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  容器包装リサイクル法に関して言いたいこと 09.05.2006



 いよいよ容器包装リサイクル法の改正にむけてのヒアリングは始まったようだ。そのうちヒアリングに呼ばれるので、それに向けて論点を整理しつつある。現時点での中間結果を示してみたい。

 以下、論点をまとめて示し、その後、それぞれについて、若干の議論を行う。そして、最後に、各主体向けへのメッセージを出して終わりたい。


論点のリスト:
(1)リサイクルとは、元来、地球の磨り減り方をより少なくする効果があることを絶対的条件とする行為である。
(2)しかし、それ以外の効用として、雇用の確保、信条の実施などを目的とする場合も有りうるが、上記の条件(1)も同時に満足することが常識である。
(3)リサイクルは、コスト的に無理であっても、(1)、(2)に記す効用を優先させて行うべき行為である。
(4)リサイクルの仕組みに要するコストは、最終的に消費者が負担すべきものである。
(5)リサイクルは、循環型社会基本法に述べられているように、リデュース・リユースの下位に位置する。そのため、リデュース・リユースに繋がることが望ましい。
(6)飲料を販売するには、量り売りのような非現実的な方法を除けば、必ず容器が必要不可欠である。最近のように、「水は買うもの」、「お茶も買う」といった傾向を許容しつつ、容器(使用数)のみをリデュースすることは不可能に近い。
(7)唯一の解が、リターナブル容器である。現在の時流に逆行するこの種の容器に対する態度を決めることが重要である。
(8)容器包装の問題は、環境負荷の大きさという観点から言えば、あまり大きな問題とは言いがたい。しかし、その国の環境政策がもっとも良く反映しており、しかも見やすい部分が容器包装である。
(9)容器包装に限らないがリサイクルは、もともと人為的に費用負担の仕組みを決めるものであって、その仕組みが急激に変化することは経済的な見地から望ましくない。できるだけ、長期の見通しが得られるような方針が表明されることが望ましい。
(10)事業者にとって予測しにくい仕組みは改善が必要である。年度が終了してから負担金が決まるような仕組みは、大きな欠点だといわざるを得ない。
(11)フリーライダーを防止する仕組みが必要不可欠である。
(12)最終的な容器包装リサイクルシステムのビジョンが必要である。それは、容器そのもの、あるいは、包装用材料になりうるものが生産された瞬間に負担金額が決まるシステムが必要である。
(13)リサイクルで、しばしば抜けて落ちる観点が、リサイクル後の製品の価値が高いプロセスを優先すべきだという点である。そのために、付加価値の高いリサイクル製品を製造する業者の入札を優先する仕組みが不可欠。
(14)国としてのポリシーの表明が重要である点を考えると、第2次容器包装リサイクル法のみならず、少なくとも、第3次、第4次の方向性を同時に決定すべきである。
(15)ということは、50年後の着陸地点を想定した議論が行われることが望ましい。
(16)その着陸地点に向けて軟着陸が行われることを共通理解として、合意形成が行われることが望ましい。
(17)最後に、EPR(拡大生産者責任)は、容器包装リサイクル法との関係はもともと希薄であるが、ビール用ペット、ホット飲料用ペットなど、新種容器については、情報開示がさらに必要である。むしろ、現行ならびに近未来のリサイクルシステムとの整合性からみて、認可を必要とするという考え方もありうる。

C先生:それでは、以上の項目について、若干の議論をしてみよう。

(1)リサイクルとは、元来、地球の磨り減り方をより少なくする効果があることを絶対的条件とする行為である。

A君:この条件、当然だと思うのですが、実は、ここにすり替えを入れるのが、武田先生流の「リサイクルしてはいけない」論。コストが掛かる行為は、環境への負荷が大きいから、という間違った仮定を持ち込むのが、その手法。

B君:最近は、さすがに武田先生流の「リサイクルしてはいけない」を支持する議論は無くなった。しかし、その当時、結論が心無き事業者にとって有利なものだったもので、理屈ではなく、感情的に支持した人々も多かった。


(2)しかし、それ以外の効用として、雇用の確保、信条の実施などを目的とする場合も有りうるが、上記の条件(1)も同時に満足することが常識である。

C先生:この雇用の確保を第一目的としたリサイクルは、邪道だという考え方もある。最近の中村慎一郎先生の解析などによれば、家電リサイクル法についても、環境負荷の軽減にはなっていると解釈が主流になりつつあるように思える。

A君:信条の方は、例えば、リコーのプラスチックリサイクルを上げることができる。プラのマテリアルリサイクルは比較的困難な場合が多いのですが、そこを徹底的にやると、なんとか商売にまでなりうるということも一方の事実。

C先生:家電リサイクル法関連の商品群でも、当初よりは、環境あるいはリサイクルのための設計思想が広まって、再利用あるいはリサイクルを前提とした機器が開発されるようになっている。これも、一つの効果だと言えるだろう。

(3)リサイクルは、コスト的に無理であっても、(1)、(2)に記す効用を優先させて行うべき行為である。

B君:これがもっとも重要な理解かもしれない。コスト的に無理であっても、誰かが払えばよいのだから、「やる」のがリサイクル。それに対して、それを「やらされる」とコストが掛かってかなわないというのが、事業者側の立場だった。しかし、雇用面のベネフィットなどもあるので、最近は、ある種の合意になったのかもしれない。

A君:ある種のあきらめになったのでは。

C先生:一般市民社会の理解が進むと、事業者の意識も変わらざるを得ない。しかし、それでは駄目なんだ。一般市民がもっている環境情報は、メディア経由のものなので、必ずしも真実とは言えないものもある。未だに、「プラスチックを燃やすとダイオキシン」という固定観念に縛られている市民も多い。

B君:だから事業者の責任が大きい。

C先生:その通りで、事業者は様々な情報を正しく把握する能力があるのだから、市民社会を半歩先導するような環境対応を行わなければならないのだ。

A君:コストが増大するといっても、それを事業者が被るのは妙ですからね。

B君:それが次のものだ。

(4)リサイクルの仕組みに要するコストは、最終的に消費者が負担すべきものである。

A君:この社会の仕組みとして、事業者が被ったように思われている費用でも、実は、最終的には、消費者がなんらかの形で払っている。

B君:そう。多少、時差があって、ある瞬間には事業者が被っていることはあっても、それが未来永劫継続していたら、事業が成立しない。だから、そのうち、なんらかの形で消費者が支払うことになる。

C先生:そのような長期的視野をもてないのが事業者というものらしい。

A君:事業者がコストを削減するのは当然の義務ですが、コストを被るのは本来の「循環」の意図とは違う。

B君:循環の最後の意図は、次にあるように、リデュースである。このリデュースという言葉も難しいが。

(5)リサイクルは、循環型社会基本法に述べられているように、リデュース・リユースの下位に位置する。そのため、リデュース・リユースに繋がることが望ましい。

C先生:最初、リデュースという言葉が2000年に導入されたときには、それは廃棄物の減量だった。最終処分地不足がもっとも重大な問題だったからだ。

A君:しかし、本来のリデュースの意味は、むしろ入力側にあるべきで、なぜならば、どんなものでも、地球から採取してしまったら、最後の最後にはゴミになる。だから、一旦地球から掘り出したら、徹底的に骨の髄まで使い切ることが重要。その手法の一つが循環。

B君:入力側のマネージメントという考え方が徐々に広がりつつある。

C先生:しかし、大問題が容器包装については、リデュースという考え方が主流にはなっていないことだ。勿論、評価すべき対応も多いのだ。例えば、日本製のペットボトルの薄肉化は相当なものだ。薄くなりすぎて、かなりクレームが多いとも聞くが。ミネラルウォータなど、水道水の500倍以上の環境負荷の製品なんだから、多少のクレームぐらいしょうがない。

A君:日本で容器を作って、米国に送って、そしてミネラルウォータを充填しているメーカーがあるとか。

B君:やはりペットボトル程度でも、不良率を徹底的に下げるには、日本の製造技術が必要ということか。

A君:むしろ検査システムが優秀なのでは。

B君:勿論、品質管理技術を含めての製造技術だ。

C先生:リデュースが問題とは言うが、実際、容器の本数が減ることは考えにくいのだ。

A君:その問題が次のものですね。

(6)飲料を販売するには、量り売りのような非現実的な方法を除けば、必ず容器が必要不可欠である。最近のように、「水は買うもの」、「お茶も買う」といった傾向を許容しつつ、容器(使用数)のみをリデュースすることは不可能に近い。

C先生:容器包装リサイクル法が最初にできた95年に比べて、現時点までで、ミネラルウォータ+お茶の売り上げは何倍になっているのだろう。

A君:調べてみますか。。。。。。うーん。分かりませんでしたので宿題にさせて下さい。

B君:しかし、これまで自宅で作っていたお茶を買うようになった。これは何故か。

A君:まあ利便性だけでしょうね。利便性のために環境負荷が増える。これは自然の慣わし。

B君:利便性というものは、時間を節約するためにある場合が多い。勿論、体力の消耗を防止する場合もあるが。それほど、ここ10年程度で、ヒトは忙しくなったのか。

A君:色々でしょうが、経済的な冷え込みで、共働きが増えた。そのため、主婦の時間が減った。
B君:不景気は環境負荷を増大させるか。

(7)唯一の解が、リターナブル容器である。現在の時流に逆行するこの種の容器に対する態度を決めることが重要である。

C先生:こんな状況で飲料が増え、したがって、容器の総量が増える。これまでのペットボトルのように、一回限りの容器を使っている限り、容器の絶対数は増えるに決まっている。

A君:しかし、リターナブル容器のように使い回しをすることによって、環境負荷は下げることができる。

B君:ところが、ガラス製のリターナブル瓶は、重い。保存に場所が必要。飲みかけで蓋ができない。などなどがあって、利便性が多少悪い。

A君:もともと、利便性を追求して買う飲料が増えた。そんな社会に、利便性の悪いリターナブル容器が普及する訳が無い。

B君:という訳で、リターナブル瓶は絶滅危惧種になりつつある。

(8)容器包装の問題は、環境負荷の大きさという観点から言えば、あまり大きな問題とは言いがたい。しかし、その国の環境政策がもっとも良く反映しており、しかも見やすい部分が容器包装である。

C先生:それでは、そのまま放置して良いのか。環境負荷が大きいといっても、今議論していることの中身は、資源・エネルギー・二酸化炭素排出といった負荷が中心で、これは、「地球の磨り減り方」の指標のようなもの。そこで、新たに問いたい。利便性のためにどこまで「地球を磨り減らして良いのか」。

A君:それが駄目というのが、本来の容器包装リサイクル法だったのでは、と消費者は考えるが、実際にはそうではなかった。

B君:むしろ、もう一つの環境負荷である、最終処分地の不足をなんとかしなければならないということが、容器包装リサイクル法成立当時の考え方だった。そこで、リデュースという言葉は出てくるのだが、それはゴミの発生量のリデュースが中心的な考え方であって、入力側のリデュース、すなわち、省資源・省エネルギー的な考え方ではなかった。

A君:言葉としては、「発生抑制」。とにかく、最終処分地を減らすためには、リサイクルというのが趣旨だった。

B君:だが、京都議定書の発効がまもなくという状況を考えると、やはり、飲料容器程度のものには、できるだけ二酸化炭素発生量の低い種類の容器を選択しよう。多少の利便性は我慢しようという考え方がありうる。

A君:実際のところ、単純な容器の場合には、そうですが、レトルト商品のパッケージのように、高度の工業製品があって、しかも軽量。利便性と資源投入量が両立しているものもある。

C先生:飲料容器に対して、今の消費者が求めるものは、(1)透明であること、(2)リキャップ性、すなわち、蓋ができること、そして、(3)軽量で丈夫であること。

A君:ペットボトルはすべての要求を満たしている。そこで、飲料業界は、ペットボトルを作るが、それなりに、樹脂の使用量を削減し、極限まで薄いものになっている。

B君:これで日本という国は良いとするのか、それとも、もっと進んで、リターナブル容器を制度化するのか。

C先生:これが見えるような政策が必要。実際のところ、環境負荷に対する効果はそれほど大きくは無いのだが。

(9)容器包装に限らないがリサイクルは、もともと人為的に費用負担の仕組みを決めるものであって、その仕組みが急激に変化することは経済的な見地から望ましくない。できるだけ、長期の見通しが得られるような方針が表明されることが望ましい。

A君:公害でヒトの健康に影響が出るといったものではないので、政策的な姿勢がもっとも重要。国は、この姿勢をもっと見える形で、国民に示す必要がある。

B君:という、言わば見え方の問題が最重要問題である。ということは、その姿勢が長期間にわたって安定して見えることが重要。そうでないと、環境に関わる法律は、その成立や変更直後にかなり大きな影響を与えるのが現実なので、できるだけ安定な制度が必要。

(10)事業者にとって予測しにくい仕組みは改善が必要である。年度が終了してから負担金が決まるような仕組みは、大きな欠点だといわざるを得ない。

C先生:そろそろ議論が細かくなってきた。これは、現在の容器包装リサイクル法の最大の問題点だと思う。要するに、事業者が払う負担は、年度が終わってからでないと、金額が分からない。これは、商売をやる上では、大問題。コストが分からない商品を売るようなものだし、コストを削減するために、容器を変えるのが良いのか、変えないのが良いのか、それも分からないのだから。

(11)フリーライダーを防止する仕組みが必要不可欠である。

C先生:これも細かい。事業者のすそ切りは行われているものの、それでも対象となる事業者が多すぎて、本来払うべき事業者なのか、すそ切りの対象になる事業者なのか、その見極めなどがかなり困難。行政コストが掛かりすぎる仕組みである。

(12)最終的な容器包装リサイクルシステムのビジョンが必要である。それは、容器そのもの、あるいは、包装用材料になりうるものが生産された瞬間に負担金額が決まるシステムが必要である。

C先生:以上の(12)までの条件を考慮すると、現在のようにボトラーが中心となってリサイクル分担金を支払うシステムは合理的ではない。ボトラーがもっと容器の選択をできるように、容器そのもの、あるいは包装用材料になりうるものが生産された瞬間に負担金額が決まるシステムが必要。

A君:ということは、容器製造業者が負担する。そして、その負担をボトラーに完全転嫁して、ボトラーはそれを消費者に完全に転嫁する。

B君:ところが、この話になると、ボトラーが難色を示す。また、容器製造業者も難色を示す。それは、「転嫁が難しい」という理由。

C先生:それに、リサイクル費用を均一に決めてこんなシステムを作ると、公正取引委員会が口を出してくる可能性もある。公取は、リサイクル費用に関しては、ある程度、その正当性、あるいは正義とは何かということを考慮した上で、トータルにみて、より高い正義が実行される方向性を探るべきなのだ。

A君:このあたりは、政府内での調整が必要ということになりますね。

B君:だから、国全体としての大きな方針の決定が必要。

(13)リサイクルで、しばしば抜けて落ちる観点が、リサイクル後の製品の価値が高いプロセスを優先すべきだという点である。そのために、付加価値の高いリサイクル製品を製造する業者の入札を優先する仕組みが不可欠。

C先生:これはさらに細かい。しかし、リサイクルによる資源の活用、という観点からはかなり重要である。リサイクルは、できるだけ価値の高い製品へとリサイクルを誘導すべきだ。やはり、マテリアルの付加価値の高いもの、マテリアルで付加価値の低いもの、そして、ケミカルリサイクル、最後にサーマルリカバリーだ。マテリアルで付加価値の低いものとケミカルリサイクルの優先度はいささか微妙だが。

A君:付加価値の高いリサイクルが多く行われるように、入札の仕組みを変えるということですね。

B君:付加価値が高いリサイクルを行う業者がまず入札を行い、その後、付加価値の低い業者と、数段階に分けて入札を実行することが必要。

(14)国としてのポリシーの表明が重要である点を考えると、第2次容器包装リサイクル法のみならず、少なくとも、第3次、第4次の方向性を同時に決定すべきである。

C先生:やや順番が妙かもしれないが、いずれにしても、第2次容器包装リサイクル法が最終的な着地点でないことは明らかだ。第3次、第4次がどのようなものになって、最終着地点との関係はどうなるのか、そんな議論が必要だ。

(15)ということは、50年後の着陸地点を想定した議論が行われることが望ましい。

A君:地球の懐は以外と広いので、まあ、ここで10年システムが遅れたとしても、たかが容器、されど容器だから、地球の磨り減り量が莫大な影響を受けるというものでもない。

B君:50年後の姿を議論した上で、その着陸地点を目指した議論が行われるべきだ。

C先生:その通りなのだが、着陸地点が見えたら、そこに向かって一直線に着陸することが最善ではない場合もある。リサイクルはそのような気がする。これまで、余り意味を考えずに、なんでもリサイクルをやって、その重要性を認識して貰ったという段階なのではないだろうか。これは、着陸地点が来たにも関わらず、飛行高度をちょっと上げて、より乗り心地のよい飛行をしたとも考えられる。

A君:そんな態度が許されるだけの余裕がまだあるということ。

(16)その着陸地点に向けて軟着陸が行われることを共通理解として、合意形成が行われることが望ましい。

C先生:そう。ゆっくり議論し、第4次ぐらいで、完全なシステムを目指そう。

(17)最後に、EPR(拡大生産者責任)は、容器包装リサイクル法との関係はもともと希薄であるが、ビール用ペット、ホット飲料用ペットなど、新種容器については、情報開示がさらに必要である。むしろ、現行ならびに近未来のリサイクルシステムとの整合性からみて、認可を必要とするという考え方もありうる。

C先生:そもそもEPRとは何かという議論がありうる。個人的には、様々なレベルがあるものと考えているが、最終的な落としどころは、その製品の製造あるいはデザインをやった者が、その製品についてもっとも良く知っているはずだ。だから、そのリサイクルについても、廃棄についても、より良いシステムを責任をもって実施あるいは提案すべきだという意味のように思える。

A君:ということは、容器のように単純なものについては、誰かが、EPRを代行しても問題は少ないということ。

C先生:その通りで、ペットボトルであれば、どうやってリサイクルすべきか、それは材料の特性を考えれば良いだけで、特に、個々の製品について特殊なリサイクルを考える必要は無い。ただ、特殊なペットボトル、例えば、アサヒビールが導入を狙っているビール用のペット、さらには、すでに製品化されたホット飲料が入ったペットボトルのような複合素材は、リサイクル性能がどのぐらい悪化しているか、どういうシステムだと問題が出やすいか、といった情報を完全に開示し、もしも、既存のリサイクルシステムに齟齬を来たすようなものならば、行政はそれを禁止すべきだ。あるいは、大きな課徴金を課すべきだ。企業が単独で導入を決めることができるのはおかしい。それがEPRというものだ。

A君:かなり強烈。

C先生:そこで、以下、それぞれの主体に対して、個別の注文をリストアップした。

飲料業界各位へ

(1)事業者が増加するコストを吸収することは、リデュースに繋がるかどうかの観点から有害な行為であることを再確認すべきである。

(2)上記理由により、事業者の負担が大きいから、という理屈で、法律改正に反対すべきではない。

(3)自治体の収集効率に関して、最善の効率を実現している自治体の特定を急ぐべきである。

(4)もしも、最善の収集・業務効率の高い自治体の回収費用の半分を負担するとしたら、現状での対象外の容器を含めて、どのようなコスト負担になるか、シミュレーションを行い、その値を公表すべきである。

(5)ビール用ペット(特にアサヒビールへ)、あるいは、ホット飲料用ペットのような新容器を使うかどうか、これは自社のみで決定できるものではないことを認識すべきである。


容器生産事業者と事業者団体各位へ

(1)リサイクル率の高さは免罪符にはならない。なぜなら、回収を自治体に一部とは言え依存していることは事実であるから。

(2)リサイクル率の定義が材質ごとに違うのは、許容しがたい。せめて、現状の厳密な計算法を完全に公開すべきである。

(3)さらに、リサイクル率の定義の統一を、どこかに公的な研究機関に依頼し、それを採用すべきである。

(4)LCAを行う際には、自己責任で管理可能な境界条件を設定すべきであり、自治体などの寄与を含む境界条件の設定は不当である。
LCAとは、自らの立場をできるだけ厳しく評価し、信頼性を確保するものである。 → スチール缶業界へ


市民代表各位へ

(1)EPRが重要なのは、より複雑な製品に対する情報公開という観点である。どのような有害な物質をどのぐらい含む、あるいは、分解を適切に行わないと作業者に被害が及ぶといった考え方がEPRの根幹をなすからである。

(2)容器のような場合には、EPRという考え方は適用が困難。なぜならば、事業者は費用負担をすべきではなく、システムの構築も、事業者の責務とは言いがたいからである。ただし、新種の容器を出すときには、かなり重大なEPRが発生すると考えるべきである。

(3)事業者が利益を追求すると、自然にある行動を取るようになる、といった社会システムの構築が望ましい。

(4)費用分担の議論が重要である。しかし、特に重要なところは、どのような場合でも、最終的には消費者が負担しているのが現実である。単に、地方税という形を中間的に取る場合があって、単に、そのため負担割合が異なるということである。

(5)事業者がリサイクルコストを吸収してしまっては、削減効果が無いので、費用負担の主体として事業者を上げるべきでない。

(6)一般ごみの有料化議論と、ごみ減量の議論は同一ではない。また、デポジット製とごみ減量の議論は、これも同一ではないことを認識すべきである。

(7)環境問題を市民の行動で解決しようとするとき、解にはいくつか種類があることを見通すことが重要である。すなわち、その解をすべての市民が実行したとしても、問題が起きない種類の解であるのか、現状からの実施者の増加は望ましいが、すべての市民がそれを実施すると、環境に問題が出る行動であるかを区別した普及活動を行うべきである。


自治体関係者へ

(1)自治体の収集費用の一部を事業者負担とすることは、当然の主張である。

(2)現在、容器包装リサイクル法の枠外であるスチール缶、アルミ缶、紙パック、段ボールも容器包装リサイクル法の枠組みに含めるべきだという主張を行うべきである。

(3)一方、自らの収集コストの公開を積極的に行うと同時に、究極的な効率を達成した場合のコストの算定を行うべきである。

(4)収集方法の改善によって、回収品の品質が向上するのであれば、その方法の具体的な提示と方法論を変更した場合のコストデータを公表できるよう努力すべきである。


国関係者へ

(1)容器包装のように、環境負荷の絶対値が限定的である排出物に対するシステムは、行政担当者の「趣味」によって、美しくかつ未来展望のあるシステムを構築すればよい。
 美しいシステムとは、整合性が取れていること、不平等の無いこと、理論的の裏づけのあること、高い志を感じることができること。

(2)瞬間的な方向性が最終着陸地点の方向と異なることは、最終着陸地点を明示することによって、はじめて許容される。

(3)容器関連全体の循環を高度に推進すれば、それだけ、環境負荷が減少するようなシステムであることを、科学的に証明すべきである。

(4)現時点で回収を高度に実施していることが、容器包装リサイクル法の枠組みから除外される理由にはならない。例えば、アルミ缶、スチール缶である。もしも、それを理由に枠組みから除外するのであれば、以下の条件が必須。

(4−1)もしもリサイクル率が低下した場合には、事業者側の責任においてリサイクル率を復活させる義務の強制。もしも復活が不可能であったら、強制デポジット製を導入する。

(4−2)ペットボトルなどもリサイクル率が上昇した場合には、容器包装リサイクル法から離脱することの確認。