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     カーボンゼロ加速  01.10.2021
       
第4の革命の続き:日本はどうする
               



 日経新聞の1面に連載されてきた「第4の革命」が1月9日(土)に7回目が掲載された。今後、まだ掲載されるのか、これで一応の終わりか不明ではあるけれど、今回は、1月6日、7日、9日に掲載された、5〜7回目のご紹介をしたい。
 
トランプ大統領が、パリ協定への対応を嫌って離脱してしまった米国ではあるが、金融関係を支配している原理原則は、やはり、ESG投資にあることは、欧州などと違いはない、ということなのだろうと思う。その考え方の根幹は、国連の定めた責任投資原則(PRI=Principles for Resoponsible Investiment)にあり、その歴史は、2006年、当時の国連事務総長のコフィー・アナン氏が提唱したイニシャティブ。気候変動に関するパリ協定が合意されたのが、2015年12月12日にパリにおいて開催されていた第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)であったのだから、それよりも10年近く前に出来た原則だということになる。しかし、責任投資原則が実際に効力を持ち始めたのは、どうも、パリ協定以後のような感触ではある。これまで、何回も述べているように、パリ協定は「気候正義」という言葉をキーワードとしているが、その「正義」と「責任投資」といういささか異なった概念が、なぜか共鳴しているような気がするのだ。
 
トランプ元大統領の価値観は、やはり相当に変わったものだったと思うが、それが逆に、米国の金融界にとって大きなリスクであったという共通理解が企業にも金融界にも出来ていて、そのためにカーボンゼロを実現するESG投資が、逆に進展したという感触も無い訳ではない。
ちなみに、
E=Environment、S=Society、G=Governance である。
 今回取り上げる「
日経新聞の第4の革命:カーボンゼロ」の3回分の話題は、以下の通り。
1.「小型原子炉に浮かぶ現実解」、
2. 「通貨の番人、環境も監視」、
3. 「1からつくる移動網」である。



C先生:序文が長くなったけれど、どうも、
日本という国は、やはり本物の島国だと思うのだ。あのトランプ大統領のアメリカと比較しても、国際標準との距離という意味では、全部とは言わないが、ある部分で日本の方が遠いように思う。なぜなら、アメリカは、様々な意識の人々が共存している国で、その中の非常に特殊な一人がトランプ大統領だ。次の大統領になるバイデン氏は、まあ、普通の考え方をする常識人なのではないかと思う。日本人は、何に関しても、意識が非常に国内的であり、そのため、意識の方向性がかなり揃っているように思えるのだ。もっとも、最近の若者、まあ、20歳台前半の若者の意識は、かなり昔とは違っているような気はするけどね。

A君:
日本は、まあ、単に島国というだけではなくて、ユーラシア大陸の東の端より、さらに東にある島国ですからね。その先は太平洋

B君:それだけに、
独特の文化があって、居心地は悪くはない「明日は、今日の続きである」、と思えるのでは。それに加え、過去を見ても、外国からの侵略はなんとか防ぐことができた。

A君:そうでしょうね。
意識する範囲が最大でも1000kmぐらいで足りてしまう。距離だけでなく、どうも時間的な意識の範囲も狭いような気がしますね。今回の日経の特集の題名が『第4の革命 カーボンゼロ』だったのだけれど、パリ協定以来、「第4の革命」の時代に入ったという歴史的意識を持っている日本人は、恐らく、かなり少ないのでは。

B君:時間の範囲について言えば、
日本人は、過去が、しかもかなり昔のことが大好きで、大和国などには、なんとなく憧れがあるけどね。

A君:
米国だと、そんな昔には無い国ですからね。原住民はいたことはいましたが。

C先生:そろそろ、本題に行こう。

A君:了解です。前回ご紹介したのが、連載の4回目まで。
今回のご紹介は、5回目から7回目まで。まだ、継続する可能性があるのかどうか、記事を読んでも判断できません。

B君:それでは、
5回目から。そのタイトルが、「進化の道変えた原発 小型炉に浮かぶ現実解」。
 その最初の記述が、以下のようなもの。
 新政権発足後、
即座にパリ協定に復帰する方針のバイデン氏。気候変動対策には2兆ドルを投資するらしいのですが、その中には、原子力発電所の活用も盛り込むとのこと。そして、安全性の高い小型原子炉を考えているらしい。

A君:米国の
ニュースケール・パワーなる企業が2007年に発足して、小型原子炉の商品化を狙って動き出した。日本で原発というと、その出力は100万キロワット級。一方、スモール・モジュラーと呼ばれる小型原子炉は、出力数万キロワット。それを5〜10機ぐらいまとめてプールに沈める

B君:もしも、ある
企業が自分で小型原子炉を持ちたいと言えば、1台でも売るようだ。

A君:フレキシビリティが高いですからね。
しかも安全性は相当高い。もし、福島第一の原発が、スモール・モジュラーだったら、あんなことにはならなかったのに。もともとプールに沈められているのだから

B君:
ロシアも同様のアプローチを行っていて、原子力砕氷船に積んでいたサイズの原発複数台で海上原子力発電所を作る方針

A君:日本では、どのような方針なのか。どうも、
日本にはスモール・モジュラー型の原子炉を作ることができる企業が居ないように思う。日本の企業は、どうも新規なチャレンジが足らないように思う。いや、というより、どのような新規性があれば、ビジネスになるか、という思考法が無いような気がする。

B君:原発のような大規模装置を作る企業には、
新規チャレンジをするというリスクが、やはり乗り越えられないのではないか、と思う。

C先生:
日本にはベンチャーが育たない。これは、私自身、何回も言っているけれど、堀場製作所の創始者であった堀場雅夫氏がしばしば言っておられたことだ。その理由は、日本には、「七転び八起き」という言葉はあるけど、あれは嘘。その実態は、「一転びアウト」だ。これがベンチャーが日本で成功しにくい最大の理由

A君:その根底にある
思想は、「穢れ」であって、一度でも失敗した人は穢れている、ということらしいです。

C先生:なにか土着民的思考だね。この発想を乗り越えて、新規発想を生み出し、それを生かす国民性にしないと、
エネルギー関係のような産業は、国が決めてくれる、という凝り固まった考え方に囚われて、世界に遅れることになるように思う。しかも、このところ、国の決める能力が弱り始めているような気もするし、危機的状況になるような気配が見える。ただし、どうしても指摘しておくべきこととしては、若者だけでなく、国民全体としてだけれど、日本全体の未来を真剣に考えるようなチャレンジ精神が無くなりつつあるようで、これは、日本の未来が無くなることを意味するようにも見える。まあ、そんな面倒なことはできないよ、ということなのかもしれないが、それが自らの首を絞めているということは、最小限理解してもらいたい。

A君:それでは、次に
1月7日木曜日の日経の1面の第4の革命。その見出しは、「巨大年金動かした25歳−通貨の番人、環境も監視」

B君:25歳の件は米国の話ではなくて、
オーストラリアの話。マーク・マクベイ氏(25歳)は、2018年に、気候変動リスクの開示が足りないと豪大手年金機構であるレストを訴えた。そして、昨年に成立した和解で、レストは50年までに投資先の二酸化炭素排出量をゼロにする、と約束した。

A君:これは、
「世界のマネー」がカーボンゼロを先取りするESG投資の一例です。そして、ESG投資への流入金額は3000億ドル、と巨額になりました。

B君:それなら、日本は遅れているのか、というと、実は、先端的企業は、十二分に先進的な取り組みをしている。
 CDPという国際的組織がある。その発足だが、Carbon Disclosure Projectというが2000年にできた。そして、機関投資家を巻き込んだ。機関投資家は、例えば、年金基金のような組織を含むので、気候変動に関連する企業活動には、当然、関心がある。
気候災害が常時起きるようでは、例えば、保険業などは成立しなくなるし、年金基金だって、対応が難しい
 そして、その
CDPが、2020年に、世界9526社の気候変動対策の格付けを行ったのだ。その結果だけれど、日本企業は、トヨタ自動車など53社が最高評価だった。

A君:ただ、すべての日本企業の意識が高いということではないですね。自動車産業のように、世界をマーケットにしなければならないような産業は、当然、先進的ですけど。

B君:ということは、例えば、
国内の電力企業などは、必ずしも先進的である必要はないので、それほど、未来のことを考えていない

A君:電力関係というか、エネルギー関係というか、これらの産業は、クライアントが日本の家庭と企業ですからね。そのレベルが、なんとなく、全体の方向性を決めてしまうのでしょうね。

B君:しかも、
電力のすべてをゼロカーボン化することが可能か、と言われると、それには、再生可能エネルギーと原子力のみにすることを意味するのでね。なんとも。

A君:
太陽光発電は夜には発電量がゼロになるから、風力を主力にしなければならない。しかし、日本列島というところは、結構な山地ばかり。比較的低いのは、北海道かもしれないけれど、北海道に風力発電を作ったとしても、その場所となると、北海道の襟裳岬から北にある山地は多分、居住者は居ないと思うので、風力発電を大量に設置できると思うけど、平地となると、帯広のように農業が盛ん。さらに、国立公園が多いので、場所にも限界がある。

B君:それに加えて、
北海道には、送電線が全く足らない。さらに、北海道から青森への送電線は、青函トンネルに作るとしても、そこまでの送電線を作るのが大変。北海道電力にそのような体力はないし

A君:やはり、
スモール・モジュラー型の原子力発電所を大量に作るのでしょうかね。しかし、日本でそれをやろうとしても、恐らく、どこに作るかという土地の問題が大きいですね。それに、日本は原子力発電を作ると言っても、まず、最初に起きることが反対運動。やはり、「福島第一発電所事故で、失ってしまった信頼」の影響が非常に大きい。スモール・モジュラー型であれば、各段に安全性は高いのですけどね。

B君:どうにも、八方ふさがりという結論になってしまうね。

A君:
菅首相が宣言した2050年COゼロが難しいことが分かる

B君:検討の方向としては、
輸入による水素とアンモニアのエネルギー化ぐらいしか残らないのかもしれない。

A君:確かに、
水素ですかね。アンモニアもその派生形ですが。水素を作るには、何を原料にするかが問題。オーストラリアであれば、褐炭が原料になる。日本国内では、原料が無い。やはり、日本という国は、エネルギーの輸入国であることを止めるのは不可能ということでしょうか。

B君:まあ、
日本は、世界初の液化水素運搬船を作りましたからね。それに参加した企業が、岩谷産業、川崎重工業、シェルジャパン、電源開発、丸紅、ENEOS、川崎汽船

C先生:まあ、現時点で存在する
解決策としては、水素が最有力であることは事実だろう。その輸入先も恐らくは、オーストラリアが最有力だろう。日本には、水素で走る自動車「ミライ」という燃料電池車(FCV=Fuel Cell Vehicle)もあるし。この方向への動きは、まあまあ進み始めた。

A君:しかし、
水素社会に作るには相当の準備が必要だと思うのです。となると、その前に、なんらかのつなぎ社会を作らないと。となると、有力な候補は、やはり、スモール・モデュラー型の原子力発電ですかね。

B君:問題点は、
日本にはスモール・モデュラー型の原発がまだ存在こと。そして、やはり完全に輸入品になること。

C先生:
米国では、スモール・モデュラー型原発がかなり速やかに主力になるだろう。このような新しい技術を日本国内で独創的な考え方で発展させるだけの能力が、まだ、日本社会には準備できていないように思うのだ。やはり、エネルギーに関しては、すべてを民間が決めるものではない、ということが社会的理解になっていて、経産省・資源エネルギー庁が、方針を決めてくれるのを待っているという態度が、民間企業の共通的に見られること。このスタンスをどこかの企業がぶち破らないと、日本が自立して未来のゼロカーボン型のエネルギー供給体制を構築できるようにはならないのではないか。これまでは、経産省・資源エネルギー庁が確かに頼りになった。しかし、そろそろ多様な仕組みが動ける形を作っておかないと、後悔するような気がするね。