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  必要なとき、必要なところで、必要なことだけ  10.19.2008
     



 10月11日土曜日に成田を出発し、米国アトランタ経由でブラジルを訪問した。リオが2泊、ブラジリアが1泊、合計3泊7日という強行日程だった。

 リオ、サンパウロ、ブラジリアと3都市でシンポジウムなどに参加。3回の講演を行った。

 ブラジルの講演の根幹となる考え方がこれであった。ブラジルの報告は次にして、この考え方について、ここでまとめてみたい。

 外国へ行くと、大体何か本HPに掲載している。しかし、今回は、あまりにも忙しくて、印象記というほどのものを書くのも難しいが、ブラジルという国について、行かなければ分からない印象はある程度受けたので、そのうち、なんとか文章にしてみたい。



C先生:この考え方「必要なとき、必要なところで、必要なことだけ」は、これまで主張してきたEcoTech2.0、すなわち、エネルギー効率を2020年ぐらいから2050年までに2倍にすることを目標に、あらゆる技術開発が行われなければならない、という主張を実現するためのガイドラインのようなもの。

A君:単にエネルギー効率を2倍にするだけではなくて、このような考え方を実現すれば、場合によっては、3倍、4倍を狙うことも可能かもしれない。

B君:効率2倍といっても、技術的なことに詳しくない人々には、何をやったら良いか分からないかもしれない。そこで、もっと一般的な常識を含んだ説明にしたということだ。

C先生:このような考え方を述べだしたのは、今年に入ってからだから、もうかなり長い間話をしていることになる。1月24日に行われたRITE主催の国際会議が東京で行われ、そこで、そんな話をし始めた。いくつか具体的な例があるのだが、その一つが「視線検知型テレビ」。

A君:液晶テレビについては、
http://www.yasuienv.net/LCDTV32V2008.htm
でHPを作りました。そこでは、視線検知型の主張をしている訳でもない。

B君:現時点で普通に売られている薄型テレビの消費電力の大部分は、液晶であればバックライト、プラズマであれば放電による発行。いずれにしても光を出すことが最大のエネルギー消費の原因。

A君:テレビを見ながら、ちょっと部屋をでるときに、いちいち消すか。まず、そんなことはしない。エアコンであれば、いなくなったらすぐに消さないと無駄という訳でもないが、テレビの場合であれば、誰も人が居ないのに、テレビだけが動いているのは無駄そのもの。

B君:それなら、その部屋に人がいるかどうかを判定すればよい。そんなのは簡単。

A君:しかしそれだけでは、不十分というのが、「視線検知型」の主張の面白いところ。部屋にいるときでも、テレビを見ていない場合が多い。テレビの役割は、誰もいないとさびしいからONになっているだけ。すなわち、部屋の環境整備であって、それ以外になんら意味はないことも多そう。音だけを聞きながら、ちょっと面白そうだと、画面を見る。その画面を見る動きを検知して、そのときにだけは、画面が出ているが、それ以外のときには、画面は消すのがベスト。

B君:最近のデジカメには顔認識機能を持っているものが多い。これをちょっと改良することで、視線検知型にすることはきわめて容易。

C先生:こんな機能を付けることでどのぐらい消費電力が低下するか。まず、テレビそのものに、消費電力表示機能を付けるべきだ。そんな機能があるテレビをグリーン購入法などで優遇してみたいものだ。

A君:テレビといえば、視野角が無駄なスペック。178度などいう視野角が何の意味もないことは明白。

B君:その通りで、もしも部屋の角に設置するとしたら、130度ぐらいの視野角で十分。

C先生:可変視野角が液晶テレビの最終目標だろう。少なくとも、狭い視野角、広い視野角のセットができるような機能を付けるのはどうだろう。可変光学系になるから、結構難しい課題かもしれないが。

A君:確かに、「視線検知型+可変視野角」が実現できれば、「必要なとき、必要なところで、必要なことだけ」を満足するテレビができそう。

B君:テレビは、今後、さまざまな技術を省エネを競うことになる。有機ELやレーザー、さらには、SEDやFEDといった様々な形式のものが製造されるのではないだろうか。しかし、視線検知型という考え方は、どのテレビにも応用可能だ。

C先生:そもそも、この手の話のネタになったは、ナショナル(パナソニック)のビューティートワレの瞬間加熱便座と洗浄用温水がきっかけだった。それから、いろいろな製品について、可能性を考え始めたのだ。「視線検知型テレビ」の特許を申請する気はないので、どこのメーカーが最初に作ってくれるのだろうか。楽しみに待ちたい。

A君:それでは、テレビは終わって、次は電気自動車。

B君:日本の自動車業界最大の共通話題が電気自動車になりつつある。

A君:ハイブリッドを開発するには、莫大な開発費が掛るが、電気自動車なら比較的簡単。しかし、取り組んでみると、それほど簡単ではないことが分かり始めているのではないか。

B君:日本メーカーの仕様は、やはり電気自動車にフルサービスを考え過ぎ。もっと、社会システムとの協働によって、エネルギー効率の維持を考えるべき。

A君:ということはカーシェアリングとか、あるいは、バッテリーシェアリングとか。

C先生:最大のフルサービスが、航続距離だ。航続距離をガソリン車並みにしようとすれば、それはバッテリーを大量に搭載する必要することが必要になって、あまり賢いとは言えない。なぜならば、コストはバッテリーが支配するから。

A君:用途と駆動方式を明確に2つに分ける。都市内のコミューターとしての用途。観光目的などのロングドライブ用途。そして、都市内は純粋に電気で走るが、ロングドライブ用となれば、小型の発電装置をトレーラー型に接続して、シリウス型のハイブリッドにして走らせる。

B君:現時点で発電装置を作るとなると、それは、まずはエンジンということになる。ガソリン、ディーゼルだけでなく、何でも良い。スターリングエンジンの可能性もある。

A君:都市内コミューターならば、30kmも航続距離があれば、そこで充電するチャンスはあるはず。

B君:もしも、どうしても急ぐから充電などはできない、というのならば、カーシェアリングもしくはバッテリーシェアリングシステムを整備すればよい。車ごと変えてしまうか、バッテリーだけを交換するか。

C先生:最近の充電技術の進歩によって、バッテリー容量の半分ぐらいまでなら、かなり短時間で充電が可能になっている。普通の用途なら、まず、充電を前提としてやれるのではないか。

A君:タウンコミュータならば、2人乗りで十分。遠距離用となると、2人乗りではなくて、4人用とか、さらに、大きな荷物を積む形式とかにする必要がある。

B君:そのような場合には、車そのものを連結可能にすれば良い。2人乗りでも3台つなげば、6人乗りになる。運転手は一人でOK。カーゴを連結することも考えればよい。

C先生:これで、「必要なとき、必要なところで、必要なことだけ」のサービスを提供する電気自動車ができたことになる。

A君:基本ユニットとなる電気自動車は、バッテリーを30km分しか搭載していないから、かなり安価に提供が可能になる。

B君:充電ユニットやカーゴユニットは、レンタルの形式にすれば良いのでは。

C先生:現時点ではレンタルが良さそう。しかし、将来、高温型の燃料電池ユニットなどが利用可能になれば、普段は、家に電力と熱との同時供給を行っていて、車を遠距離用に変更することが必要になると、車に接続するという方式もあり得るのでは。

A君:高温型燃料電池は、常時運転というモードでないと、なかなかうまく行かない。となれば、普段は、どこかに接続して温度を維持するだけの運転を継続することが必要。となれば、そんな形式になるのでは。

B君:旅行にでると、つなぐ先がなくなってしまうが。

A君:そのときには、それ用の設備にでも接続して電力を売るのでは。

B君:となると、一般市民が電力を売ることになる。

C先生:社会システムが相当変わることになる。ということで、電力がどう変わるかを検討しよう。

A君:電力における「必要なとき、必要なところで、必要なことだけ」とは何か。

B君:超長期を考えると、当然のことながら、再生可能エネルギーが大量に電力系統に接続されることになる。ゆらゆらと揺らぐ再生可能エネルギーなだけに、それをある程度平滑化しないと、場合によっては使いにくいものになりかねない。

C先生:現時点の日本の電力会社は、世界最高の品質の電力を提供していると自慢している。しかし、それが本当に必要なのか、というのが問題点。

A君:停電をしないという意味でも日本の電力は世界全体とは完全に違ったレベルの品質を提供している。

B君:日本では当然だと思われているが、世界の標準から言えば超超驚異的な、年間に1〜3分間(台風や落雷などの災害時を除く)が平均停電時間

A君:途上国などでは、何の前触れもなく、停電するのが当然。日本では、停電してしまうと、補償も大変なのでは。

B君:電気は常時来るのが当然、電圧も100V、周波数も50あるいは60Hzぴったりが当然。

C先生:周波数を維持するのは結構大変で、大型の発電機などが、すべて同じ回転するでぐるぐると回っているという図を想像すると、それらのスピードが狂いだしたら大変そうだと分かるだろう。

A君:しかし、ユーザ側から考えると、周波数が1Hzぐらい狂ったところで、あまり問題はない。モーター類は、50Hzと60Hzで出力が違うことからも分かるように、ほんの少々影響はあるが、通常の電源であれば、大丈夫。それなりの工夫をすれば良い。特に、ノートパソコンのように、何ボルトでも動作するようになっているものは、電池もあるし、全く問題はない。

B君:そうなると、適当にふらふらする電源でも、それをマイクログリッドでも作って、揺らぎを防止することが可能。

C先生:電気自動車の電源にもなる高温型燃料電池は、電圧変動への追従などの速度も優秀だから、家庭用マイクログリッドを構成するには好都合。なんらかの燃料を燃やしながら発電して、電源の揺らぎを抑えることが可能。

A君:となれば、電力会社が提供する電気はもともとフラフラという前提で設計すれば、それはそれなりに実現も可能だし、対応も可能。

B君:各家庭が自家発電装置をもって、また、電気自動車のバッテリーも平滑用に使用できるので、現時点とは全くことなった電力供給システムが実現可能。

C先生:電力は、まずは、量的に十分であること。さらに、再生可能エネルギーを大量に導入すること。という2つの条件を満たしたもので良さそう。それが「必要なとき、必要なところで、必要なことだけ」を提供する電力。それに、家庭内で様々な装置が組み合わされて、その家庭に適した品質の電力が供給される。

A君:しかし、もしも各家庭の装置が壊れたら大変。

B君:補助用の装置は、共通化しておいて、すぐ交換ということにしないと。いちいちその場で修理をしていたら時間が掛る。

C先生:ということは、これらの装置は買い取りというよりは、リースしていることになるのだろう。サービス産業だから当然かもしれないが。

A君:さまざまな財について、社会全体での共有化が進むということですかね。

B君:「必要なとき、必要なところで、必要なことだけ」ということをサービスの根本的な原理にするのなら、ある程度の共有化が合理的だということになるのだろう。

C先生:このような考え方を徐々に拡充しつつ、製品のスペックなどが考えられるようになれば、結果的にエネルギー効率の2倍などといった問題は簡単に達成できるように思える。

A君:3倍、4倍が可能になるかもしれません。

B君:しかし、まだまだ考えるべきことが多い。例えば、貨物の最終的な輸送はどうするか。今のような宅配型なのか。それとも、全く別の形なのか。

C先生:基幹輸送網は鉄道輸送でも、最後の最後は、やはりトラックに成らざるを得ない。しかし、電気トラックは難しい。まだ、解が見えない。

A君:人の輸送だって、鉄道がすべてとは言いたいが、途上国の場合には、日本のような新幹線網は、セキュリティー上問題がある国では難しい。低速でも鉄道の優位性はある。

B君:日本だって、秋田県や青森県のように、人口が極端に減ることが予測される地域では、これまでのようなフルサービスは難しい。どんなサービスを徹底的に行い、ある部分では手を抜くのか。これは重大な問題。東京でもそうだが、1960年代に作った社会インフラが劣化を始めている。これをすべてメンテナンスするとなったら、国家予算がいくらあっても足らない。

C先生:日本が今後直面していく問題を解決していく過程で、何らかの答えが出てくることだろう。徐々に考えよう。