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   CO2ゼロ実現の常識と初夢その1
     
どのような電力の社会インフラが必要か 01.07.2018
               



 3回連続で、COゼロ社会の実現に必要なことをカバーします。

 今回は、主として、電力網について考えます。これからいずれ説明するように、ガス供給網は、2050年頃には使えないと考えられますし、プロパンガスも使用不可でしょうから、家庭で使えるすべてのエネルギーは、電力のみに限定されることになります。

 電力網を非常に高性能なものにして、そのときどきの需要に対応して供給する知的なシステムにするのか、それに加えて、各家庭などにも、電池などの蓄電システムや、エコキュートのような湯沸かし器を組み込んで分散型にした上で制御するのか、このあたりはまだまだ見えないところです。それは、電池というものが、どこまで進化するのか、どこまでコストダウンができるか、に掛かっているものと思われます。

 ということで、本日の話題は、家庭レベルから、国レベルまで、電力供給網の未来像に関して、どのようなことを考えなければならないか、という話になります。

 常識シリーズを書く上で、もっとも重要なことは、パリ協定という合意は、実は、2050年以降の未来に対する方向性を、かなり詳細に渡って決めてしまっていることです。しかし、不幸なことには、それを決めたときには、何ができるか、何ができないか、といった検討はほとんど行われていないのです。すなわち、今後、どのような可能性があるのか、それが実現できるのか、その確証は無い状態であったと言えます。

 人類はこれまで、「自分たちにとって、何が便利で、何がビジネスになるのか」という発想で、次の行動を決めてきたのですが、パリ協定は、今世紀は「地球の限界」という最大の環境問題と直面している。すなわち、気候変動によって、海面が上昇して、人類が活動する陸地が失われる、といった確実に起きることを考えたとき、「どのような思想で未来像を決めるべきか」、という全く新しい哲学を構築するという方向性が不可欠である、ということを主張しているのです。しかも、それは、「正義」に基づいたものでなければならないと、規定しているので、「世間が正義を決める国」である日本では、「どうしたら良いか戸惑っている」、これが現状だと思います。

 まあ、日本でもグローバル企業は、覚悟を固めたようで、SDGsに取り組むのがトレンドになってきたようです。さて、日本国内のローカル企業は、まだまだ、対応に迷っているようですし、ローカル企業の代表である電力事業者も、どうしたら良いのか、迷っているようです。

 SDGsに取り組むのは良いのですが、その気候変動に関わるゴール13(本当はゴールであって目標ではない)だけは、いくら読んでもダメで、この項目については、パリ協定の本文を読む以外にすべきことは何もないのです。

 
  
C先生:電力供給の実像について、どのようなものが望ましいのか、概念的には簡単で、エネルギーを支配している最大の原理原則であるS+3Eが実現できる電力システムにすることがゴールである。それで必要かつ十分なのだ。
 まず、Sの安全となると、原子力の安全性ばかりが対象にされる傾向の強い日本人のマインドではあるが、本当のSは、恐らく停電しないシステムであることだろう。途上国のように、十分な非常用電源の無い病院でも停電するようでは、決して安全とは言えないので。
 残りの安定供給(Energy Security) 経済効率性(Economic Efficiency 環境適合
(Environment)
3Eについて言えば、安定供給は、海外からの原油などの輸入に依存している日本にとって、これまでその供給が途絶えることが最大の問題だったEの経済効率性は、エネルギーの価格が余りにも高くならないこと、特に、産業用エネルギー価格は、輸出用の商品価格に影響を与えるのが問題。しかし、韓国のように、家庭用の電力価格が非常に高いけれど、産業用は相当に安価という政策を取っていても、国民の不満はそれほど無い国もある。実際、電力代は、もっと高くても良いと思う。そうしないと、さらなる節電意識は進化しないように思えるので。そして、最後のEの環境については、これまで議論してきたように、「ゼロCO」がゴール。しかし、その他にも環境的要素はある。例えば、バイオマス発電を無作為に進めると禿山ばかりになってしまう。石炭発電の環境影響は、単にCO2ばかりではなくて、水銀の最大の放出源にもなっている。
 最後に、また繰り返すけれど、電力の最大の安全性とは、いつでも使えることだ。その点で、この日本という国は、世界的に見ても、大変優れたシステムを持っている。

A君:どのような順番で2050年における電力システムのS+3Eを議論しますかね。まずは、この順番で、どのような議論の要素があるのか、その検討から始めますか。

B君:それで良いだろうと思う。
 まず、だけれど、これは停電が最大の問題だとすると、自然エネルギーに依存した電力網では、完全に停電フリーは無理かもしれない。ある程度自己責任にするという方向性ではないだろうか。すなわち、自分で電池を所有することによって、あるいは、電気自動車を所有することによって、停電があったとしても、ある程度の電力は自前で供給できる体制を目指す。

A君:まあ、災害だらけのこの国ですからね。数年前に徳島県に大雪が降って、スマホの充電すらできなくなって、連絡が取れなくなった人々が多数に及んだという事件がありました。そのような対策には、今なら、20Wぐらいの太陽電池付きの充電器を買えば随分違う。LED用ぐらいなら、USB経由で充電池の充電もできるので、多少の照明用にもなるので。その当時にはこのような製品は余り一般的では無かったような気がしますが。

B君:災害対策にとって、電気の自力供給はかなり重要な問題になるということは認識して貰った方が良いだろう。是非、なんらかの投資をするという意識をもっていいただきたい。

C先生:さて、Sを終わって、Eの最初はやはりS、Energy Securityだが、これについては、まだ、どのようなエネルギーをどのぐらい輸入するのか、という問題が最重要だ。どのぐらいの自給率にできるか、これも実は、かなり大きな問題で、これまでも色々と検討してきたのだが、その結論は、まだ余り説明していないが、自給率が50%ぐらいでも、結構大事なのだ。となると、なんらかの形でエネルギーを輸入し続けなければならない。原発が有ればまだ良いのだけれど、どうも、現行の軽水炉には、重大な欠点がある。それは、どうしてもプルトニウムやアメリシウムといった、天然に存在するウランの238よりも重たい元素が出来てしまうことだ。この現象は中性子捕獲と呼ぶが、まあ、核融合ではないけれど、核が中性子を受け取って、その重量が重くなってしまうことを意味する。
 しばらく前までなら、プルトニウムは、核燃料にもなるので、自給率の向上のためにプラスという考え方もされていて、核燃料サイクルという言葉で呼ばれていた。しかし、北朝鮮が核兵器の開発に邁進している現在、日本が所有する50トンにも及ぶプルトニウムは、北朝鮮にとって、喉から手が出るほど欲しいものなので、所有しているだけで大きなリスクであることを考えると、なんとも困ったものだ。

A君:となると、プルトニウムを処理するために高速中性線を使った高速減容炉を新たに開発する必要があることになりますね。これは、本当の意味でのSecurity上非常に重要なことだと言えるのではないですか。

B君:しかし、現在の日本には充分な開発体制は無いと言えるだろう。世界的にみても、いずれこのような高速減容炉が求められることは明らかなので、長期計画になるが、日本が先頭になって開発することは、一つの国際協力への貢献にもなる可能性がある。

A君:高速炉だと、冷却をナトリウムでやるのか、それ以外の方法でやるのか、などなど方式が定まっていないですから、本当に安定した炉を開発するには、相当程度の覚悟が必要なのではないだろうか。

B君:それ以外にも、プルトニウムを減らす方法は無い訳ではないよね。

A君:勿論、現状でも、MOx燃料という形態にして、使用することは出来ない訳ではないけれど、また、それほど減らない。まず、現時点の軽水炉をどこまでエネルギー源として維持すべきか。動かせば、またプルトニウムが増えてしまうので。世界的には英国が原発に対して、かなり積極的な政策で取り組んでいるものの、どうにも、福島第一原発事故以来の安全対策に非常に大きな費用がかかってしまうのが現実なので、新設をすると、経済的には成り立たない可能性がでてきていると思う。

B君:となると、やはり、ダイオキシン騒ぎのときに、ゴミの焼却炉の高度化を行ったという伝統を受け継いで、次は、原子力業界が、廃棄物処理を行うために高速減容炉を開発するという順番なのかもしれない。

A君:本当に真剣に必要不可欠だと思いますね。

C先生:ところで、原発のコストが高すぎるということは事実で、英国は、未だに真剣にエネルギーセキュリティのSを追求していて、その解は、自国で原発を持つことだと強く信じている。その覚悟は、さすがとも言える。リスクというものに対する判断力が日本とは全く違うリスクは決してゼロにはならないことを十二分に理解している国だ。

A君:しかし、英国の原発の建設費用がどんどんと高くなったようですね。

B君:一方、太陽光発電では、とうとう1kWhが3円を切った。もっとも砂漠でなければ無理で、UAEの砂漠に作るメガソーラーを日本も受注したが、どうやら完全に2円台のようだ。

A君:勿論、1kWhの電力が3円を切るような価格は、砂漠以外は無理だと思うし、日本のように相当頑張っても、自給率が50%を超さない国では、どのようにして、このEのSを満足させるのか、そこがもっとも重要な議論のポイントになって来ると思いますね。

B君:費用は掛かるが、なんといっても、電力という商品は、しばらく前まで1兆kWhも売れる商品だった。今、1kWhをいくらとするか。基本料金などがあるので難しいが、まあ25円だったとして、1円値上げをすれば、1兆円に近い増収になる。製造業は約4割ぐらいの電力を使用しているが、電力代が直接競争力に響くだろうから、家庭用・民生用だけを5円ぐらいの値上げをすることで、毎年、3兆円近い投資用の金額を確保することも、不可能とは言えないので、かなり難しいことではあるのだけれど、地熱の高度利用などで自給率を高めること、こんな考え方もあるのかもしれない。地熱は博打的要素が大きいけど。

C先生:このぐらいで国際的な見地からのEのSecurityの議論は終わるとするか。いずれにしても、このSの議論ももっとも重要な部分だと思うのだ。
 国内的にも、このEのSの議論というものがあるのだけれど、それは何か。それは、「充分な能力を持った電力網をどう作るのか」。

A君:国際的なEのSの議論と、国内の電力網の議論は、実は重なりますよね。電力を輸入するとなったら、どこから輸入するか。

C先生:そうなのだ。孫正義氏は、アジアで国際電力網を作ろうといった考え方を持っているようだ。しかし、もっとも近いのは、なんといってもロシアだ。宗谷岬からサハリンまでの距離はたった45kmしかない。一方、北九州の最近世界遺産になった宗像神社のある宗像市の海岸から、プサンまでの距離は185kmもある。
 サハリンは、石油・天然ガスを産出するので、そこで発電して、発生したCOはCCSの現地処理をして、電力のみを輸入することが、個人的な希望でありお薦めだ。そのためには、北海道、東北、関東エリアまでの北方電力大幹線を建設しなければならないことになる。いくら掛かるのか、全く不明ながら、このぐらい思い切った大投資をしないと、今は、銀行に無駄なお金が死蔵されている状態なので、経済のますますの活性化のためには良いのではないか。新幹線プロジェクトも残りわずか。金沢と大阪間が残るだけで、ほぼ終わったので、その次としてどうだろう。

A君:実現したら、かなり良いのでは。安倍首相も、トランプ大統領と仲良くするばかりではなくて、プーチン大統領とももっと仲良くするために、こんな提案をしてみたらどうですかね。

B君:それが良さそうだ。

A君:さて、残った議論は何でしょう。E:経済性は、どうやら、電力網をがっちり作ることによって、太陽電池などの価格も下がるので、まあ、できることはそんなことなのでは。

B君:もう一つのE:環境は、当然、COゼロにすることが最大の目的で、これはもはや当然のこと。

C先生:ということで、今年の最初の記事としては、全体像を考えてみたけれど、こんな方向性で良いのかもしれない。まだ、2回ほど別の話題で連続する予定なので、よろしく。