| ビタミン家電の評価 03.19.2005 追加03.21 ![]() |
| マイナスイオン家電がやっと下火になったと思ったら、今度は、ビタミン家電だと。今回は、これを検証してみたい。 マイナスイオンについてもそうだったし、除菌イオンについても似たような状況だったのだが、家電メーカーなどが作る「怪しい製品」は、メディアによって持ち上げれることはあっても、批判の対象にはならない構造になっている。なぜならば、家電メーカーなどは、新聞・テレビの有力スポンサーであり、もしも不利益なことを報道したら、そのメーカーから広告が来なくなってしまうからである。大阪系のメーカーは、特に反撃がきついと聞く。 メディアがこのような怪しい製品を排除できるとしたら、それは唯一、製品発表会あるいは報道資料が出たときである。こんな製品はおかしい、と記者が一斉に叫べばよいのである。しかし、そこまでの技術リテラシーがある記者はむしろ例外的である。なぜならば、記者の多くは文系大学出身だからである。 「今月の環境」に記述したように、「活水器」なるものが東京都から注意を受けた。ところが、今回のような家電製品に対しては、東京都も恐らく何も言えないだろうし、言わないだろう。その理由は、消費者が訴えないからである。 多くの科学者には、その「怪しさ」は分かりきったことではあるのだが、誰も発言してくれない。ということで、本HPで取り上げるぐらいしか、方法が無いのが現状。 さて、今回のビタミン家電であるが、少々調べてみるとマイナスイオン家電との差は大きい。それは、「ビタミン」と表現されていても、その原理がかなり違うことである。個別に一つ一つ検証をする必要がある。すなわち、全部がインチキということでもなさそうである。 C先生:ビタミン家電と呼ばれるジャンルの製品が増えている。これを今日は検証してみよう。 A君:最近新聞にもこの言葉を使った報道がされていますからね。例えば、 毎日新聞 日経産業新聞 B君:毎度のことではあるが、新聞が報道することが正しいとは限らない。やはり、掘り下げる力が無い。あるいは、メーカー情報側からの提供される情報にある程度従わなければならないという宿命があるのだ。何といっても、メーカーはスポンサーだから。 A君:どんな製品があるか、日経産業新聞からリストを借りまして、それに多少の追加をしました。 ・光合成LEDを使い野菜のビタミンCを増やす冷蔵庫(三菱電機) B君:今回、対象にすべき製品は、もともと野菜に含まれているビタミンの破壊量が少ない調理法などを可能にするといった「消極的な家電製品」ではなくて、もっと「積極的にビタミンを取り扱う製品」だ。 A君:「残存率を高めた」や「減少を抑える」を謳うような製品は、今回は抜くべきだ、ということですか。 C先生:それが良いだろう。より積極的に「ビタミンを増やす、放出する。。。。。」といった主張をしているものに限ろう。 A君:となると、リストが減りますね。 ・光合成LEDを使い野菜のビタミンCを増やす冷蔵庫(三菱電機) B君:2番目と3番目は出すものが多少違っても同じものだ。結局、3ジャンルか。 C先生:それでは、たまたま並んだこの順番で検討してみよう。 A君:原理は比較的簡単ですね。最近、ビルの地下で野菜を栽培するといったことが行われていますが、そこでも使われている光源であるLEDを冷蔵庫の野菜室に付けて、それで野菜を照らして、光合成が冷蔵庫の中の野菜にもできるようにした。簡単に言えば、それだけ。 B君:もう少々細かく見れば、野菜室内の水分を制御しているようでもあるが、確かに、それだけとも言える。 A君:光合成は、 ですから、二酸化炭素と水と光の3者が共存しないと駄目ということになります。 B君:水は、野菜室の気密を良くすれば、もともと野菜などは水分のようなものだから、存在している。二酸化炭素は、野菜が呼吸することで出る。だから、光を用意すれば、この光合成が進行することになる。 A君:ビタミンCはどうして増えるのでしょうか。まあ、暗黒の野菜室に置かれた野菜は、呼吸をして、さらに、脱水状態になって良いことは無くて、言わば仮死状態ですが、この冷蔵庫ですと光合成ができる状態に置かれているということは、生きているということなのでしょうから。 B君:テストはこんなことをやっているようだ。 A君:まあ、ブロッコリーは生きているということでしょうね。 B君:生きているということは、野菜の鮮度を保てるということでもある。ビタミンCがどうのこうのといっても、量が倍も違う訳ではない。むしろ、長期間野菜の保存ができるということが、メリットなのではないか。 A君:レタスを買ったけど、冷蔵庫の中で溶けかかっていた、などということが無くなれば、それはそれで環境負荷が下がる。 B君:勿論だ。しかし、普通の冷蔵庫でも腐らせてはいけない。 C先生:黙って議論を聞いていたが、諸君らは、この三菱のLED付きの冷蔵庫を評価しているようだな。 A君:LEDの消費電力もそう大したものではないですし、まあ、野菜が長持ちすればよいのでは、と思いますね。 B君:過去、なぜ無かったのだろうか、という感覚の商品なので、発想の勝利とも言えるのではないか。 C先生:先日、この冷蔵庫が欲しいか、と女性陣に聞いてみたら、ちょっと興味ありという人が多かった。となると、まずまず成功作かもしれない。 A君:LEDの懐中電灯などでテストしてみたいものですね。 B君:密閉性野菜容器による水分の制御などができていないと、利かないのではないか。 C先生:まあ、この製品は、ビタミン家電としてまじめに考えているものだといえるだろう。 B君:いや、むしろ「なんでこれまで気がつかなかったので賞」ではないか。 C先生:まあ、合格か。次に行こう。次は、 −−−−ビタミンCを放出する空気清浄機−−−− A君:こちらも原理はものすごく簡単。ビタミンC、あるいは、薬品名で言えばアスコルビン酸ナトリウムを装置に組み込んで、僅かながら蒸発させ室内空気中に放出する方法。 B君:効き目があると主張しているのは、概ね以下の通り。 A君:もっと正確に言えば、メーカーは、こんな表現ですね。 B君:その「言われています」、という表現が一つのキーワード。自分では責任は取らない、という態度。誰かが言っていれば良いのだから。 A君:効用に関するメーカーの表現の中に、「言われています」というキーワードがあったら、それはその後で、担当者が「舌」を出している、と思って良い。 B君:さらに極言すれば、消費者を騙そうという意図があるかどうか、この言葉の有無が判定の基準になりうる。 C先生:ということは、これらの製品をA君B君は信用していない、ということだ。もう少々、機器のメカニズムなども解析し、そして、信用ならない部分を抜き出してくれ。 A君:まず、富士通ゼネラルの製品から。 B君:185nmの紫外線は脱臭ビームだそうだ。これは何を意味するかといえば、紫外線が空気中の酸素をラジカルにして、そのラジカルがオゾンか何かを作る。オゾンは活性酸素の代表格だが、これが分子をアタックし、分解する。すなわち、脱臭。 A君:活性酸素がお肌に悪い、だからそれを中和するビタミンCが必要だ、というのがメーカーの主張なんですが、実は、自分自身が活性酸素を出している。ビタミンCを出すのは、罪滅ぼしなんでしょうか。 B君:よくよくみたら、この製品、プラズマ除菌ユニットなるものも持っていて、これはマイナスイオン発生装置ではないか。 A君:本当だ。しかも、微弱オゾンを出すと書いてある。オゾンは活性酸素の一種と書くべきだと思うのですが、書いてないですね。さすがに。 B君:マッチポンプという言葉があるが、まさに、それを具現しているのではないか。 A君:マッチポンプという言葉は、最近は死語なのではないですか。分からないかたは、ネットで調べてもらえば良いですか。 B君:広辞苑によれば、以下の通り。「(和製語。マッチで火をつける一方、ポンプで消火する意)意図的に自分で問題を起こしておいて身分でもみ消すこと。また、そうして不当な利益を得る人。1966年の政界の不正事件で広まる」。 A君:不当な利益を得る人か。この製品は、それに相当するかもしれない。 B君:これが本当ならば、ビタミンCは、本機が自ら出す活性酸素を消すことができる以上の量が出ているのだろうか。 A君:そのあたりを、Webページから読み取ることができる範囲で検討すると、グラフがあって、10時間でビタミンCを0.4mg放出できることになっています。アスコルビン酸の分子量が、約200ですから、モル数に直すと2×10^−7モル/時間ぐらいになりますね。 B君:なんだ少ない量だな。C1000タケダだと、1粒で1000mg。関係無かった。さて臭うかどうかのオゾン量が0.01ppm。空気清浄機の風量が分かるか。 A君:8畳間なら12分で効果が出ると書いてあるだけ。JEM1467で測定と書いてありますね。まあ、強で運転して4立米/分ぐらいでは。 B君:殺菌に0.01ppm必要だったと仮定しようか。1時間で240立米の空気が通る。これは、ざっと計算して、オゾンの発生量は1×10^−4モル/時間ぐらいか。 A君:確かに。どうも、放出するビタミンCの量よりも、発生するオゾンのモル数の方がかなり多いような気がしますね。 B君:となるとマッチポンプを試みているが、ポンプの能力が足らない。実効的に活性酸素を出しているか。もっとも、オゾンも分解速度が速いので、フィルターあたりで分解されている可能性もあるが。 C先生:この空気清浄機についてだが、本当なら面白い結論だ。殺菌だ、除菌だといって健康に良さそうなことを言いつつ、自ら健康に悪いことを認めている活性酸素を出している。それを多少でも打ち消すべくビタミンCを出しているらしいが、量的には、足らない。やはりこれは欺瞞的製品だろうな。 A君:B君の発想を奪って、「マッチポンプで賞」。これ以外に無し。 B君:「二枚舌で賞」。活性酸素が体に悪い。だからビタミンCが必要。しかし、どうも自分で出している活性酸素のすべてを消すことも出来ていない。 A君:なるほど。象印に行きますか。 B君:この商品の怪しい写真は、バラが「ビタミンCとカテキン」のWパワーで96時間後にもイキイキしている、というものだ。これはどうだろうか。 A君:分からないですね。どのぐらい本当なのか。だいたい、なぜそうなるのか理由が書いてない。 B君:活性酸素をどのぐらい除去できるのか。この商品では、「活性酸素(オゾン)」という表記になっている。富士通ゼネラルに見せたいぐらいだ。 A君:ビタミンCだけでなく、カテキンもあるので、なんとも比較困難ですが、富士通ゼネラルのものよりは多いような。 B君:しかし待てよ。よくよく読むと、お部屋の空気をリフレッシュ「マイナスイオンを1万個/cm3発生」となっている。このマイナスイオン発生装置は、かなりのオゾンを出す。 A君:なんだ同じだ。やはり、マイナスイオンを付けないと売れないと思っているのでしょうね。別のスイッチを付けて、マイナスイオンをオン・オフできるようになっているようですが。 B君:この機種のWebでは、注意書きがあって、「脱臭性能はご使用により低下します」と書いてある。脱臭はどのような機構でやっているのだ。 A君:それも謎なのですが、どうも脱臭フィルターというものが組み込まれているようです。ところが、その実体が何か、さっぱり分からない。 B君:謎が多い機種は、やはり少々怪しい。 A君:良く、健康器具の場合、「効果は個人によって異なります」、と書いてある場合が多いですが、あれも、ニセモノの証明のようなものですよね。 B君:まさにその通り。最近、ソースネクストというところからソフトをときどき買うのだけど、そのにどうしても許せない商品があるのだ。ソフトでなくて、チタンネックレス。 B君:その最後のところに、 という証明されていない効用の記述に加え、 「※ 効果には個人差があります」 という記述があって、まさに、A君の言う怪しい製品の条件を100%満たす。 A君:大体、チタンなるものは、生体への影響が少ない金属として知られていて、毒でないものの代表。「毒でないものは、薬にもならない」、のが常識。すなわち、「毒にも薬にもならない」のがチタン。 B君:実は、これに加え、インチキ見破りには絶対的な条件があるのだ。それが「経験者談があるかどうか」。 A君:そうそう。 B君:このチタンネックレスだが、ソースネクストのページに、 A君:この製品、120%インチキですね。 C先生:話がずれたぞ。 A君:はいはい。チタンネックレスは「純正インチキ商品」です。それでは、蛍光灯に行きます。 B君:その前に、象印の空気清浄機の評価。「マイナスイオンで本性曝露で賞」 A君:「説明不十分で賞」 −−−−NECライティングの蛍光灯「太陽の恵み ビタミンDay」−−−− A君:これは、従来よりも短い波長の紫外線を出して、ビタミンDの体内合成量を増やそうというもの。 B君:Webをみても、どこにもその光が紫外線だと書いてない。「人間は太陽光を浴びることで体内でビタミンDを生成するが、その機能をもつ波長を従来品より増やした」、となっている。 A君:隠していますね。紫外線であることを。 A君:紫外線には、波長によって呼び名がありますよね。 以下、http://www2.health.ne.jp/library/5000/w5000135.htmlより引用 長波長(UVA):
321〜400nmの波長を持つもの。太陽紫外線のうち、 約9割を占める。UVAを浴びた後の日焼けはそれほど皮膚が赤くならず、 あとで黒っぽい色素沈着が起こり、その状態をサンタンと呼ぶ。
シミやシワの原因をつくる。 B君:皮膚がんの原因にもなる、いわゆる悪者紫外線B波の波長域を健康線と言い換えているのが、このNECライティング。 A君:この嘘は、なかなかのものですね。 B君:ただ、大分前のことだが、日焼けは健康に良いといわれていた時代もある。現時点では、B波の紫外線は皮膚がんの元だし、A波だって、お肌の老化の原因だから、なるべく紫外線を浴びないようにしようというのがご時勢。 A君:それではビタミンD3が不足するのか。いやいや、そんなことは無いのです。人間に必要な紫外線の量は、こんなもののようです。 http://www.richbone.com/recp/cal/main/hifu.htm B君:表現の最後が「言われています」であるのが気になるが。 C先生:そろそろ、この蛍光灯の評価をしよう。 A君:「今昔すり替えで賞」。昔の健康線は、今や皮膚がん線なので。 B君:「寝たきり老人だけで賞」。外出が全くできない寝たきり老人にのみ必要だから。 C先生:なるほど。これで終わりか。以上、まとめて見るか。 A君:次のようになります。 (1)三菱電機の光合成LEDによるビタミンC冷蔵庫 評価:「ニューアイディアで賞」、「なんでこれまで気がつかなかったので賞」 この製品は、興味があれば買っても良いかもしれない。 (2−1)富士通ゼネラルのビタミンCを放出する空気清浄機 評価:「マッチポンプで賞」、「二枚舌で賞」 (2−2)象印のビタミンC、カテキン放出の空気清浄機 評価:「マイナスイオンで本性曝露で賞」、「説明不十分で賞」 まあ、お止めになるのが無難。 (3)NECライティングの蛍光灯「太陽の恵み ビタミンDay」 評価:「今昔すり替えで賞」、「寝たきり老人だけで賞」 寝たきり老人用。若い人にとっては、皮膚がん光線。 (番外)チタンネックレス ソースネクスト 邑瀬@NPO法人DGC基礎研究所 事務局です。こんにちは。 「ビタミン家電の評価」を拝読しました。 「光パワー野菜室」に関して、農芸化学出身の立場としてコメントしたいと思います。 光合成には大きく分けて、光の強度に依存する反応(明反応)と温度に依存する反応(暗反応)の2つの段階があります。前者は光エネルギーを利用して電子を得る過程で、後者はその電子を利用して二酸化炭素から各種有機物を合成する過程(カルビン回路)です。 一般に植物には低温障害という現象がありますが、これは明反応で得た電子が(暗反応で処理しきれずに)周囲の酸素と結合して活性酸素となり、組織などを破壊するためと考えられます。 #
一部、説明がつかない植物もあるようですが。 つまり、冷蔵庫内は当然(植物にとっては)非常に低温ですから、よほどの微弱な光でない限り、細胞内で電子が過剰になって、(目に見えなくても)低温障害と同じようなことが起こっているのではないかと思います。 # それに対する生体防御として、ビタミンCなどの抗酸化物質が合成されるという仮説が立たないわけではありませんが。 なお、「ビタミンCの増加」の実験で使われているスプラウトは、それだけで商品になる(下記参照)ほどの、植物の生長過程では特殊な時期です。したがって、「ビタミンCの増加」効果を謳うには、通常の(十分に成長した後の)野菜でも同じような効果があることを示す必要があると思います。 スプラウトについて(村上農園)
私も「長期間野菜の保存ができる」ことを売りにすべきだと思います。 邑瀬 章文 MURASE Akifumi, Ph.D. NPO法人DGC基礎研究所 事務局 URL http://www.dgcbase.jp/ ********************************* |
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