、個人的な判断としては、多分、与えられることは無かったと思っている。それは、今回の気候サミットにおける望ましい発言とは、その国が現時点でもっている目標値をさらに高度化するという覚悟の表明が行われる場合だけであって、現時点の日本ように、2030年目標である26%削減がありながら、実際に行っていることは、この目標すら、実現はほとんど不可能という状況では、ほぼ相手にされない。それに、石炭発電に対する現時点でのモラトリアム的な態度も、かなり問題にされてしまうだろう。
 この会議の成果には一つの謎があった。「77ヶ国が2050年でNet Zero Emissionを実現すると表明した」、という情報はあるのだが、その国がどこなのか、良く分からない状況であった。次のWebサイトをチェックすると、66ヶ国が2050年Net Zero Emissionのメッセージをだしているというサイトはあるのだが。
https://www.straitstimes.com/world/united-states/sixty-six-countries-vow-carbon-neutrality-by-2050-un
 ところが、このサイトを26日に再度チェックしてみると、ちゃんと77ヶ国という情報に変わっていた。すなわち、どうやら9月23日当日に、その覚悟を決めた国が11ヶ国あったということのようである。
 これからみても、”2050年にNet Zero Emissionを実現する”と言わないと、この会議での発言は認められなかった可能性が高い。日本が2050年80%削減を撤回し、Net Zero Emissionを言えるようになるのは、一体、いつになるのだろう。実は、これが大問題なのだ。それは、日本語に問題があるからである。
 2050年のNet Zero Emissionは、目標(=ターゲットTarget)ではない。そんな先の話は、ゴール(=Goal)にすぎないのである。ゴールであるということは、「未来のことだから確実に実現できるとは言えないが、現時点でそれを実現する強い意思がある」と表明すれば、それだけで十分なのである。ところが、日本人の場合、そんな発言をする人間は信頼されない。言行不一致の人間だと言われてしまう。  「国際社会では、ゴールとターゲットは全く違う」、という理解をしないかぎり、日本はいつまでたっても、世界標準の行動ができない。小泉環境大臣には、是非とも、そのような非日本的日本人になっていただきたい。「セクシー」の意味はお分かりのようだから簡単でしょ!!クリステルさんも隣におられる訳だし。



C先生:それでは、9月23日に国連で何が行われたか、それを逐一追いかけてみよう。詳細な記録があるので、助かるね。

A君:了解です。上記のサイトを見ていただきたいです。記事のトップが、最後の発言になっています。時間軸とは逆の順番です。

B君:やはり時間軸に合わせて記述してみよう。

A君:となると、プログラムと整合性を取りながら、記述するのが、よりリアルですね。それでは開始。

 
★プログラム
★10:00ET オープニング・セレモニー
 ★国連事務総長のグテレス氏による開会の辞。
 ★国連総長と若者の対話


B君:実際に行われたことと、その内容。

◆9:25ET(米国東部時間) アナウンスあり。スピーカーリストの変更の紹介。65ヶ国から代表が来ているとのこと。実は、100ヶ国が出席の意志を示した。

◆10:25ET 
 25分遅れで、国連事務総長のグテレス氏のオープニングがスタート
 「世界中で自然が狂暴化している」。しばらく前、バハマにいた。しかし、ハリケーンによる破壊は、"apocalyptic"であった。未来はこうなる。もしも我々が、今、行動を起こさなければ。
 このサミットは、交渉の場ではない。このサミットは気候行動サミットだ。多くの政府がここにいる。彼らは、今、真剣に対処していることを訴えるだろう。
 何事にもコストはある。しかし、最大のコストは、何もしないことによって生ずる。最大のコストは、化石燃料産業を助成することだ。税金による石炭、石油、天然ガス産業への支援をやめよう。
 最近の科学的な情報によれば、2030年までにCOを45%削減、そして、2050年にCO排出ゼロにするしかない。
 来年のCOP26でさらに進もう。もし、全員が動けば、誰も取り残されることはない」。

◆10:35ET
 グレタ・トゥーンベリさんの講演
 テレビでも放映されたので、省略。いつものように、怒りに満ちた講演だった。

★プログラム
★10:40
 ニュージーランド首相 Ms.Jacinda Ardern
 マーシャル諸島大統領 Dr.Hilda C. Heine
 インド首相 Mr.Narendra Modi
 ドイツ首相 Mrs.Angela Merkel

◆10:50 ニュージーランド首相の演説
 「農業セクターをグリーン化することを約束。恐らく、農機具による化石燃料使用をゼロに」。
◆マーシャル諸島大統領 Dr.Hilda C. Heineの演説
 「パリ協定での削減目標を拡大し、2050年にはNet Zero Emissionとする」。
 「15ヶ国のグループが同様にする。その国とは、マーシャル諸島、ベリーズ、コスタリカ、デンマーク、フィジー、グレナダ、ルクセンブルグ、モナコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、セントルシア、スウェーデン、スイス、バヌアツ」。
◆11:00
◆インドのモディ首相の演説
 「再生可能エネルギーを拡大し、450GWを導入する」。しかし、石炭については、語らなかった。
◆11:08
◆メルケル首相の演説
 「この9月20日金曜日には、過去最大のデモがあった。首相として対応する以外にない。
 *2050年にカーボンニュートラルにする。
 *2022年に原発をゼロに
 *2038年に石炭火力をゼロに
 *炭素価格を全面的に導入」

★プログラム
★10:55 炭素中立社会の実現
   チリ大統領、
   フィンランド大統領、
   Mr.マイケル・ブルームバーグ、
   モントリオール市長メイヤー氏、
   Allianz SE:CEO オリバー・ベーテ氏

◆11:15 チリ大統領。「ブラジル大統領が引き受けなかった12月の気候対話をチリが引き受ける。チリで行われるCOP25で、意欲的な要求をする。森林と海洋保全がキーワード」。
◆11:20 フィンランド大統領。「2033年までに炭素中立を実現。その直後からカーボン・ネガティブにする。森林がその主役となる」。
◆11:24 ECのラファエル・マルロ氏、「European Commissionとして、何も新しいアナウンスは用意していない。新しいだけでは無意味だから。現時点で法律をどう作るかを議論している。それについては、EU CouncilのTusk氏が本日の午後に説明するだろう」。

★プログラム 
★11:10 気候変動防止のためのファイナンス
 フランス大統領マクロン氏、
 カタールのアルタニ氏、
 ジャマイカ首相ホルネス氏、

◆11:40 マクロン大統領は、「炭素離脱に加え、『森林破壊』を輸入すべきではないと発言。炭素排出量の多いインフラに投資すべきではない。”Action, Action, Action”。若者が金曜日を抗議のためだけに使うことを放置するわけにはいかない」。
◆11:50 ジャマイカのホルネス首相は、「金融機関のすべてが気候リスクに対処すべき。しかし、50ほどの銀行が気候変動に貢献する投資に良い評価をしなかった」。

★プログラム
★11:20 未来をCoalからCleanへ
 スロバキア大統領 Caputova女史
 クリーンエア基金 Burston女史
 Orsted CEO Poulsen氏
 Iberdrola CEO Galan氏
 コスタリカ大統領 Quesada氏
 インドネシア副大統領 Kalla氏

 中国主席 Xi Jinping=習近平氏

◆11:50 スロバキア大統領のCaputova氏:「スロバキアは自国の炭鉱を何も考えずに閉鎖することを決断した。2023年に炭鉱への補助金を終える。炭鉱関係者が新しい仕事を見つけることは大きなチャレンジだが、2050年までに、炭素中立の国にする」。
◆12:20 インドネシア Kalla氏。「グレタさんの言う通り。インドネシアは今、気候の危機にある。森林火災がひどくなっている。インドネシアは、化石燃料への補助金をカットする」。
◆12:25 中国習主席の演説は中身が無かった。中国の現在の目標値は、GDPあたりのCO2排出量を減らすという弱いものだから当然だと思われる。

★プログラムと実際の進行がこのあたりから全く無関係になる。ほとんどグジャグジャ状態。
◆13:10 ゼロエミッション船舶
 Maerskという運輸企業は、「2030年までに、ゼロエミッション船舶を使用すると宣言」。
◆13:33 Mark Carney氏(Bank of England, Governer)は、「多くの企業がどのような企業であるか。緑を50種の色調に分けるぐらいのことをしないと、その企業が気候変動にどう対処する気なのか、区別できない状況」。
◆14:00 グレタさんと15人の子供が、自分たちの権利をもっと守るようにと、ドイツ、フランス、ブラジル、アルゼンチン、そして、トルコに対して主張した。
◆14:45 Mia Amor Mottley(国連のモデレーター)に制止されながらも、バルバドスの首相は、「まだ1℃の温暖化なのに、島嶼諸国には、壊滅的な損害を与えていると主張。2℃までに抑えるという選択肢は、もはやテーブルの上から除去すべきで、最低でも1.5℃までだ」。
◆15:10 Leo Varadkarの発言。「アイルランドは、新しい石油の探索をしない方針にするだろう。しかし、個人的なアドバイザー達は、天然ガスを過度的な燃料として使うべきとしている」。
◆15:16 ロシアがパリ協定の批准したことを発表
◆15:30 トルコ大統領は、「気候変動は地球レベルの問題で、国境はない。イスタンブールの熱源は天然ガスにする」。しかし、一方で、トルコが大量の石炭を使っていることも事実。
◆15:45 Coloe Farand(レポーター)は、「世界のカメラがメインステージでの発表に注視しているが、混乱した参加者、レポータなどは、UNビルの曲がりくねった廊下で自分たちの歩くべき道を賢明に探していた」。
◆15:50 11時頃、トランプ大統領がこのサミットに突然登場。そして、インドのモディ首相の発言を聞いた。そして、メルケル首相の発言も聞いた。そして、消えたとの情報。
◆16:10 ギリシャの首相であるMitsotakis氏は、「亜炭のプラントを2028年までに停止する」。
◆16:40 韓国の文大統領は、「パリ協定を受け入れる方針だ。排出権取引を認め、石炭プラントを閉鎖し、水素シナリオを作成する。Green Climate Fundへの出資を$200mに倍増する」。
◆17:05 ビル・ゲイツ氏は、気候変動への適応策について述べた。「$750mを小規模な食料生産農家の支援に出資する。ただし、半分は、オランダ、EU、スウェーデン、英国、ドイツと世界銀行が出資」。
◆17:30 ブータンのLotay Tshering大統領は、「LDCsを率いているが、47のLDCsが2050年までにNet Zero Emissionを実現すると述べた。かつ、2020年までにパリ協定での削減を拡大する。しかし、その資金は富裕国からの基金を受け取ることによって、補う予定」。
◆18:00 EUのTusk大統領は、「世界の気候変動の脅威に対する戦いをリードすると発言。2050年でのNet Zero Emissionは、すでにEUメンバーでは普通のことになったから」。
◆19:00 英国のBoris Johnson首相は、もし、Brexitの選挙に勝てば、2020 UN tasksをホストする。英国は、2050年でのNet Zero Targetを持っている。むこう5年で、気候変動への支援額を倍増する。
◆19:20 Guerres国連事務総長は、まだ先は長いと発言。「決まり文句ではなく、アクションプランとしなければならない。77の国が、2050年でのNet Zero Emissionを目指すことを表明した。そして、70の国が、2020年までに、パリ協定への制約を強化すると表明した。さらに多くの国からの対応強化が必要である。まだ多くの石炭発電所が作られようとしている。これは、人類に対する脅威である。2020年以降に石炭発電所を建設すべきではない」。

以上


C先生、A君、B君:
 現時点における日本の気候変動対策の問題点と思われることをまとめてみると、以下の通り。
(1)世界の状況は、現時点で国政に関わる議員たちが、気候変動問題に対して、どのような意識を持っているのか。各人が自己の責任で、見解を明らかにすべき段階になっている。日本でもそうなるべきだ。
(2)その他の重要項目1:「ゴール」を語るという文化が無い日本(実は、公式文書で使用することもできない? 多分!)が、どのような対応をとれるのか。このゴールという言語が使用できない日本語の状況を変えなければ、日本の首相には、未来永劫、このようなサミットで発言の機会がないだろう。
(3)日本人記者の英語のレベルも落ちているように思えること。「もっとセクシーな記者」になって欲しい