-------

      脱炭素の勢い止まらず
       対応には新しい技術が必須 02.21.20210 



 大手航空企業であるユナイテッドが、電動旅客機に1000億円の投資を行うことを決定。CO2排出ゼロを探るとのこと。
 2月15日、あの
ジャガーなる自動車企業(正式名称はジャガー・ランドローバー)が、電動化を推し進め、ジャガーはEV(電動車)だけの専業ブランドになるという発表を行った。ランドローバーは、現時点ではディーゼル車が主力であるが、2036年までにディーゼルから撤退するとのこと。
 そもそも、地元の
英国政府は、2035年にハイブリッド車を含むガソリン・ディーゼル者の販売を禁止する。そして、2039年にはサプライチェーンを含めたカーボンニュートラルを目指すとのこと。
 日本も、昨年12月3日に衝撃的なニュースが流れた。
「2030年前半にガソリン車販売禁止」。しかし、これは政府が正式に発表したものではなく、自動車産業の変革の施策の一部が漏れたものらしい。どうやら小泉環境大臣は「2035年と明記すべき」という意見だったようだ。
 日本における電動車を含む次世代車の普及目標は、経産省が2018年に「自動車新時代戦略会議」なるもので取り纏めた。このところの世界の動きは極めて速いので、
日本の自動車産業は、「おいて行かれる可能性」を意識しなければならない状況になったようだ。やはり、世界は動きが早い。
 しかし、
すべてが電気自動車になったとき、果たして、電力は不足しないのだろうか。


C先生:どう見ても、
日本は動きが遅い。特に、脱COについては、そんな傾向が強い。日本という国の地理的な状況が、脱COに適したものではない、という根本的な理由ではあるのだけれど、それでも、もう少々なんとかしないと、世界に通用する商品開発ができない国になってしまう。

A君:地理的状況の説明ですが、
脱COの鍵は、第一候補が再生可能エネルギー具体的には、風力が最重要で、太陽光は昼間の電力ピーク対応用と考えるべきかもしれない。

B君:しかし、
日本という国は、大陸の東の海にある島国なので、例えば、台風といった強風・大雨の災害源があって、ヨーロッパの偏西風のような、比較的安定していて、災害を起こさない風には恵まれていない

A君:日本の地理的な状況をぼやいたところで意味がないので、序文で出てきました
自動車新時代戦略会議をご紹介。2018年4月18日に第1回、その後、7月24日に第2回、8月31日は中間整理、そして2019年4月8日に第3回と、計4回行われたようです。

B君:第1回に配布された経産省による資料が、全体観を表しているものと思う。いわゆるCASE(C:Connectivity, A:Autonomous, S:Shared&Service, E:Electric)を実現すべき自動車新時代が到来した。

A君:
自動車産業は、日本経済の屋台骨年間920万台を生産し、460万台を輸出。出荷金額は約50兆円。輸出は約15兆円。雇用は530万人。設備投資約1.5兆円。

B君:
輸出産業としては、自動車がNo.1。次が一般機械、3番目が電気機器、その後、化学製品、鉄鋼、金属・非鉄と続く

A君:
将来、どのような動力が使われるか、IEA(International Energy Agency)の推定によれば、2000年には、世界の乗用車は、ガソリン車とディーゼル車、それにわずかな台数のハイブリッド(HV)車だった。それが、2020年には、ガソリン(G)車64%、ディーゼル(D)車18%、天然ガス(CNG)車3%、そして、電動車として、合計15%(HV6%、PHVプラグインハイブリッド4%、EV電気自動車5%)。
B君:そして、それが、
2030年になると、G車51%、D車14%、CNG車3%、HV12%、PHV11%、EV8%、そして、燃料電池車FCVが1%になる予測。

A君:さらに
2040年になると、化石燃料だけを使う自動車の合計が49%と半数以下になり、電動車が51%という予測ですね。

B君:そして、2050年になると、電気自動車、プラグインハイブリッド車が増える。

A君:
EVにすれば、自動車から直接排出されるCO量は確かにゼロなのだけれど、走行用の電力を化石燃料から作っていては、結果的に何も変わらない。

B君:その通りで、
日本のように再生可能エネルギー100%の実現は非常に難しい国土の状況である国で、しかも、海外からの電力供給も期待ができない島国なので、2050年にCOゼロは是非とも実現しなければならない課題ではあるけれど、さてどうするのだろうか。原発は、現状のモデルは、福島の東京電力の原発の事故によって、市民からの信頼性がゼロ近くに落ちたので、なかなかに難しい。

A君:幸いにして、
世界の原子力の情勢もかなり動き出していて、大型原発ではなくて、小型原発であるSmall Modular Reactor=SMRが主力になる可能性がでてきている

C先生:その詳細に関する、かなり基本からの知識が不可欠なので、まず取り上げてみたい項目だ。
いずれにしても、自動車が電動化するとなると、その分の電力が現時点よりも必要ということになるので、これだけは、認識しておく必要がある。それでは、いくつかのエネルギーの未来像、特に、原子力の未来像をチェックしてから、SMRの説明に行こう。

A君:それでは、正統派のサイトから。最初は
資源エネルギー庁のこのサイト。
 「原子力にいまおこっているイノベーション(前編)〜次世代の原子炉はどんな姿?」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/smr_01.html

B君:2020年8月20日の記事。まずは、イントロ部分から抽出しますと、
気候変動対応の「脱炭素化」が、最大のターゲットになることは確実。日本でも2050年にカーボンニュートラル、すなわち、COを排出しないエネルギーのみになるということが、政府方針になった。
 その対応方法は様々だけれど、恐らく、
あらゆる可能性を追求して、様々な組み合わせによる最適化を行わないと、対応ができないものと思う。例えば、風力発電は必須だけれど、風が弱い状況だと単なる風車で、発電はできない。台風が来たら風速70mぐらいまで耐えるように設計されているけれど、時には、それを越す風が来ることもあって、実際、風車が壊れたこともある。

A君:それが起きたことがあって、
平成15年9月6日発生の台風14号によって、宮古島の風速が11日には74.1m/secになった。これは、沖縄県内での歴代4位の風速。6基あった風力発電のうち、3機が倒壊、2機がブレード破損、1機がナセル損壊。これでは、損壊といったレベルではないですね。

B君:すなわち、全滅だったということだ。シミュレーションの結果によれば、
風速は、87.4〜90.7m/sだったとのこと。これも、風などと言えるような風速ではない。

A君:やはりヨーロッパのように台風が来ないところは有利。となると、日本は様々なエネルギーソースを持って、発電を持続することが不可欠。

B君:もっとも安定した発電となると、やはり、火力発電なのだけれど、
2050年COゼロと言われたら、火力は、どんなものも使えない。水力はCOゼロだけれど、どうも日本の大型水力は、ほぼ開発可能なものはすべて作ってしまったような感触。中小水力というものもあるけれど、総発電量を増やすという意味から言えば、余り使えない。

A君:
電気の厄介なところは、化石燃料と違って、保存をしようと思うと、電池になってしまうこと。電池でも勿論可能なのだけど、エネルギー蓄積の方法としては電池は高くつく。すなわち、蓄電は、自分の家に太陽電池を設置して、昼間は発電してそれを電池に貯めておいて夜に使う。

B君:それだと、天気の良いときだけは使えるけど、雨だとダメ。

A君:しかも、電池のコストはかなり高い。かなりの量を設置しようとすると、現状でも100万円ぐらいかかるのでは。

B君:という訳で、
解の範囲は狭い。現時点でも動いているもの、から言えば、揚水発電。消費されない余分な電力を使って、下側の池から、上側の池に水をポンプアップする。これは、電力会社の仕事だけど。

A君:
これまでの社会シナリオだと、原子力発電が、COゼロ電源の主力だったはず。しかし、福島事故以来、いくつかの理由で、状況は良くないですね。

B君:そうだね。
理由その1として、原子力の信頼性が全く消滅したこと。それを補填すべく、原子力規制委員会からの要求が極めて厳しいものになった。例えば、防潮堤の高さを十分に高いものにしなければならない。これがかなりコスト高。現在、要求されているのが、飛行機が墜落したとしても、破壊されない制御棟の整備かな。

A君:正確には、特定重大事故等対応施設の整備(緊急時対策所)、重大事故等に対応する設備等の整備(免震重要棟)、などなど、整備するのが大変な要求事項が山積。

B君:その一部だけ紹介すれば、
設計基準に、火山、竜巻、森林火災などへの対応も追加された。

A君:
外部電源の強化。それに加え、非常用ディーゼル発電機の連続運転期間が7日間必要となった。

B君:さらに、
津波や活断層への対応も厳しくなった。

A君:ということは、もはや既存の原子力では、市民からの反対だけでなくて、コスト的に成り立たないという可能性が大。

B君:そこで、
安全度を非常に高くすることが可能と思われる、小型の原発がアメリカでは注目を集めている。

A君:やっと本題に戻りました。ところで、小型の原発にするメリットから説明しますか。
 
小型原子炉にする最大のメリットは、大型の原子炉よりも冷えやすいこと。何かが起きたとき、大型原子炉だと、水をポンプで注入することになります。これが、福島第一では十分にできなかった。現時点であれば、原子力発電所には、多数の給水車と電源車が待機しているけど、福島第一の事故のときには、そのような状態では無かった。東電がどのように言い訳をするか、と考えると、こんな感じですかね。「事故が起きることを前提として、給水車・電源車などを多数用意していたら、『やはり原発は危険なんだ』、と言われてしまう」。

B君:小型原発の正式名称は、
Small Modular Reactor(=SMR)というけれど、Modularの意味は、「モジュール建築の手法」を使うこと。これは、日本語にすれば、プレハブ住宅のイメージ。すなわち、「小型」化の目的は、トレーラーや鉄道で運べる範囲のサイズにすること。

A君:ちょっと具体的な例を一つだけ説明します。SMRとしてはもっとも有名な
”NuScale社のSMR”の特徴は、1モジュールの出力は6万kW。通常の原発の1/20ぐらい。1モジュールは、「圧力容器・蒸気発生器・加圧器・格納容器」が一体型になっている。このようなモジュールが、それぞれ独立したタービン発電機と復水器に接続されている。

B君:その他にも、
日立GEニュークリア・エナジー社と米国GEHitachi Nuclear Energy社が開発中で、早期の建設を目指している。

A君:まあ、SMR=Small Modular Reactorという名称だけでも覚えていただければ、少々未来を語ったことになるので、是非ともよろしく。

C先生:そろそろまとめてみるか。
自動車の電動化は世界全体としての流れであることは間違いはない。電動化すると、パーツの数が大幅に減少する。そのため、車の故障の可能性はかなり減るものと考えられる。ということは、これまでの日本車のように、信頼性の高さを売り物にしていた状況が変化し、どの車でも大差はない、むしろ、電池の信頼性とその寿命が問題になって残るということが考えられて、これは、日本の自動車メーカーの得意技であるパーツの均一性の高さによる高信頼性を売り物にはできなくなる。兎に角、日本車は壊れないからね。もっとも、最近は、欧州車は当然として、米国車でも壊れないという話もあるけど。
 さらに言えば、
電動車の性能は、情報処理の能力に依存すると言える。このところのコロナへの対応を見ていても、デジタル化が日本の弱点であることは、どうも事実のようだ。機械系では世界のトップの信頼性のある製品を製造することができたけれど、電子系の出来が鍵となる製品では、どうも世界的にほぼ同一レベルか、ちょっと弱点があるか、という状況が日本の現状なのではないか。
 
電動車が多くなれば、当然、発電量が増えなければならない。しかし、COを目指そうとすると、まずは、再生可能エネルギーを使うことになるになるけれど、それで、電力供給がすべて可能か、と言われるとかなり疑問。そこで、やはり、原子力が姿を全面的に変えて頑張らないと、ということになる。その姿は、巨大システムから小型への転換をすることになる。これまでの巨大システムである原発よりも、将来のSMRと呼ばれる原子炉は、相当に高い安全性が担保できるものと思われるのだ。いずれにしても、これから、2050年までの社会の変化は、あらゆる分野で極めて急速に起きると思わなければならないと思う。