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容器包装リサイクル法の改正へ 07.25.2004 ![]() |
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1995年に成立した容器包装リサイクル法であるが、1997年からの部分実施、2000年からの完全実施を経て、いよいよ見直しが始まることとなった。10年経過したら見直すという条項があるからである。
見直しは、環境省の中央環境審議会と経済産業省の産業構造審議会によって行われる。8月中の開催を目指し、委員もそろそろ決まっているようだ。私個人は入っていない。外部から色々と努力をする予定ではある。 さて、様々な問題点が、様々な団体によって主張されている。今回取り上げられる可能性が高い論点は以下の通り。 (1)事業者の負担を拡大し、自治体の負担を下げる方向。どこまで? さて、どんなことになるのだろう。 C先生:まず、各団体と主張を見てみるか。といっても、容器包装リサイクル法については、署名活動を行ったところがあって、934、560名分の請願署名を国会に提出したそうだ。 A君:「容器包装リサイクル法の改正を求める全国ネットワーク」ですね。 B君:色々なNPOや生協など213団体。それに個人参加も多い。 A君:署名活動をやっていますが、その主張は大体以下の通りです。 国会向けの署名用紙より 衆議院議長殿 一請願趣旨 B君:この文書は客観的に見ても正しいし、請願事項もこの範囲内では文句の付けようは無い。 A君:だから100万人近い署名が集まったのでしょう。 C先生:容器包装リサイクル法は、日本のリサイクル時代の幕を開けた最初の法律とも言える。もちろん、それ以前にも法律的枠組みはあったのだが。最初の法律だけに、いろいろとごたごたした。それが現状の容器包装リサイクル法である。それ以後、様々なリサイクル法が施行され、リサイクルに対する考え方が大分成熟してきたと思う。これをどのように盛り込むかが今回最大の検討課題だ。 A君:容器包装に関わる問題などというものは、本当の意味で環境的危機でもなんでもないのですが、実は、社会の思想的実態を反映しているものなので、どんな仕組みを作るか、それは重要な問題です。 B君:そうだな。日本は韓国に負けた。デポジット制度や容器の選択などだが、スターバックスの日韓比較を是非調べてみて欲しいところ。 A君:FoEなるNPOのHPに出ていますよ。 C先生:日本でも、スターバックスはプラ容器が前面に出ていて駄目だが、 A君:スターバックスは、以前は環境担当者がちゃんと居たのですが、最近、リストラされてしまったとう噂ですが、本当なんですかね。 B君:米国のスターバックスは、フェアトレードなどで、盛んに環境対応を主張していた時期があったのだが。やはり競争が激しいと、「金儲け第一」になってしまうのだろうか。 C先生:店舗の清潔感などから言っても、米国のスターバックスはもう駄目なのではないか、という感じなんだ。今後、日本でどうなるか。 B君:少々古いが、2001年に生協連が出した要望書に上げられている項目。 1.事業者は全量の再資源化費用を負担すべし(現状は、リサイクルされたものの費用だけを負担すれば良い)。 2.分別回収費用も事業者が負担すべし(現状は、事業者は負担せず、地方税によって自治体負担)。 3.容器包装リサイクル法対応の自治体が少ないのでこれを増加させるべし。 4.事業者の自主的な取組みを促進すべき。 5.リユース容器や再生材料について優遇すべし。 6.フリーライダー対策をすべし(現在、その他プラとかその他紙といった容器包装では、フリーライダー、すなわち、事業者でありながら、負担金を払っていない零細事業者が非常に多い)。 7.自治体での再商品化価格の落札結果を公表すべきである。
C先生:それはそうだが、具体的な提案が無いので、どんな社会システムを構築すべきか、イメージが無いのが問題だろう。 B君:それでは、2003年11月に全国ネットが提案した設立趣意書にある項目。 1.問題点 2.方向性 A君:これもシンプルですから、特に問題は無いですね。 C先生:しかし、具体的な問題点の指摘が余り無いような気がする。というのもある意味で当然で、全国から署名を集める場合に、余り詳細な議論をすると、部分的な反対がでてやれない。大同団結といった方向性なのだろう。 A君:まあ、大体はこんなところで、我々としては、どんな方向性で検討するのでしょうか。 B君:まあ、(1)専門性を生かす、(2)より大局観を持つ、(3)戦略をより考える、と言ったところではないか。 A君:材料とかリサイクルの専門家だと思われているのですから当然でしょうか。 C先生:さらにLCAの専門家だとも思われている。(1)は長くなりそうなので、大局観と戦略の2点に絞ろう。 A君:了解。まず大局観。今回のネットワークでも、1995年に出来た容器包装リサイクル法が、2000年の循環型社会基本法の大原則である、リデュース・リユース・リサイクルという優先順位と矛盾したものになってしまった、という主張をしていて、大局観的には合格ですよね。 B君:このような主張が国を動かす場合には正しい。しかし、さらに言えば、同じ循環型社会基本法に対応する基本計画が2003年に閣議決定されていて、その中で、製品中のリサイクル材料使用量を評価すべきであって、製品のリサイクル可能性などをいくら主張しても駄目だ、と読める指標がある。 A君:もう一つ、最終処分量の継続的な減少という項目もある。 C先生:最終処分量については、1991年をピークとして順調に減少していることもあって、余り大きな問題にはならないのではないか。むしろ、不法投棄という法に反する行為が重大な問題なのではないか。 A君:不法行為と環境問題を厳密に区別する必要がある。 C先生:その通りで、最終処分量については、むしろ、数値そのものよりも、廃棄物のマネージメント体制がどのようになっているか、絶対的に不正が起きないような体制を確保しているのか、といった点が重要。 A君:となると、マネージメント体制を定量的に評価すべきだということになりますね。 B君:このあたりが、製造者としてどこまで社会的責任を考慮したマネージメント体制を構築しているか。その形の一つとして拡大製造者責任=EPRがある。 C先生:そのEPRだが、この言葉は、現在各企業によって非常に警戒されてしまっているのだ。デポジットも同様だが。この言葉を中心に据えて、バリアーを突破するのはかなり難しい状況にある。 A君:松下の「あかり安心サービス」にしても、社内で、EPRとの関連で疑義がかなりあったようですからね。 B君:もっと大局観ということになると、国連レベルでの2002年ヨハネスブルグサミットの実施計画なるものがある。その中の「非持続可能な生産と消費からの離脱」という課題をどう考えるか、という問いは、企業に対して求めても良いように思える。 C先生:先ほど指摘された循環型社会基本計画は、実は、日本国としての、その実施計画への回答であるという性格を持っている。 A君:このあたりを考えて、適切な形で、企業に努力を求めるのでしょうね。余り、EPRとかデポジットとか言った企業の嫌がるキーワードを使わないという戦略も重要。 C先生:さらなる大局観だが、今回これから改正する容器包装リサイクル法は、それが最終のものではないということを持つ必要がある。その次に、理想的な容器包装リサイクル法を作る、といった心意気が重要で、その一つの段階として、改正を行うという長期ビジョンが必要不可欠だ。 A君:10年経つと、世の中かなり変わりますから、いきなり理想的なものを作ろうというのではなくて、次を見越してどこまで行くか、とい意識が重要。 B君:環境問題は、もともと50年といった視点で考えれば良い状況にまで改善されたのが日本の現状。世界的には、温暖化のように緊急に対応を取る必要があると言われているものもあるが、実際には、50年後、100年後、500年後にどのような社会を作るか、それが問題なんだ。 C先生:最終的には、容器・包装材料ができた瞬間での負担金の決定というプロセスが重要のように思える。すなわち、容器なら容器製造業だけが負担する。ボトラーは負担しない。ボトラーは事業者として零細なものもあるが、容器製造業は多少大きい。包装の場合になると難しい問題があるが、例えば、プラスチックフィルムや紙であれば、包装用にどのぐらいの割合で使用されているかの調査を5年間掛けて行って、その量に比例してフィルムや紙が製造された段階で負担額が決まる、といったシステムが最善だと考えている。フリーライダー問題も解決できる。勿論、負担額には回収費用などを含める。 A君:そうなると、容器の再利用を行えば、企業負担が自動的に減るので、リユースもリデュースも実現することになる。 C先生:そして、回収率に目標値を設定する法的な仕組みが必要。そして、その目標値が達成できない場合には、負担金の急激な増額を法律の枠組みに組み込んでおく。となると、事業者としては、自己の負担が増大するのを嫌がって、デポジット制を考えるようになる。 A君:デポジット嫌いではなかったんですか。 B君:規制強化には基本的に反対。しかし、市民の安全に直接関係するのであれば、仕方が無いということか。 A君:まあ、ね。 C先生:煮え切らない態度だな。話をしているうちに、戦略性の話に移ってしまったような気がする。 A君:次回に、リサイクル評価の技術論を含めて、制度設計にどのように役に立てるべきか、といった検討を行いましょう。 C先生:各人が準備するように。本日はこれにて終了。
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