| | 国連機関の危機管理教材 05.15.2005 |
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| このところ日本では様々な事故が多い。JR西日本、JALなどなど、これまで余り事故が無かったところで、重大なもの軽微なものが入り混じって起きている。 JR西日本の事故は、人災そのものである。運転手の個人的な責任が大きいのは勿論だが、JR西日本の人事管理、ダイヤ管理などに問題があったようだ。 このような事態を改善するためには、北側大臣が言うように、新しいATSを導入することも重要ではあるだろう。しかし、いくら機械を導入しても事故は無くならない。人間には必ずミスがあるからである。ミスをするのは当然、しかし、そのミスが事故に繋がらなければ良いのである。すなわち、事故には、人的な要因が非常に大きい。 少なくとも現代の都会人は、リスク管理という言葉を忘れている。余りにも安全な日本に慣れすぎている。周囲から完全に隔絶した自分。相手が注意をしてくれるからそれでも危険は少ない。そんな人間が多すぎる。どうも根本的な教育からやり直さないと駄目なのではないか。 一方、国連機関に所属すると、セキュリティーに関わる事柄を、e−ラーニングで自習しなければならない。日本人が忘れてしまったような考え方が、数多く含まれている。 今回、その紹介をしながら、日本という国でどう対策をとるべきなのか、要は再教育だと思うのだが、それを考えてみたい。 なお、今回、参考にしているものは、UNHCRとUNSECOORDが共同で作成したCD−ROMである。 C先生:JR西日本のニュースを見ると、毎回すごく腹が立った。勿論、JR西日本の非常識に対してだ。それと同時に、事故の当日、ボーリングをやっていた、ゴルフをやっていた、国会議員と宴会をやっていた、などなど、非常識な行動が次々と明らかになる。これはJR西日本の体質なのだから当然のことなのだが、それをNHKや朝日新聞が、他人事のように、ニュースのトップで取り上げる。 A君:NHK自体もなにか妙な体質があることを棚に上げて。 B君:報道というのは、それが許される。しかし、こんなニュースをトップで流されては、なんという会社なんだ、なんという国なのだ、と暗然たる思い。もっと何か積極的な対策なり、積極的な提案なりをニュースで流すべきだ。 C先生:JR西日本だけがそんな体質の人間からなっているのなら、他の交通機関は安全だ。しかし、JALのケースを見ると、どうも日本全体がそんな体質の人間からできているような気がしてならない。 A君:確かに昔気質の人から見ると、考えられないような事故が起きる。工場などで火災が増えているのもその一つの現れでしょう。 B君:ブリジストン、マツダ、色々と火災が増えている。 C先生:大分前になるが、原子力発電所を何箇所か見学に行った。そこには、かなり完璧とも思える安全装置があるが、しかし、それでも事故の確率はゼロにはならない。なぜならば、人間にミス、誤解、判断間違いはつきものだからだ。 A君:機械が正しく判断したのに、その解釈をする人が間違ったら、何にもならない。 B君:チェルノブイリなどもそうだったようだが、単一のミスでは、普通は事故にはならない。輻輳的な判断ミスが重なると、いくら安全装置があっても駄目だ。 C先生:話を元に戻して、国連機関用のセキュリティーの教材だが、本来は、フィールドでの危機管理教本のようなもの。 A君:実際のところ、イラクで国連の建物が爆破されて、死者多数でした。 B君:しかし、それだけではないだろう。日常的に、危険にさらされている職務が多い。武装解除とか、難民救済とか、食糧援助とか。 C先生:その通りだ。そこでは色々なことが想定されている。例えば、地雷が存在している可能性のある地域での運転の仕方。徒歩で、そんな地域を通過するときの方法。 A君:ゲリラに突然攻撃されるとか。誘拐されるとか。 C先生:それも当然だが、どうも、自宅の近くで襲われる例が最も多いらしい。毎日同じ時間に同じ経路で帰るのは危険だ、とされている。 A君:昨日、無事だったということは、何の情報にもならない。昨日はたまたま無事だったに過ぎない。 B君:日本だって、昨日、車道を歩いていて車に轢かれなかったのは、偶然に過ぎない。しかし、今の日本だと、多くの人が昨日は大丈夫だったから、今日も大丈夫だろうという考え方になっている。 C先生:話を戻すが住む地域選び方、ガードを雇った場合に、鍵を渡すべきか渡さざるべきか。実に細かい。答えは、鍵を複数付けて、昼間用の鍵のみを渡す。 A君:誘拐された場合の対処法なども、当然ありますよね。 C先生:あるのだけれど、やっては駄目だということはあっても、絶対これだ、という答えは無い。毎回毎回状況は違う。 B君:それも当然。日本のように、昨日の続きが今日だという国は、世界にそうはない。 A君:そうだとすると、個人の判断力・対応力を鍛えるしか無いことになりますね。 C先生:自己のセキュリティー確保のためにもっとも重要なことが、「自らの周囲の状況を完璧に把握することだ」という。 A君:最近の日本人には、この訓練が行われていないように思える。 B君:どちらかと言えば、日本だと周囲の状況が、向こうから自分に合わせてくれると思っている人間が増えた。 A君:携帯電話のメールを読みながら歩道を歩くのも危険ですが、なんと車道や横断歩道を歩いている人間がいる。これなど論外。 C先生:日本では、車が止まってくれるのが当たり前。しかし、止まらない場合だってあるのだけどね。 A君:自らの周囲の状況を完璧に把握するには、いくつかの要素を満たす必要が有りそうですね。 B君:その人間の素質と普段からの訓練に関わることだ。 C先生:この教材では、5つの要素が必須だとしている。 A君:さて、なんと訳すべきか。 B君:とても、今の日本人にこんな訓練が行われているとは思えない。JR西日本だが、運転手に対して、どんな訓練をしていたのだろうか。 A君:遅れると、なにか罰のような訓練を課していたようですよ。 B君:それがそもそもの間違い。 C先生:この国連の教材にしばしば出てくるのだが、もっとも重要なことは、自分と仲間の命を守ること。他のことが守れても命を失ったら、何にもならない。だからといって、逃げ出すのが最善とは限らないので難しいところだが。 A君:「検知感度を高く」は当然ですが、最近の人は、周囲を見回すことが少ないと思うのですよ。 B君:そうだ。相手が自分を認識してくれて、自動的に危機が避けられると考えているのだろう。 C先生:自分だけが自分を守れることをしっかりと確認する必要がある。この教材には、ポータブルオーディオは、徒歩あるいは車の運転時には禁止だと書かれている。携帯メールの話は出てこないのだが、それは、危険な赴任地ではそんな可能性がないのだろう。 A君:Awareness:「充分な備えと学習」が必要なのは、理解できますね。 B君:危機について何も考えず、学習しないのが現代日本人の性向になっている。他人がやっているから大丈夫だろう、と単純に考える。やはり、世の中にはルールがある。ルールは守るのがお互いの安全性を確保する最低限の条件。 A君:また、自転車の右側の車道通行の話を言っているようだ。 B君:ばれたかな。警察官が取り締まらないのはけしからん。放置していたら、なんとなく許容されてしまう。 A君:警察でも、危機管理能力が失われつつあるように思いますね。もう一度考え直して貰わないと。 A君:Observation:「充分な観察」。これは当然。感度を高くもつと同時に、「充分な観察」をするという明確な意識をもって行動する。 B君:なんだか、「充分な観察」をすることが格好が悪いことのような評価になってしまったように思うのだ。 C先生:確かにそんな雰囲気もある。やはり、根本的な変革が必要のようだ。 A君:このような教育は何時から始めるべきなのでしょうね。 B君:当然幼児期。歩きだしたらすぐ。家庭教育が重要。 B君:いくら「サスマタ」を設置しても、人の訓練をしないと駄目だろう。 A君:基本的に人を訓練するという考え方が、現在の日本には欠けているような気がしますね。 B君:訓練をすると、何か画一的な人間を作ってしまうという観念があるのではないか。 A君:次のPatience:「忍耐、我慢、緻密」だって、やはり訓練しないと身に付かない。特に幼いころからの訓練が重要なのではないですか。 C先生:それこそ、家庭教育が重要。普通だと、Patience:「忍耐、我慢、緻密」などという言葉は、死語になっているのではないか。 A君:最後のOpenness:「柔軟性」ですが、本来の意味は、秘密にしないで、なんでも情報を出すということなのかもしれませんが。ここでは、それを含めて柔軟性と訳したい。 B君:意訳にすぎる可能性もあるが。 C先生:些細なことにとらわれて、本来もっと重要なことを忘れることが最悪だ。JR西日本の運転手にしても、遅れを取り戻したいという思いで、スピードを出しすぎたとしたら、より些細なことにこだわりすぎたといえる。もっと柔軟に考えることが重要だとも言えるだろう。 A君:しかし、JR西日本の体質からすれば、柔軟に考えることはできなかったのでしょう。日勤訓練なる変なものをやらされて。 B君:余りにも犠牲が大きかったが、このぐらいのことがないと、JR西日本は変わらなかったかもしれない。これを教訓として、他のすべての企業が変わる必要がある。変なストレスを運転手に掛けることが、危険性を増大しているという考え方がない。 A君:いずれにしても、この5つの要素は、重要な意味がありそう。 B君:これらに注意をすることで、周囲の把握能力が上がることは確実だろう。 C先生:しかし、それだけでは十分ではない。それに加えて、危険と対処することは、ストレスである。そして、ストレスを感じることは、しばしばリスクへの対処能力を失わせる。どこまで、自分の能力が低下しているか、を自覚する必要があるとしている。 A君:周囲の完璧な把握だけではなくて、自分自身の状況と能力を把握していないと、対処が不可能ということですか。まあ、言われてみれば、当然だけど。 C先生:しかも、周囲の完璧な状況把握は、単に、怪しい人がいるとか、武器を持っている人間が居るとか、言ったことだけではない。もっと広い範囲ですなわち、 B君:これは、いささか事前学習が必要といったことのようだ。 A君:国連機関でも、援助系の機関は、危険な地域に赴任することが多いのでしょうからね。 C先生:その通り。しかし、JR西日本のようなケースを想定すると、企業についても、やはり、同じようなことが言えないか。 A君:全く、その通りですね。経営者の態度が高圧的で、運転手にストレスが掛かって今回の事態を招いたとも言えそう。となると、それぞれの企業について、状況を把握しなおすことが重要。 B君:ATSを付けることは、(4)Environmentalの向上には貢献できそうだ。しかし、それ以外の3つの要素も改善しないと。 C先生:企業のモラルの影響が大きいようだ。それには、会社のトップのPoliticalな問題が影響する。 A君:経営者が余りにも儲け主義だと、やはり社員のモラルも下がる。 C先生:話を国連の場合に戻す。赴任地域が本当に危険になると、それこそそこから撤退をしなければならないことにもなる。危険性も何段階かに分けて、対処する必要がある。 A君:本当に危険な状況になったら、撤退せよという命令も届かないかもしれないですね。 B君:最終的には、個人で判断するしかない。となると、個人の能力が個人の安全を決める。 C先生:個人の能力に含まれるかもしれないが、危険な地域に赴任することに決まった瞬間からの準備が重要。この教材には、遺言を用意するように、といった注意まで書かれている。 A君:またまた、これを企業や団体などに当てはめることが可能なのではないでしょうか。 B君:それぞれの企業や団体がどのような状況にあるのか、診断をして、数段階に評価を行い、対策が必要であるのは事実だろう。 A君:第五番目のEvacuation段階にあるようだったら、その企業は撤退をして貰うとか。 C先生:JR西日本は、どうも、第四段階ぐらいにはあったような気がする。しかも、経営者がそれに気づいていなかった。 A君:やはり、競争激烈すぎて、儲け第一主義に走り、自らの状況を把握することができなかったのでしょうね。 B君:日本全体にしても、どうも第三番目のRelocation段階ぐらいには来ているような気がする。そろそろ、様々な事柄を再配置して、やり直さないと。 C先生:読者諸氏。ご自分の企業や団体をこのような目で見直すことを是非お奨め。さて、国連大学はどうなんだろう。結構、危機的状況に有るような気もする。財政的に見ての話だが。
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